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一章.魔法使いと人工キメラ
三十話目-革命隊とはこれ如何に
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「頼む……力を貸してくれ……」
「落ち着いてください! この街では何が起こってるんですか!?」
数秒の間を挟み、大河さんは声をはりあげた。
「そんじゃまず、これを見やがれぇ!」
大河さんの後ろ側の天井からいきなり[壁]が落ちてきた。
いや、語弊があるだろう。
壁のようではあるものの、中央が長方形の黒っぽく塗られている……のだろうか?
黒っぽい何かをはめ込んでいるようにも見える。
「こいつは"液晶"って言う代物を使った最新鋭のモニターでなあ! なんと!聞いて驚くなよ! 魔力が要らない! 電気で、それもフルカラーで映せるんだ! 」
……はい?
大河さんは軽めにモニターとやらを叩き自慢げに答えるが……。
それで……何ができるんだ?
フルカラー?
電気?
電気って言うと雷みたいなやつなのか?
そんでもって……映すって何を?
大河さんは文字の書かれた四角い何かを持った。
「ああ、お前さん"キュロノス"生まれだってな? あそこには無いだろうよ…あの四角いのは、遠くのものやらなんやらをそこにあるが如く映し出すもの! そしてこいつは、それを操る"からくり"だとも!」
満面の笑みを浮かべて大河さんは言った。
「さあて御覧じろ! これこそが我が国の近況よ! 」
そう言って大河さんが"操作するためのからくり"の方のボタンを押す。
そうすると、その画面とやらに【十分でわかる! 桜馨(おうかい)のひみつ!】という文字が現れた。
「さーてとまずは将軍と幕府……そんでもって俺ら"革命隊"の話だな!」
もう一度大河さんがその装置のボタンを押す。
次は上に将軍、下に革命隊と画面に現れた。
「さてと、まず将軍! まあ、他のとこで言うところの王様って奴だな。 言わずもがな圧政者だな! 」
へぇ……こんな所でも王政みたいなのが敷かれてるのか……。
「そんな奴に不満を抱いた俺は、まず圧政を崩す"力"を、次に圧政に変わる"力"を、最後に、圧政を変える"力"を探しに齢九つで郭外に出た」
九歳!?
うっそだろお前……。
なんだろうか、あまりに早すぎる気がする……。
天性のカリスマやら天授の才能というのがきっとこの男の中には有るのだろう。
「まあ、こちらでは呪術やらなんやらと恐れられていたんだが……俺はまず、空気中の魔素を使用したお前らの使ってるような魔法を学んだ」
「それでこの国に長らく伝わってる呪術と魔法を合わせた『詠唱型魔術』ってのを編み出すんだが……まずはこれに三年かかった」
……はぁ?
な……なんだそれ……?
恐らくそれは常人には出来やしない。
出来るような賢人がいたとしてもゼロから編み出すのならその一生を費やしてもおかしくない代物だ……。
きっと彼には魔術師としての誇りはない。
それ故に異文化同士を混ぜ合わせることも厭わなかっただろうし、双方の文化というものをしっかりと修めようともしなかったのだろう。
それを考慮したとしても三年は短すぎる。
彼は……大河は、化け物だ。
「まあ、それはさておきだ。 その後は魔法を学びながら民主主義ってのも体感したし、国に不正再入国した時に一騒ぎ起こしたら、人は自然に集まった」
なるほど。
反逆心を持っている者は少なからずいたのだ。
現に、僕らが助けられた【見世物】 などと大河さんが言っていたテロ活動には、見物人が出るほどだ。
一度綻びが起こればいずれこの国も滅びるのだろうが……そう一筋縄では行かないはずだ。
「ハハハハハ! 一通り察したか! 俺求め続けたの最後の駒……角行よ!」
か、かくぎょう?
なんだよそれ……。
要は戦力が欲しかったってことなのか?
大河さんは混乱する僕をよそに続ける。
「あと数駒進めば、お前は化け物になる。 比喩なしの化け物だ! だから角行だとも!」
え?
