16 / 27
お願い
しおりを挟む目の前が真っ白になって、きつく閉じた目を次に開けた時、見えたのは見慣れた天井。
ふんわりと香る、甘い花の香り。
今朝ノエル様に見せたくて、一生懸命に摘んだフリージアの真っ白な花弁が、窓際で揺れている。
……花瓶に飾ってくれたんだ。そんな些細なことを嬉しく思うと同時に。
「えっ、な……んで?
ノエル様の部屋……!?」
さっきまで、王族達の集まる宮殿にいたはずなのに、今自分がいるのは間違いなく……ノエル様の部屋の
「レイが大変そうだったから少し手伝っただけだよ。」
「!?」
柔らかいベッドの上。
……「??」
混乱して目をぱちくりと瞬く。
僕の髪を優しく撫でたノエル様は
「驚かせてごめん。……大丈夫、空間移動に耐性のない身体でも負担がないように連れてきたから。多少頭痛がするかもしれないけど、すぐ治る。」
いつもの調子で淡々と話しながら、合間に、僕の頰や額に口付ける。
「あ、ありがと……ございます?」
「どういたしまして。」
擽ったい……。少し冷たいノエル様の唇は……僕にとって、何より心地良くて、安心するぬくもり。
「で、でも……魔法使って大丈夫なんですか?さっきみたいに苦しく……ならない?」
「あぁ、絶対に大丈夫とは言い切れないけど。不思議と……レイに触れてる時だけは。」
「?」
「僕は僕でいられる気がする。だから…もしもまたわからなくなったら。」
煌めき揺れる、アクアマリンの瞳。近くで見るほどに吸い込まれそうに魅惑的。
でも、その瞳はいつもどこか。
「レイが教えて?君の傍にいる僕が、僕自身だと。」
「っ、ノエル……さま。」
……寂しそう。おかしいよね。
誰よりも強い力を持ってるこの人を、何の力もない僕が救えるはずないのに。
「……約束します。」
……この人を幸せにしたい。
寂しい思いも、辛い思いもさせないように。
「ノエル様が何者だって構いません。」
守りたい、僕が……貴方のためにできることなら何だってしたい。
歌うことしか出来ない、非力な小鳥だけど。
「……好きです。
傍にいたいです。」
この命が尽きるまで、彼と生きたい。
「……ありがとう、レイ。」
「んっ、……」
「可愛い……僕だけの金糸雀。」
見つめ合うと、不意に塞がれた唇。キスされると思わなくて、驚いたけど。
僕の唇を優しく啄むようなキスに、頭がふわふわして、ドキドキして。
「ノエル……さまっ、ん、ぼく。」
「ん?」
「あ、……あ、あの……//」
ノエル様の肩を、ぎゅっと掴んで
小さく呼吸を整えると
「……たい、です。」
「なに?」
ぽつぽつ、と呟いた声は
僕を不思議そうに見下ろすノエル様には届かない。
恥ずかしい、ペットの分際でノエル様にこんなこと言ったら……失礼にあたるかもしれない。
でも、どうしても
「もっと………ノエル様と」
「!」
「触れ合いたい……ですっ……//」
ノエル様の瞳に見つめられるだけで、とろんと蕩けるみたいに、身体が熱くなるの。変かな……?こんな僕は、ノエル様のこと
「……はぁ。困ったな。」
「!?」
……困らせてる!?
白髪をくしゃりと握って、視線を逸らすとため息を付いた。
やっぱり、こんなお願い……失礼だったんだ!!
「うぅ、……ごめんなさい!!
ノエル様ぁ……僕変なこと言って……!」
「……許さない。」
「!?」
「……そんな可愛い過ぎるおねがい。
僕以外にしたら許さないからね。」
「んっ……!?」
ノエル様を見上げたと同時、余裕なく唇を奪われた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
90
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる