毒魔法使いの異世界探訪!

しぼりたて柑橘類

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一章.魔法使いと人工キメラ

二十六話目-無気力商と次の国

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 「……よし、これで大丈夫なはずだ……くれぐれも無茶をするんじゃないよ? 勇敢と無謀ってのは違うんだから……」
 「はい……すみません、ありがとうございました」


 僕は今診療所で治療をしてもらったところだ。
 
 左目と左手がある感覚はたった数時間でここまで失われるのだろうか?
 肘から先に別の生き物を植え付けたような感覚だ……。


 回復魔法をかけてもらい、即座に元通りになった為、ゾーノの時よりはいささか安く済んだ。


 
 「さぁ、次の街に行くわよっ!」
 「そうだね」

 
 診療所を出て家に戻る……すると、噴水近くのベンチに横たわるパズズとその隣には……誰だ?

 長い赤毛を一本に結い、短めのフード付きカーディガンを羽織っている。
 腰には……短剣を挟んだベルトを腰に斜めにかけている。


 
 「おお……来たのかうぬらよ……」
 「あぁ……君らね……」


 パズズは力無く手を振った。
 それに合わせるように隣の見知らぬ人は気だるそうに手を振る。

 



 取り敢えず僕はパズズに駆け寄った。


 「どうしたんですか? まさか、また……」
 「そのまさかなのじゃ……」


パズズは背中に生える翼を痛そうにさすりつつ、ゆっくり起き上がる。


 
 「一応……あの魔法使いは倒したのじゃが……」
 「まさか他の奴らが!?」



 まさかピュアオーガとか……。



 「うんにゃ……少しじゃが力が! それで……」
 「力が戻った!?」



 どういう……事なんだ?
 確かに言われてみればパズズのその体は心做しか大きくなり、牙も角もしっかりしたものになっている……。


 セシリアはそんなパズズを見つつ一言、

 

「そんな……仲間だと思っていたのに……」




 セシリアは自らの胸を押さえ、パズズの胸に目を向ける……。

 確かに……言いたいことは理解出来たような……。


  「まぁ……要するに、制御を誤ってここに飛ばされたっちゅう訳なのじゃ」
  「で、彼女が空から降ってきて……取り敢えず回復魔法をかけてみた。 アンデッドでも無さそうだし」
 

回復魔法使える人で良かったなぁ……。



 「申し遅れた。 私はフーカ……。この先ので商人をしてる……因みに年は十五、あまり気を遣わなくていいよ……」
 「僕はイーヴォ、イーヴォ・ディーツェル。 で、こっちの元気なのが……」
 「セシリアよっ! よろしくね!」
    


 ん?国……?
大陸全土をこの国は支配……というか統一してたはずだけど?



 「あのフーカさん?  国と言いますと?」
 「あぁ……この先に小さな閉鎖国家がある……あそこは独自の文化が栄えてる国なんだけど……」
 

 フーカさんは懐から一枚の紙片を取り出した。かなり煤けてはいたものの、それは何処と無く地図のように見えた。


 フーカさんは続ける。


 「この街を真っ直ぐ北に進めば……ああ……大通りに沿って真っ直ぐ進めばこの国はある……。 まぁ……表向きには国民以外立ち入り禁止なんだけど……この先の街に行くにはここを通るしかないから旅人もひっそりと通る……」
 