確かに幾度となくこれまで化け物の匂いがするだのと言われてきたけど……。
あと、『かくぎょう』って本当になんだ。
「ああ……お前は危ういんだよ。 お前さんとセシリア? とかっていう半龍の同僚。 あいつもだよ」
まあ……それは何となく知っていたような……。
寝る時間とか食べる量とか、とても人並とは言えない。
「まあ、そういうこった。 お前らは揃って本当に似たもの同士って奴だな!」
クハハハと、大河さんは豪快に笑ってみせた。
いやいや待て。
話が全く読めないが、何やらとんでもない事言ってないかこいつ!?
「ど、ど、どう言うことですかあああああ!?」
「知らん! 俺の直感だ!」
そんな彼を見つつフーカさんは、
「ごめんね、こいついきなりわけわかんないこと言い出すから……」
「は、はぁ……?」
フーカさんは続けた。
「君たちは結構強い。 その代わり精神が強くない……だから気をつけろよってことなんでしょ? あと角行ってのはこっちにあるチェスみたいなゲームの駒のひとつよ……」
おお! 分かりやすい……。
フーカさんがいなかったらこの人との意思疎通は相当厳しいものになるもしれない……。
大河さんは再び口を開いた。
「そうだとも! そのため、お前らに手を貸してもらいたかったわけだ! 将軍の殺害にはともかく、"鎧"攻略ではお前らの存在が不可欠だ!」
鎧。 ついにその話が出てきた。
恐らく、この鎧ファントムとも繋がりがあるだろう。
ターニャが出てきたということは、残りの役職も生きている。
僕は口を開いた。
「鎧と言いますと……それは『ツァン』と、名乗っていましたか?」
大河さんは柔らかな笑みを浮かべる。
「魔法使いを倒しているだけあって鋭いな。 そうとも! 奴は『ツァン』とかっていう鎧騎士だと……断言していい」
随分と含みのある言い方だった。
「なにか……引っかかることがあるんですか?」
大河さんは目を逸らしながら、
「なーに……奴が完全なる殺戮兵器になってて人語も話さないし、将軍も手に負えずに封じの術使ってるんだけど三日後に切れるから、それの対処をするために対城兵器使うとか無いからな……ハハハハハ……」
「丁寧な解説ありがとうございます!?」
全部わかっちまったよ。
十分いらねえじゃねえか!
「ハハハハハ……なんで滅びるかって言ったらそうなる。 ありゃあ、間違いなく死なないからよ……」
「どういうことですか?」
「あれには生きるとか死ぬとかそういうのがない。 一度ぶん殴って分かった」
「いつ戦ったんです!?」
「何、一番最初にやつが来た時は酷かったのさ! 門は壊されるは、人は捻じ切られるは、店は焼かれるは……そんで、我慢できなくなって」
「殴っちゃったんですね?」
「あたぼうよ! ハハハハハ!」
鬼才の名を思うがままにする賢人だったり、考えなしに喧嘩をふっかける大馬鹿者だったり混沌とし過ぎてるこの人……。
「で、だ。 あいつははいくら腕を飛ばしても瞬く間に再生するし、体は燃えてるし、大鉈は振り回すし……ありゃあ間違いない、天災の類だなハハハハハ!」
いや、笑ってられない。
本当に笑えない。
そんなのがいるのか……この木造住宅しかないような街に。
よりにもよって延焼しやすい長屋のような造りになっている所に……。
「まあ……やつの名が分かったのは、間違いなくフーカのお手柄だがな!」
「えっ? フーカさんが? 何故?」
「あいつはな、行商の娘だったのさ。 そんで……」
そこまで大河さんが言うと、
僕と大河さんの目の前を突っ切るようにナイフが飛んできた。
そのナイフは真っ直ぐ、反対の壁に突き刺さった。
「チッ……余計なことを……!」
投げた主は言わずもがなフーカさんである。
ついでに言おう。目がマジだ。
間違いなくあのナイフはどちらかに当てる気で投げていたのだろう。
「すいません以後気をつけます……」
これを言ったのは僕ではない。
情けないが大河さんだ。
僕に頼み込むよりも遥かに深々と……地面に顔がめり込むように頭を下げている。
どこかで聞いたことがある気がするが、これは目上の人に目下の人が行う、独特な謝罪方法だったはずだ。
確か名を[土下座]という、謝罪の意と反省の意を込めた、最上級の敬礼の一種だとかなんとか……。
あとそろそろ大河さんやめてください。
自分まで惨めな気持ちになってきます。
大河さんの謝罪は長く、顔を押し付ける力によって後頭部が床に隠れるほどにめり込んでいる。
この修羅場の中、フーカさんが口を開いた。
「あ……無駄話してるってことは大体説明終わったのね?」
「まだ、計画の半分……」
「お前はもう一生そこで床として生きろ」
「は、はい……」
フーカさんはため息ひとつして、
「さてと……全体は掴めただろうから細かいところを喋ればいいのね……?」
「はい」
「了解した……」
そのまま気だるそうに続けた。
「まず、ここの革命隊……あなたたちも含めて二十人弱しか居ないわ……」
まあ、全員一騎当千の強者だけどね?、と付け足した。
嘘だろ?
