氷の姫は戦場の悪魔に恋をする。

第３３章クラウスとエマ

ゼンが最後の戦に向けて準備を進めてきたある日、クラウスがエマをたずねてきた。
クラウスはエマを見ると言った。
「本日はお会いする機会を設けていただきありがとうございます。」

するとエマは笑みを浮かべて言った。
「そんなにかしこまらないで下さい。私はもうあなたの上司ではありません。お茶でもだしますからそこに座ってください。」

クラウスはエマの言葉に驚いた様子で席に着いた。
そして言った。
「これは確固たる情報ではありません。あくまで僕の推測です。ですがどうしてもお耳に入れておきたくて伺いました。」

エマはクラウスの言葉に顔をしかめた。
「どの様な情報でしょうか？」

するとクラウスは言った。
「じつはニカ様の解任が検討されている様なのです」

クラウスの言葉にエマは驚いて言った。
「解任？なぜですか」

クラウスは言った。
「今の王はニカ様の傀儡です。その事は疑いようも無い事実だ。ですが、どうやら実は野心家であったらしくニカ様の独裁に不満を募らせていたようです。そのため最近は陛下とニカ様の間には距離が出来ていました。そしてそこにつけ込んだものが居ます。流浪の施説客をなのる謎の男、キキョウです。」

エマは言った。
「キキョウ。それは何者なのですか？」

クラウスは言った。
「それは分かりません。我々が気付いた時にはすでに陛下の信任は確固たるものでした。」

その言葉を聞いてエマは眉をひそめて言った。
「ゼンが心配ですね。」

するとクラウスはかしこまった様子で言った。
「ところであの噂は本当なのですか？」

エマは首をかしげて言った。
「噂とは何ですか？」

クラウスは少し小さな声で言った。
「エマ様とゼン様が恋人になったという話です。」

エマはその話しが出回っていることに驚いた。
だが否定する必要はないと思い言った。
「はい。そうですよ。」

その言葉にクラウスは驚いた顔で言った。
「本当なのですか。驚きました。エマ様はそういう事には関心がないと思っていました。」

クラウスの言葉にエマは笑みを浮かべて言った。
「そうですね。私もそう思います。ゼンに出会わなかったら今も関心がなかったでしょう。」

（あの氷の姫が変わったなあ。ゼン様はいったい何をしたんだ？）
クラウスは自然と惚気て見せたエマの様子に、微笑ましさと寂しさを感じ苦笑いを浮かべたのだった。