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第3編皇帝陛下と宗教改革
第21章目指すべき道
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私は李林甫から鷹を捕獲し、鷹の鉤爪についていた印から鷹匠を特定した。
そしてそれを元に再び、李甫国を呼び出し密談を行なった。
決定した内容は三つ。
まず第1に封魔教のうち不正を行った者は全て国が処分する事とし、封魔教は調査に全面的に協力する事。
次に今後、封魔教の導師は国の試験及び認可を受けることを必要とする事。
その代わりに雪女衣は跂踵ではなく鸚鵡である事とし、跂踵が吉鳥である証拠は全て消去。また今回の雪女衣に対する暗殺未遂の件については犯人探しをしない事を合意した。
これにより、封魔教は完全に国家の支配下に入る事となったのである。
それに対する封魔教の導師達の反応は様々だった。
今後も教団に残るもの、腐敗の実情を知り絶望して教団を辞めるもの、新しい教団を作るもの等、それぞれが様々な考えでばらばらな行動を始めていた。
そんなある日、私は楊ちゃんと悠々、雪女衣と一緒に高力士を街へのお出かけに誘った。
今後の身の振り方に悩む高力士が少し不憫に思えたからである。
「見て。西域から来た踊り子よ。見事ねー。」
楊ちゃんは街中で踊る踊り子を見て感嘆の声を挙げた。
「凄いですね。」
雪女衣も感心して見ていた。
そして雪女衣は横でなにかを食べている悠々に言った。
「見てください。素晴らしい踊りですよ。」
悠々は鳴いた。
「ミー。ミー。(そんなにせかさなくても食べながら見えていますよ。)」
雪女衣は言った。
「すみません。ところで何を食べているのですか?」
悠々は鳴いた。
「ミー。ミー。(焼き鳥です。あなたも食べますか?)」
そういうと悠々は串からひとかけらを抜き取り雪女衣の前に置いた。
「鶏肉ですか・・・」
雪女衣は複雑な気持ちなのか手をつけずじっと焼き鳥を見ていた。
その様子を微笑ましく眺めながら私は高力士に言った。
「良いものだろ。私に旅行の経験はないが、こんなにも世界各国の人々が集り、それぞれが差別なく自由に暮らしている国はそうはないと思うんだ。」
高力士は言った。
「そうですね。たしかに、これ程、懐の深い国家は中々無いのかもしれません。」
私は言った。
「私は国家の中枢に居るからな。良いところも悪い所も沢山知っている。国を好きだと声を大にして言えるほど純粋ではない。でもな。この国の民は大好きだ。それは迷いなくいえるよ。」
私の言葉を聞いて高力士は言った。
「陛下。陛下には感謝しなければなりません。私は封魔教を盲信し、雪女衣を殺そうとしました。ですが、今の姿を見て心から良かったと思います。それは全て陛下のお陰です。」
その言葉を聞いて私は厳しい目で高力士に言った。
「そんなことはないさ。高力士。もし仮に、跂踵が本当に害鳥だったとしたら、お前はどうする?」
高力士は私の質問に戸惑った様子で言いよどんだ。
そこで私は言った。
「私は殺す。」
その言葉を聞いて高力士は驚いた様子で言った。
「そんな。あれ程、雪女衣の事を大切にしている陛下が雪女衣の事を殺すと仰るのですか?」
私は言った。
「ああ。そもそも私は雪女衣を保護した時点で彼女が害鳥出ない事を確信していた。だからこそ彼女を救ったんだ。なんの計算もなしに彼女を助けたわけではない。」
すると高力士は言った。
「陛下。なぜです? どうして陛下まで師匠と同じ事を仰るのですか。雪女衣は孤独で、真っ直ぐで、何の罪もないのですよ。」
私は高力士を真っ直ぐ見つめて言った。