きっと何百人もいて、「部隊としていつでも攻められるよ!」って感じなのだと勝手に勘違いしていたが……まあそうだろう。
そんなに居たら、期日さえ考えないのであればいつだって攻められるだろうし、僕らをそこまで必要とはしないはずだ。
「だから……私たちは仲間を集めることにした。 まず遊郭、次に獄中、最後にスラムにね……」
「それでどうなったんです?」
「いいえ……ひとりとして集まらなかったわ……。 きっとみんな将軍を恐れているのよ……」
フーカさんは頭を抱えてこう返した。
「だがしかし! お前らという戦力が増えた今はどうだ!」
気がつけば大河さんは僕の横で仁王立ちしていた。
そして、したり顔のまま続けた。
「上手く行けば懐柔することだって容易いさ!」
「手始めに遊郭の壁をぶっ壊す! 次は獄中の政治犯を全て解放する! 最後にスラムの外郭を派手に壊してそいつらも解放する!」
う、うわあ……。
なんというか……完全に的を射た説明のはずなのに、すっごくバカっぽく聞こえてきたぞう?
フーカさんが慌てて、
「この国では、遊女……まあ、娼婦みたいなもんね……それとスラムの連中は高い塀で囲まれている独自の街で生活するのを強いられてるのよ……将軍の政策でね……」
「そいつらを封じている塀をあと一日で壊す……そしてそいつらを仲間にしないといけない……」
「次に地下監獄に向かう……これは一番楽だし簡単よ……何せここと壁一つしか隔たりがないんだもの」
へ?
じゃあここって……?
「そうここは桜馨の地下……私と、元いたレジスタンスたちが何年もかけて掘り進めた最後の希望よ……」
「そうだとも! それに秘密基地ってのは地下にある方がいいに決まっている! 」
確かにワクワクしなくはないが……。
まあ、大河さんの言っていることはさておき、 僕は取り敢えず2人に聞いてみたいことがあった。
「この場所は将軍とやらにはバレていないんですか?」
すると大河さん、
「馬鹿か! こんな所に巣食ってる害虫がいるのを皇帝が見つけてたら、あいつは間違いなくここに向かってあらゆる兵器を使うだろうよ!」
続いてフーカさん
「まあ……一緒に牢獄ごとここいらをぶっ壊してしまうだろう……だから牢獄の解放は最後にして……最終的な計画ではこの基地を捨てて、そのまま将軍の城の攻略に移る……」
そこで僕はもう一つ質問をした。
「いくら将軍が潰すって言ったって……この国には天井があったじゃないですか……それに家だって長屋のような造りだし、複雑に入り組んだ迷宮みたいになってますよ!?」
「 万が一火でも点いたら」とまで言いかけた所で、大河さんが話に割り込んだ。
「ああ。 間違いない。 奴はこの国の中で兵器を使い、国を文字通り『焼き』、殺戮兵器 を解き放つつもりだろうさ」
「え?」
「この国の中心部にはな……火の被害を受けない石造りの地区がある。 そこには権力者やら、熱心な将軍の臣下やら、お前らを蹴散らした兵隊よりも格上の衛兵共がいる……実質、国は滅びないのさ」
大河さんはため息をつき、その場にあぐらをかいた。
続いてフーカさん、
「要はこの国の汚点と厄介者を三日後に全て消し去るつもりなのよ……閉鎖国家ならではのなせる技だけど……」
こんなことが……あっていいのだろうか?
