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第44章誓い

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ゼンが兵士達とにぎやかに話をしていると、エマが入ってきた。
兵士達は明るくエマを迎えようとしたが、兵士達は一様に静かになってしまった。
エマの姿が大変美しく、見入ってしまったのである。
気品のある顔に整ったスタイル、そしてどこか近寄り難い雰囲気。
白いドレスもあいまってまさに氷の姫という見た目だった。

エマは静かな雰囲気に少し不安になったのか、ゼンを目で探しゼンを見つけるとその元へゆっくりと歩いてきた。
「ゼン。ここに居たのね」

ゼンはエマの美しさに思わず声が出なかった。
ゼンが呆然としているとエマが言った。
「どこか変かしら。個人的には良く出来たと思っているんだけど。」

ゼンは搾り出すように言った。
「いや。凄く綺麗だ。」

エマは嬉しそうに言った。
「そう。それなら良かったわ。今日はあなたのために、頑張ったんだから。」

そしてエマはゼンの腕に抱きついた。
エマの周りには兵士達がよって来て、様々に祝福の言葉をかけた。

サッリが言った。
「本当に綺麗になりましたね。馬子にも衣装だ」

エマが言った。
「何で来たの?あなたに祝われる覚えは無いんだけど」

サッリは言った。
「そんな事言わないでくださいよ。あんたは命の恩人なんですから。」

エマは言った。
「随分と調子の良いことを言うわね。まあめでたい席だし、わざわざ祝いに来てくれたのだから許してあげる。」

するとニカが会場全体に聞こえる大きな声で言った。
「一回静かに。ゼンからニカに伝えたい事が有るらしい」

エマはゼンに促され、部屋の中に設置された壇上に上がった。

ゼンはエマを真っ直ぐ見つめて言った。
「俺の人生にもし意味が有るとするならば、それはお前と出会えた事だろう。俺はお前と少しでも長く、一緒にいたいと強く願っている。エマ。俺と結婚してくれ。」

エマは涙ぐんで言った。
「はい。喜んで」

その姿は彼女がもはや孤独で他を寄せ付けない氷の姫ではない事を示していた。
ゼンが置かれている現状はここに居る全ての人間が分かっている。
貴族であるニカと違い、王から死を言い渡される可能性もある。
彼らの未来は明るいとは言えない。
だからこそ、皆は可能な限り大きな声をあげて2人を祝った。
彼らに降りかかる災悪を少しでも払おうと考えたのである。
そのため2人を祝う声はなかなか収まらず、いつまでも部屋中に鳴り響いたのだった。
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