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いつも通りの朝が展開されたので、俺は嬉しかったです

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俺が手を振り返すと、クロエも大きく手を振って、こちらに向かって歩いてきた。
「おはようございます!グレース様!いよいよ、今日で私たちは卒業ですね!」
「ええ、そうね、時間が経つのは早いものだわ。あなたと会ってから、よく考えたら、まだ半年間しか経ってないよね」
「そうですよね。よく考えたら、私、半年しか通ってなかったんですね。凄く、濃い日々であったので、半年しか経っていないというのが本当に信じられません」
クロエは感心した口調で言った。それから、俺を見ると両頬を赤く染めて、
「どれもこれも、グレース様のお陰です。本当に感謝しているのですよ」
そう言われると、照れる。俺が頭の後ろをかいていると、背後に痛みを感じ、恐る恐る背後を振り返ると、そこには御立腹な様子のオリビア嬢の姿。
オリビア嬢はそのまま俺を殴った扇子で俺を指して、
「クロエ、こんなクサレ脳みそに感謝する事なんてないわ。こんなおつむの詰まってないバカは後先考えず、あなたが可愛い女の子という理由だけで助けたに過ぎないと私は見ているわ」
クサレ脳みそとその推測は酷いのではないのだろうか。
もし、オリビア嬢の身分が俺より高くなければ、何処ぞの借金俳優ではないが、『言葉に気を付けてもらいたい』と警告してやりたいところだ。
俺がオリビア嬢を睨んでいると、背後からゴツい男二人が声を掛ける。
「あら、ディビッドに団長、あなた方も?」
「あぁ、団長とはそこで、バッタリと出会ってな。話したら、意気投合して、お前のところにまで来たってわけさ」
ディビッドは満面の笑みを浮かべて俺に答えてくれた。
また、彼の話によれば、団長は卒業記念のパーティーの護衛も務めるのだそうだ。
これならば、賊が王家を狙ってやって来たとしても一安心だろう。
最も、その賊が親父や俺だった場合は『安心』は『脅威』へと変わっていくのだが……。
まぁ、今はそんな事を気にしても仕方がないから、俺は団長に微笑んで、
「あなたが警備を担当してくれるのなら、安心だわ。よろしくね」
団長は何も言い返さずに耳を真っ赤にして、首を縦に動かす。
どうやら、主人公枠の少女の微笑みに悩殺されてしまったらしい。
俺は団長を眺めていると、またしても背後から声を掛けられた。
声の主はサミュエルとガブリエルの二人だった。
特にガブリエルの方は俺に手を振るなり、俺に抱き着こうとした。
それをサミュエルが止める。最後の時もいつもの二人と同じ姿を見れて、俺は思わず笑いを溢してしまう。
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