端的に見ればまあ……正しいのだろう。
健全な国民を残し、穢れには触れさせず、国の古い文化を崩し、そしてそこに新しく国を広げる……。
だが……それはやっていいことじゃない。
人の命がそこまで軽く扱われていいはずが無い!
「そこでだ……」
大河さんが再び口を開いた。
「お前らを即刻使いたいんだがな? ……言っておくぞ……奴らに手加減はいらない」
「お前らは俺らの仲間とみなられて既に手配されている。 もう穏やかにここから出る方法はないと思ってくれ……」
それに対して僕は、
「無論です。 喜んで戦わせていただきます……」
と、答える。
どうせ逃げ場など無いのだろう。
助けて貰った恩もある……ここは手を貸さない訳にはいかなかった。
だが、どうしても僕はもうひとつ聞きたいことがある。
「フーカさん、どうして僕らに手形を? 」
フーカさんは数秒黙って、
「ごめん……それは言えない。 色々と言いたいことはあるけど……全てが終わらないとなんとも言えないわ……聞きたいんなら大河から勝手に聞けばいい」
そう言って、俯いたまま部屋を出ていってしまった。
「あちゃー……まあいいか。 俺からもそいつは最後に言わせて頂こうかな……? それよりもお前さん、肝心な事忘れてるだろ? 」
肝心なこと……?
あ!
「セシリア!」
「落ち着いてください! この街では何が起こってるんですか!?」
数秒の間を挟み、大河さんは声をはりあげた。
「そんじゃまず、これを見やがれぇ!」
大河さんの後ろ側の天井からいきなり[壁]が落ちてきた。
いや、語弊があるだろう。
壁のようではあるものの、中央が長方形の黒っぽく塗られている……のだろうか?
黒っぽい何かをはめ込んでいるようにも見える。
「こいつは"液晶"って言う代物を使った最新鋭のモニターでなあ! なんと!聞いて驚くなよ! 魔力が要らない! 電気で、それもフルカラーで映せるんだ! 」
……はい?
大河さんは軽めにモニターとやらを叩き自慢げに答えるが……。
それで……何ができるんだ?
フルカラー?
電気?
電気って言うと雷みたいなやつなのか?
そんでもって……映すって何を?
大河さんは文字の書かれた四角い何かを持った。
「ああ、お前さん"キュロノス"生まれだってな? あそこには無いだろうよ…あの四角いのは、遠くのものやらなんやらをそこにあるが如く映し出すもの! そしてこいつは、それを操る"からくり"だとも!」
満面の笑みを浮かべて大河さんは言った。
「さあて御覧じろ! これこそが我が国の近況よ! 」
そう言って大河さんが"操作するためのからくり"の方のボタンを押す。
そうすると、その画面とやらに【十分でわかる! 桜馨(おうかい)のひみつ!】という文字が現れた。
「さーてとまずは将軍と幕府……そんでもって俺ら"革命隊"の話だな!」
もう一度大河さんがその装置のボタンを押す。
次は上に将軍、下に革命隊と画面に現れた。
「さてと、まず将軍! まあ、他のとこで言うところの王様って奴だな。 言わずもがな圧政者だな! 」
へぇ……こんな所でも王政みたいなのが敷かれてるのか……。
「そんな奴に不満を抱いた俺は、まず圧政を崩す"力"を、次に圧政に変わる"力"を、最後に、圧政を変える"力"を探しに齢九つで郭外に出た」
九歳!?
うっそだろお前……。
なんだろうか、あまりに早すぎる気がする……。
天性のカリスマやら天授の才能というのがきっとこの男の中には有るのだろう。
「まあ、こちらでは呪術やらなんやらと恐れられていたんだが……俺はまず、空気中の魔素を使用したお前らの使ってるような魔法を学んだ」
「それでこの国に長らく伝わってる呪術と魔法を合わせた『詠唱型魔術』ってのを編み出すんだが……まずはこれに三年かかった」
……はぁ?
