毒魔法使いの異世界探訪!

しぼりたて柑橘類

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一章.魔法使いと人工キメラ

二十七話目-次の国までひとっ飛び

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 「いやっほーい!」
 「騒がないで! 傾けないで! 落ちるっ!」


 例にもよって僕らは、イゴロノスと桜馨を繋ぐ草原の上空にいる……。

 いや、正確に言えば今まで上空に。 

 言い訳をするとするならば、セシリアのリュックサックのことを忘れていたため、重心が更に激しくブレることを考慮していなかった。



 「ああああああああああああ!!!!!」
 「いやっほーい! たーのしー!」 
 「楽しんでいられるかあああああああ!」



 僕は箒を左手に持ったまま大の字になって地面へと落下している……。


 落ち着け……落ち着け……毒を噴射してその勢いで相殺すれば何も怖くない……そうだ何も怖くない……。


 そうして僕が右手を地面に向けた瞬間……!
 

 「イーヴォも楽しみなよ!」
 「!?」

 セシリアは僕の右手を引っ掴んだ……。


 どうやって僕は降りればいいと言うのだろうか……?
 

 くそっ……なにを言い返してやろうかと思案していたけど無茶苦茶無邪気に微笑みながらいとも容易くえげつない事をやっていやがるッ……!

 悪気は……皆無のようだ……。


 まぁ……許す許さないの前に死ぬか生きるかである。

 
 「着地は……どうするつもりなの……?」

 「あ!何も考えてなかった! てへっ!」


 嫌な予感がする。 
 否、たった今自身の死期を察してしまったかもしれない。
 


 僕は間も無く地面に叩きつけられる……。

 凄まじい衝撃と共に腹のあたりから破裂するような感覚と、水風船を割ったかのように全身に液体が飛び散る……。


 目を開けると、手は真っ赤に染まっていた……。


 
 「お主……とっとと儂の上から退かぬか……」
 「!?」


 よく見るとその真っ赤な染みはもぞもぞと動き、服から剥がれ落ちているのだ……。



 うわあ気持ち悪っ……。



 その赤い欠片は一つにまとまり、一抱えほどのスライムに変わった。



 それを見て一足先に着地していたセシリアが、



 「うおっ! なにこれかわいいっ!」

 
 と言いながら抱きしめた。



 「ぎゃああああああああ、痛いッ! 離さんかああああ!裂けるっ! 千切れるッ! 捻じ切れるッ! 」
 「セシリアっ! めっ! 離したげなさい!」


 セシリアは不貞腐れたようにスライムを地面に叩きつける。



 「全く……お主ら儂に恨みでもあるの? 今日で二回も死にかけたんじゃが? 」



 ええと……確かこのスライムは前にも話したように高い魔力を浴びて突然変異した個体だろう。

どうやらこの先に高魔素地帯が広がっているというのは本当らしい。


 やっぱ桜馨を通るしかないのか……。



 するとスライムは僕に話しかけてきた。


 「おいそこの白髪の冒険者」
 
 「はい?」

 「会った義理に教えてやろう。 どうせお主らも桜馨に行くのじゃろう? この先の桜馨は未だに独裁体制が敷かれておる。 長居は無用、真っ直ぐに走り抜けろ。 さもなくば……」


 「さもなくば?」

 「主らはそちらにいる『ブシ』やら『サムライ』やらに殺される」

「なんです? そいつらは?」

 「独特な刀を持った戦闘集団じゃよ。相手にしない方がいい。 皆狂っている」


 「狂ってる? いくらなんでもそれは言い過ぎなんじゃ……」


 「いいや……あのが、あの真っ黒な甲冑があの国に入ったあたり……一年前ほどじゃの……それから何かと荒れるようになったのう……」


 にわかには信じ難い話だ。
 確かに閉鎖国家と聞くと恐ろしいものを想像するが……これ、秘境の戦闘民族じゃないよな?


 
 「ところでお主ら……どこに向かっとるんだね?」
 
 「スロームって街なんですが……ご存知ですか?」

 「あそこか……なんだ? あんな所に何を求めて行くというのだよ……?」

 「それはどういった意味で?」

 「単刀直入に言おう。 その街には……いや、そのまちのあったはずの所には残っていないはずだ」

 「……え?」


 「家屋、人はおろか土地すら残っているのか分からんよ……」

 僕は唖然とするしかなかった。

ファントムの襲来? 天災?争い?……一体何が起こったのだろう?

 「一体……何があったんですか?」

 「これ以上、我から何か言うこともあるまい……自分の目で確かめるのが一番だろう」


 スライムはそう言い残して、もぞもぞと僕らから離れていった。

 セシリアはと言うと話が余程つまらなかったのか、リュックを枕に爆睡していた。



 さて……この街では何が起こっているのだろうか?


 僕はセシリアの体を揺すった。

 「セシリア起きてー!そろそろ街に入るよ!」

 「寝てないっ! 起きてたしっ! 考え事してただけだよっ!」

 
 そう言いながらセシリアは飛び起きた。

 なお、よだれが口元を垂れているため説得力など皆無だ。
 

そのまま僕らが真っ直ぐに歩いていくと、大きな木造の櫓が見えた。

 その片側の柱には検問所と大きく墨で書かれてあった。
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