王道マジックファンタジーの世界で、俺だけが異端

羽野 奏

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第一章 聖女の誕生と異端審問

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洗礼式から数日が経った。
孤児院での生活は、今のところ何も変わらず平穏そのものだ。

ロッテンは、いつもの木に登ると、ステータスボードを開く。
「魔法属性、やっぱり腐属性のままか…」
洗礼式での出来事を思い出し、胸を押さえた。
何者かが入り込んできた感覚は、いまでも生々しく思い出せる。
「うっ、気持ちわりぃ」
頭を振って、まとわりつく様な嫌な気持ちを追払い、ステータスボードを丁寧に見直した。
「腐神の権化ってのは何だろう」
画面の左下、マリアには聖神の愛し子と表示されていたことから、属性を与えてくれた神とのなんらかの繋がりを示しているのだと推察される。
「あの気色悪いのが神様?むしろ悪魔だろアレは。あーぁ、あんなのと相性がいいなんてショックだぁ」
何度目かもわからない愚痴をこぼし、次にスキル欄に目を移す。
マリアと同様、取得した記憶のないスキルの存在がそこにあった。
「腐食Ⅱと腐敗Ⅱ…」
木の枝から降りて、適当に一つ花を摘む。
「スキル発動、腐食!」
体を流れる魔力を、手にした花に集中させると、みるみる花は萎れて茶色に朽ちる。
「まあ、腐るわな」
ポイっと朽ちた花を捨てて、もう一度、同じ花を摘みなおす。
「スキル発動、腐敗!」
今度は、手にした花がボロボロと崩れ落ちて土に還っていった。
「腐るのは一緒なんだけど、このビミョーな差は何なんだろう?」
この実験も、もう何度繰り返しただろう。
ロッテンは途方に暮れて肩を落とす。
属性を取得して、魔法が使える様になったら、同属性の冒険者に弟子入りして魔術や剣術を磨きたいと思っていた。
ところが、神父さまもシスターも、腐属性を授かった人なんて今まで見たことも聞いたことも無いという。
他の属性であれば、分からないことがあれば、先人の知恵を借りて解決することができる。
しかし、ロッテンは一人でそれを解決しないといけないのだ。
弱気になると、一気に不安が襲って来る。
「冒険者になるどころか、適正職すら無いんじゃねぇ?」
孤児であるロッテンに選べる道は少ない。
16才の成人を迎えるまでに、授かった属性やスキルを活かして適正職に就き、独り立ちを果たすか、モンスターと渡り合えるほど強くなって冒険者になり、身を立てるかのどちらかだ。
ただし、仕事に就こうにも、基本的に親の仕事は子供が継ぐし、雇用の多い裕福な商家が元孤児を受け入れる例は少ない。
対して冒険者になるには一定程度の実力が必要で、なれたとしても常に命の危険が伴う。

腐属性に何ができるのか分からない、今の状態では、"俺にはこれができます!だからこの仕事をやらせて下さい"といった、この仕事が適職ですという主張ができない。
冒険者になっても、"これができます"という確固たる主張ができなければ、まず、パーティーには入れて貰えないだろう。パーティーに入れないということは、大型のクエストの受注は出来ないし、ソロでクエストをこなす事になるから、危険度も増す。
食べていくためには、クエストを数こなす必要性が出てきて、病気や怪我をしようものなら一発アウトだ。
(あ、オレ、軽く詰んだか?)
成人まで後10年。
それまでに腐属性魔法についてどれだけ知る事が出来るかが、ロッテンが生き残れるかの決め手となる。
木の根元に、寝っ転がって木漏れ日を全身で受け止める。
「マリアが聖属性だったのは、色んな意味で助かったな」
はぁーっと、自然とため息がこぼれた。
聖属性持ちだから、七芒星教のシスターにはなれるだろう。
聖神の愛し子という事だし、もっと上の職にも就けるかもしれない。
「オレが食わせていこうって思ってたけど、マリアに養ってもらう事になるなもな…」
そうなったら情けないなぁーと、ボリボリと頭をかく。
空は変わらず青く、今日もいい天気だ。
束の間の静寂に瞳を閉じていると、風に乗って、微かにマリアの声が耳に届いた。
「ロッテン!ロッテぇン!!」
自分を探しながら、近づいて来る声に返事を返す。
「ここだーぁ!今、そっち行くから待ってろよー」
「神父さまが呼んでるよぉー、早くー!」
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