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【8】二人の関係

8-4:城崎side

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 しばらく険しい顔で考えていた潤が、口を開いた。

「た……かや、さん。きいて、くれますか……?」
「うん。潤、話して」

 どんな答えが返ってくるのか、怖くもあるが。それ以上に、潤の気持ちを知りたかった。
 前提として、俺は全然潤の気持ちを分かってやれてなかった。そんな俺が、潤の言葉に傷つく権利なんてないじゃないか。何を言われても、絶対に否定なんかしないで聴くぞ、と深呼吸する。

「あの、まず、僕、何も嫌なことされてない、です」
「あ……昨日と、今朝の?」
「はい」

 そうか。よかった。

「僕が……お願いした、ので」
「俺の勘違いじゃなかった?」
「はい。……嬉しかった、です」

 ああ。この流れは。
 でも、ごめんなさい……かな。

「昨日、リンさんに……」
「リンさん?うん」

 あれ?何で突然リンさんの話が出てくるんだろうか。

「……これからも、ひとりで生きていくつもりか、って訊かれました」
「え?そんなこと言ってた?」
「お手洗い、行ったとき……」

 ああ、なるほど。二人きりになったときに、そんな話になっていたのか。

「ぼ、くは、ひとりで生きたいわけじゃない、です」

 自分で自分の言葉を確かめるように、潤が言う。

「貴矢さんが、手を離さないでくれたら、どんなにいいだろうって……」
「潤……」

 俺は君の手を離さないよ。頼まれたって、離してやれそうにない。

「だれか、が、ずっと傍にいてくれたらいいのに、……って、思ってました」
「うん」
「そんな人いるわけないって、思ってた、けど」

 潤。俺がいるよ。もうひとりにしないから。

「僕、誰かじゃ、嫌です」
「ーーえ?」
「貴矢さん、が、いいっ……」

 潤はとうとう泣き出してしまった。

「潤。ありがとう」

 小さな体を抱きしめる。

「もう、すれ違ってること、ないよな?俺のプロポーズ、受けてくれたと思っていい?」
「…………はい」

 よかった。勘違いしたまま帰らなくて本当によかった。
 狭い車内で潤と抱き合いながら、横目で時計を確認する。

「潤。今日さ、バイト行かなきゃダメか……?」

 このまま離れたくない。せめてもう一晩、気持ちを確かめてからでないと、潤の心がまた離れていってしまいそうで不安になる。

「はい。バイトは、行きます。迷惑かかっちゃうんで」
「そうだよなぁ~……」

 潤らしい返答に、がっかりしつつも納得して笑ってしまう。

「潤のそういうところ、好きだよ」

 思ったことはちゃんと言う。愛情はたっぷり注げと静岡の師に教わったしな。

「よし、じゃあ戻るか」
「すみません、お願いします」
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