毒魔法使いの異世界探訪!

しぼりたて柑橘類

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一章.魔法使いと人工キメラ

二十八話目-桜の国に鳴り響く

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 「そこの者! 止まれ!」


 僕らが歩いていくと、門番らしき男がいきなり叫んだ。

 その声は相当な鍛錬を積んだものらしく、馬鹿でかい。
 さながら龍の咆哮のようだ。



 「……お前ら余所者だろう? 手形は持っているのか?」

 男はよく見れば見慣れない頭をしている。

 後ろの髪を一つに束ねて前に持ってきているのだろうか?
 
 何はともあれその風貌は僕らにしてみれば異様そのものである。


 
 男は長い木の棒の先にナイフでも付けたような奇っ怪な武器を構え、手型を催促した。


 「はい……これでいいですか?」


 門番の男は僕から強引に木片を奪い、まじまじと見つめた。


 「うん……よろしい。 門を開けよ!」



 男が叫ぶと木の扉はゆっくりと手前側に開いた。



 
 そこに広がっていたのは迷宮だった。


 とても街とは言い難い、常に目線の先には壁のあるような作りをしていた。

 道の先には丁字路が、その先を抜けると三叉路、そしてそのどれかが行き止まり……。

 そんな迷路は全て何らかの建物で出来ていた。
 例えば服屋と食事処が軒を連ねていたり、その先には民家がある……と言った具合だ。


 そして中でも際立つのはその建物の背の高さである。

いずれも木で出来ており統一性はあったものの、陽の光が漏れる隙間もないほどびっちりと建てられている……。


 ふと空を見上げても気がつけば屋根が頭を覆っていた。

 道端には街灯が多く、とても明るい。

 本当に昼間のようにしか感じられないほどである。



 「……は? 」
 「何ここ!すごーい!」


 セシリアは心配など一切無用とでも言うかのようにはしゃぎ回っていた。

 
 どう考えたって向こう側に辿り着くには休まずに歩いても二日はかかりそうだ。

 スライムなら……まあ、全部通過出来そうだからなぁ……。


 
 セシリアは周りの人の服に興味津々である。


 「おお! 何あの真っ赤な服!?  袖のとこがでかい! 一枚の布なのあれ? とりあえずいい! 」

 
 僕は飛び跳ねるセシリアを呼び止めた。


 「セシリアちょっとこっちに来て」
 
 「どうかしたの?」
 
 「この街を出来れば真っ直ぐに抜けたいんだけど……」

 「何言ってるの!? せっかくこんなところに来たのにもったいないじゃない!」
 

 まあ……こうなるだろうなとは思っていたけど……。


 僕はあのスライムが言ったことが気にかかって仕方なかった。


 特に国がおかしくなった時に現れたという鎧のくだりである。


 恐らくこの街にファントムの手下……あるいはそのものがいるのだろう……。

 そいつらに会ってしまえば戦闘は必至、そして最悪の場合死ぬ。


 僕はそれが例え杞憂にだったとしても早くこの存在がうるさい街を出ていきたかった。



 セシリアは不貞腐れたようにそっぽを向くと、

 
「イーヴォ何あれ?」


 と、言って路地裏の方を指さした。


 そこには真っ赤な点が左右に二つ、上下に規則的に揺れていた。


 その点が下がる度に[ガシャン……ガシャン……]と、機械の駆動音のようなものがした。


 それが電灯の明かりによって照らされたとき、僕は唖然とするしかなかった。


 それはどこかゴーレムに似ていた。

 顔には真っ赤に光る目のようなものが二つに、その上から口角の吊り上がった人間の顔のお面が付いている。

 胴体は常に何らかの駆動音がなり、背中には排気口らしきものが後ろ向きについていて常に震えていた。

 腕には手の代わりに見たことの無い刀……ブレードの片方の刃を潰したかのような……かといってその青黒い刀身はそれらよりも遥かに鋭そうだった。

 足には銃……だろうか? 足の裏あたりが銃口になった機関銃、外側にはそれぞれ一つずつ大きめの射出機構のようなものがついていた。

 
 その殺意剥き出しの機甲兵はゆっくりとこちらに向かってきた。
 

 そして真っ赤な目でこちらを見ると女の人のような声で、


 「……データベースと照合……該当無し……対象を不法入国者と断定、処理を開始します」


 
 その機械人形は刀を振るいながら僕らの方へ真っ直ぐに突っ込んできた!


 「……ッ!」

 「逃げるわよっ!」


 セシリアは僕の襟首を左腕で引っ掴み、凄まじい勢いで駆ける!


 そして、この騒ぎを聞きつけ、先程の巨漢やら通行人やらがこちらにやって来た。


  「……敵の能力値をを判定……対象α:筋力B、耐久C、魔力C、特殊能力を確認、脅威判定を更新します」


 機械人形は足の代わりの機関銃の変形を始める。

 口径を大きく、長さを短く……これはもはや敵に撃つためのものではないであろう。


 「敏捷上昇:sample=鎌鼬」


 機械人形はその場に浮遊していた。

 
 かと思えば弾丸の如き凄まじい速さでこちらに向かってきた!

