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episode6*言い訳なんてしなくていい
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昼休憩後は主に松田への業務説明をして過ごした。
自分の分の業務をこなしながら新人のサポートもするとなると時間がいくらあっても足りない。
説明して、見本を見せて、一緒にやってみて、ひとりでやらせてみて、確認して、フィードバック。
その一連の流れを業務ごとに繰り返していると、終業時間はあっという間に訪れた。
「あ、要さんお疲れ様です。」
「お疲れ様。」
「あ、チーフですか?今トイレに行ってますよ。」
「で、戻ってきた。」
「うわっ、びっくりした。」
「タルさんお疲れ様です、今日もう帰りますか?」
「おう。」
「じゃあ行きましょう。」
「あ、俺も一緒にいいですか?」
「うん。」
それぞれタイムカードを切って会社の外へ出る。
4月に入ると徐々に日が伸びてきて、今はギリギリ日没前といった感じだ。
まだ見頃の桜が薄オレンジの夕日に照らされている。
特に確認も取らずに家の方面へ歩いてきているけれど、大丈夫なのだろうか。
松田も途中までの帰路は同じらしく、そこに関しては何も言わずに付いてきている。
「松田くんて帰りどっち?」
「あ、駅の方です。」
「そっか。」
「要さんはどちらなんですか?」
「俺は、駅の方面向かう途中にT字路あるでしょ?そこを駅と反対側に歩いて行った所。」
「え、歩きですか?」
「うん。もう歩いてホント15分くらいの所ですよね、タルさん?」
「おう。」
「え、なんでチーフが知ってるんですか?」
「ん~?場所が同じだから。」
「えっ!?ふたりって本当に同棲してたんですか?」
「いやいやいや、ちがうちがう、同じアパートってだけ。それも偶然俺がタルさんが元々住んでたアパートの下の部屋に引っ越して、最近ご近所さんになっただけなんだよ。」
「あぁ~…、なるほど。」
「え、なんか疑ってない?その目つき。」
「う~ん…、まぁ、はい。」
「え、えっ?なんで?」
「や、なんか芸能人の別部屋同棲みたいだなって思って。」
「な、なにそれ?説明になってなくない?」
「あ、俺駅なんでここで。」
「ちょ、松田くん!?」
「お疲れ様でした~!」
「おう、お疲れ~。」
松田は飄々とした態度で言いたいことだけを言って去ってしまう。
それを唖然とした顔で見送る要。
こいつ今“俺はいいけどタルさんが誤解されたままじゃ困る!どうしよう!”とか思ってんだろうなぁと思うと可愛いくもあるけれど、それにしたって慌てすぎじゃねぇ?
要ってこんなキャラだったっけ?と思いつつ、こんな様子を見ているといじめたくなってくる気持ちもわかるので、今は正直松田の方により強く共感できた。
「え、いいんですかアレ、松田くん誤解したままですよ?」
「勘違いさせとけばいいんじゃねぇ?別に何も支障はねぇだろ。」
「まぁ、そう、ですけど…。」
「それに100%勘違いって訳でもねぇだろ?」
「え?」
「別部屋同棲かぁ…、なんかいいよなぁ。」
「…そうですか?」
「あ、俺昭和くさいこと言ってるか?何となくさぁ、芸能人みたいって言われるとニヤッとしちゃうんだよな。」
「は、ぁ…、そうなんですね?」
「あ、これ全然共感してくれてねぇな。」
「いや、俺そこじゃないところで引っかかってるんで、その別部屋同棲がどうのってところまで思考が追い付いてないんですよ。」
「え、どこにひっかかってんの?」
「や、松田くんが言ってたのって“同居”じゃなくて“同棲”ですよ?」
「あぁ~…。まぁ、それだって別に、可能性が無い訳でもないだろ。」
「えっ。」
「それより要、お前夕飯は?」
「え、…え?あ、夕飯ですか?牛丼買ってこようかと思ってますけど。」
「まぁた牛丼か?そんなに牛丼好きなの?」
「いや、早いしあったかいし安いんで。」
「…わかった、お前今日うち来い。」
「え!いや、いやいや。」
「いいから、風呂入ったらうち来いよ、待ってるからな。」
「ちょ、え?タルさん!?」
強引に話をすり替えた挙句、松田と同じ手口で言いたいことだけを言って逃げてきた。
要は自分さえ我慢すれば誰にも迷惑が掛からないと思っている節がある。
遠慮しているだけで、きっと内心では嬉しく思っているはずだ。