「民のためだよ。私はこの国の民をあらゆるものから守らなくてはならない。私が個人の感情を政治に持ち込むことはこの国の民を危険にさらすことになるんだ。そんな決断は皇帝として出来ない。私にとって皇帝という立場に勝るものはこの世に唯一つ。お義兄ちゃんだけだ。私はこの国を守るためならそれ以外のものはなんだって犠牲にするつもりだよ。」
高力士は落ち込んだ様子で言った。
「そうですか。師匠も陛下もたまたま立場が違っただけで、基本的な態度は変わらないという事ですね。」
私はそんな高力士に言った。
「不満があるならどうする? 今後、封魔教は国家のいいなりになる。つまり私が国家のために犠牲とすると決断した者の逃げ場はもうないという事だ。」
高力士は私の意地悪な問にじっと考えた後に答えた。
「私はその人が、雪女衣の様に必死に生を求め真っ直ぐ生きたいと願うなら救いたい。素直にそう思います。でもそれが多くの人々に被害を及ぼすとなると、私にはどうしたら良いか分からなくなってしまうのです。」
私は高力士を諭すような声で言った。
「それで良いんだよ。」
高力士はとまどい答えた。
「どういうことですか?」
私は言った。
「一緒に迷えば良いんだ。雪女衣が良い例だ。彼女は、自分の存在が他者に迷惑をかけていることに対する罪悪感と、居場所が欲しいという欲求の狭間で揺らいでいた。そしてお前は、雪女衣と一緒に彼女の存在について悩み、自分なりの結論を出した。なにも導くだけが宗教じゃない。正しい目的に向かって共に悩むのもまた宗教なんじゃないか。」
高力士は私の言葉に衝撃を受けた様子だった。
そして言った。
「陛下。陛下のお陰で、目が覚めた気がします。俺は修行に出ます。そしてどこかの田舎町で、国からはぐれたものたちと共に悩みながら生きて行きたいと思います。」
私は高力士に右手を差し出しながら言った。
「そうか。それは良いな。国家が広く国民を助け、あふれた者はお前が救う。さながら私達は表裏一体だ。」
高力士は言った。
「よろしくお願いいたします。」
そして私達は固い握手を交わしたのだった。
そしてそれを元に再び、李甫国を呼び出し密談を行なった。
決定した内容は三つ。
まず第1に封魔教のうち不正を行った者は全て国が処分する事とし、封魔教は調査に全面的に協力する事。
次に今後、封魔教の導師は国の試験及び認可を受けることを必要とする事。
その代わりに雪女衣は跂踵ではなく鸚鵡である事とし、跂踵が吉鳥である証拠は全て消去。また今回の雪女衣に対する暗殺未遂の件については犯人探しをしない事を合意した。
これにより、封魔教は完全に国家の支配下に入る事となったのである。
それに対する封魔教の導師達の反応は様々だった。
今後も教団に残るもの、腐敗の実情を知り絶望して教団を辞めるもの、新しい教団を作るもの等、それぞれが様々な考えでばらばらな行動を始めていた。
そんなある日、私は楊ちゃんと悠々、雪女衣と一緒に高力士を街へのお出かけに誘った。
今後の身の振り方に悩む高力士が少し不憫に思えたからである。
「見て。西域から来た踊り子よ。見事ねー。」
楊ちゃんは街中で踊る踊り子を見て感嘆の声を挙げた。
「凄いですね。」
雪女衣も感心して見ていた。
そして雪女衣は横でなにかを食べている悠々に言った。
「見てください。素晴らしい踊りですよ。」
悠々は鳴いた。
「ミー。ミー。(そんなにせかさなくても食べながら見えていますよ。)」
雪女衣は言った。
「すみません。ところで何を食べているのですか?」
悠々は鳴いた。
「ミー。ミー。(焼き鳥です。あなたも食べますか?)」
そういうと悠々は串からひとかけらを抜き取り雪女衣の前に置いた。
「鶏肉ですか・・・」
雪女衣は複雑な気持ちなのか手をつけずじっと焼き鳥を見ていた。
その様子を微笑ましく眺めながら私は高力士に言った。