 
 その速さはどれほどか計るすべは無いものの……セシリアより遥かに早いことは明白だった。


 「……ッ! 追い付かれる!」
 
 「イーヴォ! 毒出して! 撹乱になればそれで……」


 セシリアがそう言い残した瞬間、僕は地面に叩きつけられた。


 ゴロゴロと転がり、倒れつつセシリアの方を見る……その視線の先にはセシリアの左腕が落ちていた。



 「グアアアアアアアア!」

 
セシリアは泣き叫び、転げ回る……。

 
 「よくも……!」

 僕が左腕に毒をまとめかけたその時前方から先程の槍兵に呼び止められた。

槍兵はセシリアの服の襟首を掴み、右手で持ち上げた。

 「動くでないぞ! 不届き者がっ! 少しでも動けばこの娘、我が槍の餌食となろう!」


  「くっ……!」


 万事休すだろうか……?


 その時、まさにその時である。


 どうしようもない状況はこれによりひっくり返された。


 「おい! を見やがれ!」

 「き、今日も来やがった!」

 「おお! がやって来たぞ!」
 
 群衆は全員上を見つつ叫んでいた。

 僕もそちらをつられて見てみる。

 
 少し先の通りの街灯、その上に一人の少年らしき姿と縛り上げられてその少年に吊るされている小太りの年配な男性がいた。

 年配そうな男性は高価そうな周りの人と同じような服を着ている

 その少年はボサボサの赤髪、真っ白な肌の二本角のオーガの面、黒いフードの上に周りの人のような赤黒い着物、そして足にはジーンズの足の上に幾重ものベルトを巻いていた。
  
 そして背中には棒状の何かを背負っている。


 「おい! 革命隊の輩だ!引っ捕らえろ!」


 ドタドタと槍兵から機械人形までその少年の方に向かった。


 「セシリア!」


 僕はセシリアを抱き起こし、セシリアのリュックから包帯を出して左腕の先端にまいた。


 なんであろうと、恐らく無いよりはましだ。


 セシリアは気を失ってはいるが、そこまでの出血もない。

 傷は少しばかり塞がりかけていた。

 龍人だからこそなせる技だろうか?

 処置が終わってから僕はその仮面の少年の方を見る。

彼はその裕福そうな男性を吊るしながら言う。

 「ククク……ッアハハハハハハハハッ! さあ!寄れ!見れ! 狂え!ここに見えるは領主の大老、名を達磨 悠之介 である! 」

 「助けて……助けてくれぇ……」

それを見て槍兵、

「おい貴様! 即刻打首にしてくれる! 達磨殿を離さんか!」

 
どうやらこのだるまなどと言う人はこの国の大臣のようだった。


 「ほう……解放しろとな……良いぞ! さあ受けとれぇ!」


 少年は男性を左手で放り上げる、そして小刀を懐から取り出して右手に持つと……、


 「さあさあ! いざ御覧じろ!」


 目にもとまらぬ速さで振り回し……鞘にしまった。


 途端に断末魔を上げることもなく男性の形は崩れ、腹が、顔が、腕が、足が、形をなくし槍兵の元に降り注いだ……。


 「貴様! 即刻処刑してくれるわ!鐵甲兵てっこうへい! 切り刻め!」

 「御意」 


 あの機械人形は少年に迫る……!


 「時代遅れのブリキのおもちゃなんざ餓鬼も喜びやせんよ……!」


 背中に背負った棒状のものを脳天めがけて振り下ろす!

 [ガコン!]という鉄を打つような音と共に機械人形の頭は砕け散った!


 「貴様! もう勘弁ならん! 我が槍で貴様の心の臓、撃ち抜いてくれる!」

 「ガハハハハハ! 適うものか! えぇと……敵の奴らはひぃ、ふぅ、みぃ……よし、皆まとめて爆ぜろ!」

 少年は右手に持った棒状のそれの先端を口にくわえた。

 笛だったのかよそれ。
 硬すぎんだろ!

 見慣れない木みたいな材質してるけど、それで鉄が打ち壊せるのかよ。

というか内部構造壊れてないのかそれ? 
 

少年は笛を構え、

 「これこそが……貴様らが伴天連バテレンだなんだと言って手にすることのなかった異国の術……魔法学だ!」
  
 「さあ聞くが良い! 音魔法《セイレーンの絶唱》を!」


 眩い光とともに爆音が衝撃波となって押し寄せる!

 僕はセシリアの耳を肘で、自分の耳を手で塞いでなんとか持ちこたえる……。


 ふと目の前の槍兵を見ると、槍兵にはとりわけその轟音は響いているらしく、耳を抑えて悶え苦しむ……。
  

 だが、同じぐらいの距離にいるはずの通行人にはそこまで聞いていないようだ……?


 彼らは皆、耳を押さえる程度で済んでいるのだが何故槍兵にはあれほど効いているんだ?


 刹那、槍兵の内の一人の頭が弾け飛ぶ。

 それが二人、三人……と増えていき、ついに槍兵はその場からいなくなった……。

 
 「一体……何が?」

 僕が唖然としていると、いきなり背後から頭に袋のようなものを被せられる!


 「!」

 「悪く思わないで……今はあなた達が必要なの。 暴れずに大人しくしておいて」
 

 袋の上から僕の顔にタオルのようなものが押し付けられる!

 「!?  離せ……離せ……!」


 しばらく抑えられると……意識が……とお……く……。


  セシ……リア……。
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