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第一章 聖女の誕生と異端審問
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「カメリアっ!」
ロッテンは目当ての姿を見つけると、少しだけ安心して走り寄る。
自分の育った教会と、この街の教会の造りが似ていて助かった。
礼拝堂側にはほとんど人がおらず、隙を見て神父やシスターが使う裏通路から外へと抜け出せたのだ。
商店街で買い出しをしているカメリアを探しに出たところで、直ぐに見つけることができたのは幸いだった。
先程女に追われた事、ロッテンが感じた違和感などをカメリアに告げると、彼女は表情を変えた。
「アドリアノとも合流しましょう、きっと厩舎に居るわ」
疲れ切ったマリアを抱き上げ、ロッテンには逸れないようにと注意して、カメリアは足を早めて厩舎に向かう。
態勢を整え、双子とカメリア、アドリアノの4人は教会に向かった。
日が暮れ、静まり返った教会。
脇道から入って孤児院側の門を叩いた。
「巡礼官のカメリアです。この孤児院の責任者は誰?直ぐに呼んで下さい」
手首の金環は神官にとっての身分証。
それを職員らしき人物に、手を突き出して見せる。
一時が経ち、バタバタと奥から神父が現れた。
「カメリア様、如何なさいました?」
「貴方はハルバート神父でしたね?我々に宿泊の許可を出した…」
「左様でございます」
何があったのか分からない、そんな様子で受け答えをする神父、これが演技なら大したものだ。
「とにかく!孤児院の内部を確認させていただきますね!!」
言葉の応酬では埒があかないと見て、カメリアはそう言って内部に踏み込んだ。
それに双子が続き、アドリアノがしんがりを務める。
一部屋ずつ、神父が子供達の数を確認して行く。
やっぱり、左右で男女ごとに分かれ、更に毛色でまとめられて収容されている様子は違和感を感じる。
(まるで、家畜みたいだ)
吐き気を覚えて、ふと、マリアを見ると緊張からか微かに肩が震えている。
繋いだ手に力を込めて、大丈夫だとロッテンはつぶやいた。
「これで、ひととおり確認は終わりましたが、不審な点は無いようですが?」
神父はやれやれといった様子で両手を挙げた。
「修道服の、ケバい女が居なかったぞ!アイツはどこだ?あの、甘ったるい香水臭いヤツ」
双子を追いかけた女について、ロッテンが尋ねると、神父は少し考える様子を見せて、手のひらを打った。
「ああ!シスター見習いの、ミレーユ令嬢の事ですかな?」
「令嬢とは?」
カメリアが聞き返すと、神父は饒舌に答える。
「ええ、我らが領主、アンセイル侯爵様の次女に当たられるミレーユ・フォン・アンセイル様。香水をつけている修道女といえば、あの方だけでしょうな」
貴族の令嬢が婚姻を果たすまで、シスターの見習いとして教会に身を寄せることはままある事だ。
特に絆され易く、恋愛に奔放な令嬢こそ、純潔の証明のために放り込まれる傾向がある。
「ミレーユ令嬢であれば、昼の勤務を終え、自室で休憩をしているはずです」
「分かりました、後で面会を希望します」
カメリアの言葉を受け、神父は職員の一人に面会を取り付けるよう指示を出した。
相手は貴族、勝手に呼び出したり訪問したりは出来ないのである。
「後は、オレとマリアが泊まる予定だった部屋に行きたい」
「良いですよ、参りましょう」
ロッテンの要望に、神父は頷いて皆を率いた。
扉は開け放たれ、二つのベッドには昼間二人が使用したシワが残されたまま。
床にあるシミは、あの横暴な少女が放ったウォーターボールの跡だろう。
「神父さま、この孤児院に金髪の巻毛に青い瞳の孤児がいるよな?6歳以上で、口が悪くって、威力は弱いけどウォーターボールが使える女」
妙に具体的なロッテンの指摘に、何故それを?という顔をして、神父は頷く。
「確かにいるが?エレンという名前で8才になる…?!」
そこまで行って、ハッと神父が気付く。
「エレン!おお、あの子が居ない!!」
「エレンってやつ、オレ達を新入りの孤児だと思って、いびりに来たんだ。んで、オレにウォーターボールを喰らわせて、マリアの髪を引っ掴んで部屋から追い出しやがったんだ、その時言ってたぜ?孤児が消えても人数が多いから分からないって」
実際、神父はロッテンに指摘されるまで、エレンの存在を忘れていた。
他の職員もそうなのかも知れない。
ひっきりなしに収容される子供、毛色ごとに数で管理する体制では、帳簿上の数さえ誤魔化せば、何人か減っても管理側は気付かない。
生活を共にしている内部の子どもは、"あの子が居なくなった"と気付いても、何故居なくなったかには興味がない。
カメリアはその辺りを指摘した。
「これは、職務怠慢と言わざるを得ませんね。後ほど、孤児の人数管理の名簿と、それに加筆修正が可能な職員にも聞き込みを致します」
「エレンのヤツはどうなったんだ?」
双子をいびった相手とはいえ、居なくなった理由は気になる。
「マリアも金髪の巻毛に碧眼で、この部屋にいたのですから、その辺りが引っ掛かるわね、手始めに、ミレーユ令嬢を攻めてみるわ」
カメリアの言葉は力強く、双子を安心させるように紡がれる。
