強く握って、離さないで 〜この愛はいけないと分かっていても、俺はあなたに出会えてよかった〜 

沈丁花

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第2部

前夜④

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「ごめんなさいっ…、俺っ…。」

慌てて指で彼の顔についた白濁を拭おうとするけれど、達したあとの開放感に身体が支配されていてなかなかうまく動けない。

どうしよう、由良さんの顔、汚しちゃった…。

焦りと罪悪感でどうしていいかわからなくなって固まっていると、目の前で由良さんが顔についた液体を親指で拭い、あろうことがその指先を舌で舐め取った。

彼がするとそんな行為すら色っぽくて、その舌を飲み込んだ形の良い唇や伏せられた睫毛にどうしようもなく惹きつけられる。

…って、見惚れている場合じゃない。

「汚いですっ!!」

咄嗟に声を上げるも後の祭りだ。

「汚くないよ。」

浮かべられた妖艶な笑みと穏やかなのにひどく熱を孕んだ声音ににまた心臓が大きく跳ねた。

「そんな、わけっ… 」

ない、と言おうとした唇を人差し指で塞がれ、親指でそっとなぞられる。

そこから伝わった刺激は、ぞくぞくと背筋までもを震わせた。

彼が悪戯っぽい笑みを浮かべ、薄い唇がゆっくりと開かれる。

「あんなによさそうに僕のものを咥えていた口でそんなことを言うの?…幹斗。」

「..!!」

glareを放ちながら囁かれた言葉に、俺は大きく目を見開き、顔を真っ赤にして口を塞いだ。

…恥ずかしくてたまらない…。

「…ねえ、もう君の中に入ってもいい?幹斗君が可愛すぎてどうにかなりそうだ。」

由良さんが俺の上から覆い被ってきて、紫紺の瞳が縋るようにじっと瞳覗いてくる。

やっと挿れてもらえる…。

そう思ったら、先ほどまでの羞恥心や罪悪感はあっさりとなくなってしまった。

本当に欲望に忠実な身体だと我ながら苦笑する。

頷けば、彼が口と手でスキンの袋を切った。

大きな質量がゆっくりと中に埋め込まれていく。

「苦しくない?大丈夫?」

優しい声が鼓膜を振るわせたけれど、俺はただその問いに喘ぎで答えることしかできなかった。

やがて全てを彼で満たされ、深い抽挿が開始される。

どこまで自分で、どこからが彼なのか。

果てしない快楽で甘く淫らに蕩かされた結合部が彼との境界を曖昧にさせる。

同時に、いずれこの熱が抜かれてしまうことを嘆いて胸が切なく疼く。

いっそ一つに生まれてしまえば離れることもなかったのに。

…なんて、一つに生まれたなら、出会えた喜びを味合うことができなかったのに思うのは、きっと快楽に酔っているせいだ。

激しい運動で疲れた後は先ほどまで眠れなかったことが嘘のように彼の腕の中で目を閉じた瞬間にぱたりと意識を失った。
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