「良いものだろ。私に旅行の経験はないが、こんなにも世界各国の人々が集り、それぞれが差別なく自由に暮らしている国はそうはないと思うんだ。」
高力士は言った。
「そうですね。たしかに、これ程、懐の深い国家は中々無いのかもしれません。」
私は言った。
「私は国家の中枢に居るからな。良いところも悪い所も沢山知っている。国を好きだと声を大にして言えるほど純粋ではない。でもな。この国の民は大好きだ。それは迷いなくいえるよ。」
私の言葉を聞いて高力士は言った。
「陛下。陛下には感謝しなければなりません。私は封魔教を盲信し、雪女衣を殺そうとしました。ですが、今の姿を見て心から良かったと思います。それは全て陛下のお陰です。」
その言葉を聞いて私は厳しい目で高力士に言った。
「そんなことはないさ。高力士。もし仮に、跂踵が本当に害鳥だったとしたら、お前はどうする?」
高力士は私の質問に戸惑った様子で言いよどんだ。
そこで私は言った。
「私は殺す。」
その言葉を聞いて高力士は驚いた様子で言った。
「そんな。あれ程、雪女衣の事を大切にしている陛下が雪女衣の事を殺すと仰るのですか?」
私は言った。
「ああ。そもそも私は雪女衣を保護した時点で彼女が害鳥出ない事を確信していた。だからこそ彼女を救ったんだ。なんの計算もなしに彼女を助けたわけではない。」
すると高力士は言った。
「陛下。なぜです? どうして陛下まで師匠と同じ事を仰るのですか。雪女衣は孤独で、真っ直ぐで、何の罪もないのですよ。」
私は高力士を真っ直ぐ見つめて言った。
「民のためだよ。私はこの国の民をあらゆるものから守らなくてはならない。私が個人の感情を政治に持ち込むことはこの国の民を危険にさらすことになるんだ。そんな決断は皇帝として出来ない。私にとって皇帝という立場に勝るものはこの世に唯一つ。お義兄ちゃんだけだ。私はこの国を守るためならそれ以外のものはなんだって犠牲にするつもりだよ。」
高力士は落ち込んだ様子で言った。
「そうですか。師匠も陛下もたまたま立場が違っただけで、基本的な態度は変わらないという事ですね。」
私はそんな高力士に言った。
「不満があるならどうする? 今後、封魔教は国家のいいなりになる。つまり私が国家のために犠牲とすると決断した者の逃げ場はもうないという事だ。」
高力士は私の意地悪な問にじっと考えた後に答えた。
「私はその人が、雪女衣の様に必死に生を求め真っ直ぐ生きたいと願うなら救いたい。素直にそう思います。でもそれが多くの人々に被害を及ぼすとなると、私にはどうしたら良いか分からなくなってしまうのです。」
私は高力士を諭すような声で言った。
「それで良いんだよ。」
高力士はとまどい答えた。
「どういうことですか?」
私は言った。
「一緒に迷えば良いんだ。雪女衣が良い例だ。彼女は、自分の存在が他者に迷惑をかけていることに対する罪悪感と、居場所が欲しいという欲求の狭間で揺らいでいた。そしてお前は、雪女衣と一緒に彼女の存在について悩み、自分なりの結論を出した。なにも導くだけが宗教じゃない。正しい目的に向かって共に悩むのもまた宗教なんじゃないか。」
高力士は私の言葉に衝撃を受けた様子だった。
そして言った。
「陛下。陛下のお陰で、目が覚めた気がします。俺は修行に出ます。そしてどこかの田舎町で、国からはぐれたものたちと共に悩みながら生きて行きたいと思います。」
私は高力士に右手を差し出しながら言った。
「そうか。それは良いな。国家が広く国民を助け、あふれた者はお前が救う。さながら私達は表裏一体だ。」
高力士は言った。
「よろしくお願いいたします。」
そして私達は固い握手を交わしたのだった。
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