転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね!? ~平凡に生きていくために、私は諦めないんだからっ!~

鶯埜 餡

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十一歳

ごまかしとまやかし

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「なんとか順調に進んでるな」
 鹿狩り当日。
 快晴の空の下、秘書たちの控え用の天幕の中。すでにディートリヒ王やクリスティアン王子、セリチアのクロード王子を含む先発隊は出ている。アリアはユリウスやほかの公爵家の面々と出発するが、先に秘書としての仕事をしていたので、彼らとは別行動をとっている。もう少ししたら、アリアをこの鹿狩りの狩り手に推薦した張本人が来る手はずになっている。
 一応、ベアトリーチェとともに自分のできる範囲の部分で何事も起こってないことに安心しているアリアの姿に、クレメンスも安堵したように声をかけてきた。
「ええ。正直、二人の来訪にはヒヤリとさせられましたけど、ある意味今後のためにも来てもらって助かりました」
「そうだな。あの一件・・・・は想定外だったが、お前にとってみれば少し幸運ではなかったのか?」
「……――そうですね。幸運だったのかもしれません」
 リリスの件は想定外であった。
 でも、クレメンスの言うとおり、たしかにいつかはなにかしらするであろうと考えていたわけなので、そういった意味では自滅してくれてありがとうというべきなのかもしれない。でも、それを断言できるほどアリアは非情になりきれなかった。

「もし彼女がリーゼベルツでなにかしらしてくれた場合、国は彼女に相応の処罰を下さなければなりません」

「そうだな」
 アリアがはじめた言葉に頷くクレメンス。
「ですが、そのときに私は彼女にきちんと罪を償うように言えるかどうか自信はありません」
「……――?」
「今でさえ、そんなところへ嫁いで彼女はやっていけるのかどうか不安ですから」
 彼女の言葉に一瞬、どういうことだと怪訝な視線を向けたクレメンスだが、理由を聞いた彼はそういうことかと納得したようだ。
「なので、今回のレオノーラ皇女が持ちこんだ話は私にとって、試練でもありました。身内をきちんと処罰できるのかという。もし私が異を唱えれば、スベルニアとリーゼベルツの国交はほぼなくなることに、私がなにも言わなければ、今後も今までの関係を保てると」
「そうだな。もしかしたらあの人はそこまで含んでいたのかもしれないな」
「はい。なので、あの方の前で少し動揺してしまいましたが、大丈夫なはずです」
 アリアは少し無理して微笑んだ。そうでもしないと自分が耐えられなかった。彼女の無理やりな笑みに気づいたクレメンスはそっと手を握った。
「……なにかありました?」
「いや、なんでもない」
 その理由に気づかなかったアリアにぶっきらぼうに答えた彼はじゃあなと言って、天幕から出ていこうとして、振りかえる。
「鹿狩り頑張れ、楽しみにしてる」
 楽しみにしてる?
 どういう意味なのだろうかと思ったのただが、彼としては純粋な激励なのだろう。そう気づいたころには彼の姿は消えていた。

 クレメンスが去ってからまもなくして、『お迎え』がやってきた。
「では、いきましょうか」
 セルドアの柔らかな笑みは昔から変わらない、っていっても、一年前の話だが。アリアはその笑みに返すようにありがとうございますとほほ笑んだ。きっと彼の隣に立つのは柔らかな笑みが似合う人。打算まみれの自分では似合わない。
 狩猟で使う弓矢は『前』と違って、自前のものではない。一部例外はいるけれど、基本的に貴族令嬢は持たない。アリアもそれに漏れず、すでに借りる弓矢を選んで預けておいていたのだ。本当は今から騎士団の倉庫に取りにいくはずなのだけれど、どうやら彼はわざわざ持ってきてくれたらしい。つくづく自分に甘い人だなと心の中で苦笑いする。
 ほかの同行者であるアランやユリウスが待っている場所まで彼は連れていってくれる。副騎士団長なのに、ほかの職務はいいのだろうか。見た感じ、そんなにほかの騎士も忙しくしている様子もないから、彼らに任せてもよいものではないのだろうかと考えたが、一応彼が推薦したということを考えると、彼自身が動いてくれるのは一種の責任のようなものなのだろうと考えておくことにした。
「ここは王宮の敷地内ですが、お気をつけてください」
 くれぐれも弟君やバルティア公爵子息から離れぬように。
 別れ間際、セルドアはそっと耳打ちした。
 確かにここは王宮内といえども、不届き者がいるかもしれない。しかも、今日みたいなイベントに乗じて仕掛けてくる輩がいるかもしれない。本当は一人きりになりたかったが、セルドアの忠告を聞いておこうと判断したアリア。
 しかし、セルドアが彼女を預けてもいいと判断した人物はアリアにとって少し意外だった。
 ユリウスについてはよほどのことがなければ、エレノアははおやという壁をかいくぐるということさえなければ、接触する手段はないからほぼ安全なのはアリアでもわかる。でも、アランはどちらの身内でもないが、どうやらセルドア独自で身辺調査を行い、アリアを預けても大丈夫だという判断を下したようだ。
 ユリウスもアランも事前にセルドアから聞いていたのか、アリアがセルドアに連れられてきたことに驚く様子はないが、まさかアリアが本格的な格好で来るとは思っていなかったのか、セルドアが自分の持ち場に戻っていった後、アランがぼそりと呟いた
「そっちの方が似合う」
「は?」
 たしかにいつもはドレスだから、このキュロットのような恰好は珍しい。けれど、まさか似合うと言われるとは思っていなかったので、驚いてしまった。しかし、なぜか言ったアランの方が恥ずかしがっているような気がした。
「なんつぅか、凛々しいというか、なんか見覚えがあるんだ」
「……?」
「いや、なんでもない」
 二人とも行くぞ。
 アリアは彼の言動にどういうことだと説明を求めたが、本人はそれをごまかすように出発の号令をかける。
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