「大丈夫、まだそんなに時間は経っていないわ、私とアドリアノがちゃんと見つけて見せるわ」
ロッテンは目当ての姿を見つけると、少しだけ安心して走り寄る。
自分の育った教会と、この街の教会の造りが似ていて助かった。
礼拝堂側にはほとんど人がおらず、隙を見て神父やシスターが使う裏通路から外へと抜け出せたのだ。
商店街で買い出しをしているカメリアを探しに出たところで、直ぐに見つけることができたのは幸いだった。
先程女に追われた事、ロッテンが感じた違和感などをカメリアに告げると、彼女は表情を変えた。
「アドリアノとも合流しましょう、きっと厩舎に居るわ」
疲れ切ったマリアを抱き上げ、ロッテンには逸れないようにと注意して、カメリアは足を早めて厩舎に向かう。
態勢を整え、双子とカメリア、アドリアノの4人は教会に向かった。
日が暮れ、静まり返った教会。
脇道から入って孤児院側の門を叩いた。
「巡礼官のカメリアです。この孤児院の責任者は誰?直ぐに呼んで下さい」
手首の金環は神官にとっての身分証。
それを職員らしき人物に、手を突き出して見せる。
一時が経ち、バタバタと奥から神父が現れた。
「カメリア様、如何なさいました?」
「貴方はハルバート神父でしたね?我々に宿泊の許可を出した…」
「左様でございます」
何があったのか分からない、そんな様子で受け答えをする神父、これが演技なら大したものだ。
「とにかく!孤児院の内部を確認させていただきますね!!」
言葉の応酬では埒があかないと見て、カメリアはそう言って内部に踏み込んだ。
それに双子が続き、アドリアノがしんがりを務める。
一部屋ずつ、神父が子供達の数を確認して行く。
やっぱり、左右で男女ごとに分かれ、更に毛色でまとめられて収容されている様子は違和感を感じる。
(まるで、家畜みたいだ)
吐き気を覚えて、ふと、マリアを見ると緊張からか微かに肩が震えている。
繋いだ手に力を込めて、大丈夫だとロッテンはつぶやいた。
「これで、ひととおり確認は終わりましたが、不審な点は無いようですが?」
神父はやれやれといった様子で両手を挙げた。
「修道服の、ケバい女が居なかったぞ!アイツはどこだ?あの、甘ったるい香水臭いヤツ」
双子を追いかけた女について、ロッテンが尋ねると、神父は少し考える様子を見せて、手のひらを打った。
「ああ!シスター見習いの、ミレーユ令嬢の事ですかな?」
「令嬢とは?」
カメリアが聞き返すと、神父は饒舌に答える。
「ええ、我らが領主、アンセイル侯爵様の次女に当たられるミレーユ・フォン・アンセイル様。香水をつけている修道女といえば、あの方だけでしょうな」
貴族の令嬢が婚姻を果たすまで、シスターの見習いとして教会に身を寄せることはままある事だ。
特に絆され易く、恋愛に奔放な令嬢こそ、純潔の証明のために放り込まれる傾向がある。
「ミレーユ令嬢であれば、昼の勤務を終え、自室で休憩をしているはずです」
「分かりました、後で面会を希望します」
カメリアの言葉を受け、神父は職員の一人に面会を取り付けるよう指示を出した。
相手は貴族、勝手に呼び出したり訪問したりは出来ないのである。
「後は、オレとマリアが泊まる予定だった部屋に行きたい」
「良いですよ、参りましょう」
ロッテンの要望に、神父は頷いて皆を率いた。
扉は開け放たれ、二つのベッドには昼間二人が使用したシワが残されたまま。
床にあるシミは、あの横暴な少女が放ったウォーターボールの跡だろう。
「神父さま、この孤児院に金髪の巻毛に青い瞳の孤児がいるよな?6歳以上で、口が悪くって、威力は弱いけどウォーターボールが使える女」
妙に具体的なロッテンの指摘に、何故それを?という顔をして、神父は頷く。
「確かにいるが?エレンという名前で8才になる…?!」
そこまで行って、ハッと神父が気付く。
「エレン!おお、あの子が居ない!!」
「エレンってやつ、オレ達を新入りの孤児だと思って、いびりに来たんだ。んで、オレにウォーターボールを喰らわせて、マリアの髪を引っ掴んで部屋から追い出しやがったんだ、その時言ってたぜ?孤児が消えても人数が多いから分からないって」
実際、神父はロッテンに指摘されるまで、エレンの存在を忘れていた。
他の職員もそうなのかも知れない。
ひっきりなしに収容される子供、毛色ごとに数で管理する体制では、帳簿上の数さえ誤魔化せば、何人か減っても管理側は気付かない。
生活を共にしている内部の子どもは、"あの子が居なくなった"と気付いても、何故居なくなったかには興味がない。
カメリアはその辺りを指摘した。
「これは、職務怠慢と言わざるを得ませんね。後ほど、孤児の人数管理の名簿と、それに加筆修正が可能な職員にも聞き込みを致します」
「エレンのヤツはどうなったんだ?」
双子をいびった相手とはいえ、居なくなった理由は気になる。
「マリアも金髪の巻毛に碧眼で、この部屋にいたのですから、その辺りが引っ掛かるわね、手始めに、ミレーユ令嬢を攻めてみるわ」
カメリアの言葉は力強く、双子を安心させるように紡がれる。
「大丈夫、まだそんなに時間は経っていないわ、私とアドリアノがちゃんと見つけて見せるわ」
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