……。僕はひたすらにこの言葉を反芻し続けた。


 「何故ここを通るしか無いんですか?」


 そう尋ねると、セシリアのでも、パズズのでも、ましてやフーカさんのでは絶対に無い甲高い声が聞こえた。



 「そんなのこの国を避けるように高魔力地帯が広がってるからに決まってるだろ!」


 声のした方に目をやると、そこには緑の羽と緑のドレスを身にまとった小さな妖精がいた……。態度はその体に余るほどデカい……。

 先程、高魔力地帯と言っていたが前にも話した通り自然に魔素が溜まり、この世の終わりみたいな光景になっている所がその高魔力地帯なのだ。


 さて、その妖精は僕とセシリアの事を凝視する……。


 「うーん……なんだろ……人なの? お前たち。 なんか……こう、悪魔の様であり化け物の様であり……なんか変な感じがするな」
 「口を慎め……」



 フーカさんは鮮やかな手つきでその妖精を引っ掴むと、もう片方の手の親指で頭をぐりぐりと押さえつけた……。


 「痛い痛い痛い痛い痛い痛い! もうしません!もうしません!ごめんなさい!」
 「分かればいいよ……」



一息ついてフーカさんは、



 「彼女はエアル……妖精……なんか知らず知らずのうちに引っ付いてきた」
 「野原で一人ぼっちで泣いてたあんたを放っとけなかっただけよ!」
 「要らないって言ったら見捨てないでって泣きながら懇願して来たのはそっちでしょ……?」
 「う、うるさいうるさーい!」


エアルは顔を真っ赤にしてそこら中を飛び回った。



 「あ……あとこの子も……名前は、アル……」
 

そう言うといきなり後ろから大きな犬が現れた。犬はこちらをゆっくりと目を向けるとそのままお座りをして黙っていた。よく見ると犬の黒と白の長めの体毛は手入れが良くされているようで、とてもサラサラとしていた。


これを見て大騒ぎしたのは言わずもがなセシリアである……。

 
「おおっ! 犬だっ! おっきい!  ……あ! そうだ!」


 すると何を思ったのか右手を差し出し、「お手っ!」と一言。


 するとその犬はセシリアの頭にその大きな手を乗せた。


 
「もう! 頭じゃなくて手に乗せてよ! お手っ!」


 その大型犬は右の手だけに飽き足らず左手も頭に乗せた。


 「ううっ……。 言うこと聞かない……」


 セシリアは頭に乗ったアルの手を退けて、僕の後ろに隠れ、涙目で犬をじっと見つめていた。


 「もしもの事を考えて、私以外の人の言うことを聞かないように教えてる……職業柄そうしないと大損しかねないし……」
 


 フーカさんは急に話の流れを変えた。


 「さて……本題入るよ……。 君たち……イーヴォとセシリアだっけ? スロームに行きたいんでしょ?」
「!?」
「なんでそれを!?」


フーカさんは少しだけ微笑んで、


 「商人の勘……ってやつかな……? 取り敢えず君らはこの先の閉鎖国家【桜馨おうかい】の国に行かなくてはならない……よね?」
 「まぁ……まぁ入れればですがね……」
 


 フーカさんはベンチの後ろから大きなリュックサックを取り出した。
 そのリュックをしばらく漁って、五角形の二つの木の板を取り出す。
 
 板には「桜馨通行手形 :何人ヘノ讓渡ヲ禁ズ」との文字の焼印が捺されていた。

 これ貰って大丈夫なんだろうか……?

 「これさえあれば通れるよ……お代は……あちらの国に行ってから払ってくれればいい……  」

 「あの……これ大丈夫なんですか? 無闇に人に渡
したりして……」

 「偽者だから私は罪に問われない……」

 「僕らが捕まりますよ……」

 「私はクリーンなものからダーティーなものまで何でも取り揃える……それが本業。 まぁ君らは来てくれさえすれば……」

 「何か手伝うことでもありますか?」
 「いいや……君らはまず身支度をとっととして明るいうちに入国して……この先の草原はアンデッドが、国では辻斬りが出てくる……」
 

 「ああ……そろそろ行かなくては……まぁ……宿はいいのを紹介するよ……」
 「すみません……ありがとうございます」
  

フーカさんは妖精と犬を引き連れて、足早に去っていった。


 「……よしっ! 私達も準備するわよ!」
 「そうだね」


 僕らもまた身支度を始める為、もう一度家の中に入っていった。




 「……あの……妾は? 妾とルインとの大冒険物語は……?」
 
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