そう勝手に結論付けて、冷蔵庫の残りでふたり分の材料を賄えるメニューを考えはじめた。
自分の分の業務をこなしながら新人のサポートもするとなると時間がいくらあっても足りない。
説明して、見本を見せて、一緒にやってみて、ひとりでやらせてみて、確認して、フィードバック。
その一連の流れを業務ごとに繰り返していると、終業時間はあっという間に訪れた。
「あ、要さんお疲れ様です。」
「お疲れ様。」
「あ、チーフですか?今トイレに行ってますよ。」
「で、戻ってきた。」
「うわっ、びっくりした。」
「タルさんお疲れ様です、今日もう帰りますか?」
「おう。」
「じゃあ行きましょう。」
「あ、俺も一緒にいいですか?」
「うん。」
それぞれタイムカードを切って会社の外へ出る。
4月に入ると徐々に日が伸びてきて、今はギリギリ日没前といった感じだ。
まだ見頃の桜が薄オレンジの夕日に照らされている。
特に確認も取らずに家の方面へ歩いてきているけれど、大丈夫なのだろうか。
松田も途中までの帰路は同じらしく、そこに関しては何も言わずに付いてきている。
「松田くんて帰りどっち?」
「あ、駅の方です。」
「そっか。」
「要さんはどちらなんですか?」
「俺は、駅の方面向かう途中にT字路あるでしょ?そこを駅と反対側に歩いて行った所。」
「え、歩きですか?」
「うん。もう歩いてホント15分くらいの所ですよね、タルさん?」
「おう。」
「え、なんでチーフが知ってるんですか?」
「ん~?場所が同じだから。」
「えっ!?ふたりって本当に同棲してたんですか?」
「いやいやいや、ちがうちがう、同じアパートってだけ。それも偶然俺がタルさんが元々住んでたアパートの下の部屋に引っ越して、最近ご近所さんになっただけなんだよ。」
「あぁ~…、なるほど。」
「え、なんか疑ってない?その目つき。」
「う~ん…、まぁ、はい。」
「え、えっ?なんで?」
「や、なんか芸能人の別部屋同棲みたいだなって思って。」
「な、なにそれ?説明になってなくない?」
「あ、俺駅なんでここで。」
「ちょ、松田くん!?」
「お疲れ様でした~!」
「おう、お疲れ~。」
松田は飄々とした態度で言いたいことだけを言って去ってしまう。
それを唖然とした顔で見送る要。
こいつ今“俺はいいけどタルさんが誤解されたままじゃ困る!どうしよう!”とか思ってんだろうなぁと思うと可愛いくもあるけれど、それにしたって慌てすぎじゃねぇ?
要ってこんなキャラだったっけ?と思いつつ、こんな様子を見ているといじめたくなってくる気持ちもわかるので、今は正直松田の方により強く共感できた。
「え、いいんですかアレ、松田くん誤解したままですよ?」
「勘違いさせとけばいいんじゃねぇ?別に何も支障はねぇだろ。」
「まぁ、そう、ですけど…。」
「それに100%勘違いって訳でもねぇだろ?」
「え?」
「別部屋同棲かぁ…、なんかいいよなぁ。」
「…そうですか?」
「あ、俺昭和くさいこと言ってるか?何となくさぁ、芸能人みたいって言われるとニヤッとしちゃうんだよな。」
「は、ぁ…、そうなんですね?」
「あ、これ全然共感してくれてねぇな。」
「いや、俺そこじゃないところで引っかかってるんで、その別部屋同棲がどうのってところまで思考が追い付いてないんですよ。」
「え、どこにひっかかってんの?」
「や、松田くんが言ってたのって“同居”じゃなくて“同棲”ですよ?」
「あぁ~…。まぁ、それだって別に、可能性が無い訳でもないだろ。」
「えっ。」
「それより要、お前夕飯は?」
「え、…え?あ、夕飯ですか?牛丼買ってこようかと思ってますけど。」
「まぁた牛丼か?そんなに牛丼好きなの?」
「いや、早いしあったかいし安いんで。」
「…わかった、お前今日うち来い。」
「え!いや、いやいや。」
「いいから、風呂入ったらうち来いよ、待ってるからな。」
「ちょ、え?タルさん!?」
強引に話をすり替えた挙句、松田と同じ手口で言いたいことだけを言って逃げてきた。
要は自分さえ我慢すれば誰にも迷惑が掛からないと思っている節がある。
遠慮しているだけで、きっと内心では嬉しく思っているはずだ。
そう勝手に結論付けて、冷蔵庫の残りでふたり分の材料を賄えるメニューを考えはじめた。
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