な……なんだそれ……?
恐らくそれは常人には出来やしない。
出来るような賢人がいたとしてもゼロから編み出すのならその一生を費やしてもおかしくない代物だ……。
きっと彼には魔術師としての誇りはない。
それ故に異文化同士を混ぜ合わせることも厭わなかっただろうし、双方の文化というものをしっかりと修めようともしなかったのだろう。
それを考慮したとしても三年は短すぎる。
彼は……大河は、化け物だ。
「まあ、それはさておきだ。 その後は魔法を学びながら民主主義ってのも体感したし、国に不正再入国した時に一騒ぎ起こしたら、人は自然に集まった」
なるほど。
反逆心を持っている者は少なからずいたのだ。
現に、僕らが助けられた【見世物】 などと大河さんが言っていたテロ活動には、見物人が出るほどだ。
一度綻びが起こればいずれこの国も滅びるのだろうが……そう一筋縄では行かないはずだ。
「ハハハハハ! 一通り察したか! 俺求め続けたの最後の駒……角行よ!」
か、かくぎょう?
なんだよそれ……。
要は戦力が欲しかったってことなのか?
大河さんは混乱する僕をよそに続ける。
「あと数駒進めば、お前は化け物になる。 比喩なしの化け物だ! だから角行だとも!」
え?
確かに幾度となくこれまで化け物の匂いがするだのと言われてきたけど……。
あと、『かくぎょう』って本当になんだ。
「ああ……お前は危ういんだよ。 お前さんとセシリア? とかっていう半龍の同僚。 あいつもだよ」
まあ……それは何となく知っていたような……。
寝る時間とか食べる量とか、とても人並とは言えない。
「まあ、そういうこった。 お前らは揃って本当に似たもの同士って奴だな!」
クハハハと、大河さんは豪快に笑ってみせた。
いやいや待て。
話が全く読めないが、何やらとんでもない事言ってないかこいつ!?
「ど、ど、どう言うことですかあああああ!?」
「知らん! 俺の直感だ!」
そんな彼を見つつフーカさんは、
「ごめんね、こいついきなりわけわかんないこと言い出すから……」
「は、はぁ……?」
フーカさんは続けた。
「君たちは結構強い。 その代わり精神が強くない……だから気をつけろよってことなんでしょ? あと角行ってのはこっちにあるチェスみたいなゲームの駒のひとつよ……」
おお! 分かりやすい……。
フーカさんがいなかったらこの人との意思疎通は相当厳しいものになるもしれない……。
大河さんは再び口を開いた。
「そうだとも! そのため、お前らに手を貸してもらいたかったわけだ! 将軍の殺害にはともかく、"鎧"攻略ではお前らの存在が不可欠だ!」
鎧。 ついにその話が出てきた。
恐らく、この鎧ファントムとも繋がりがあるだろう。
ターニャが出てきたということは、残りの役職も生きている。
僕は口を開いた。
「鎧と言いますと……それは『ツァン』と、名乗っていましたか?」
大河さんは柔らかな笑みを浮かべる。
「魔法使いを倒しているだけあって鋭いな。 そうとも! 奴は『ツァン』とかっていう鎧騎士だと……断言していい」
随分と含みのある言い方だった。
「なにか……引っかかることがあるんですか?」
大河さんは目を逸らしながら、
「なーに……奴が完全なる殺戮兵器になってて人語も話さないし、将軍も手に負えずに封じの術使ってるんだけど三日後に切れるから、それの対処をするために対城兵器使うとか無いからな……ハハハハハ……」
「丁寧な解説ありがとうございます!?」
全部わかっちまったよ。
十分いらねえじゃねえか!
「ハハハハハ……なんで滅びるかって言ったらそうなる。 ありゃあ、間違いなく死なないからよ……」
「どういうことですか?」
「あれには生きるとか死ぬとかそういうのがない。 一度ぶん殴って分かった」
「いつ戦ったんです!?」
「何、一番最初にやつが来た時は酷かったのさ! 門は壊されるは、人は捻じ切られるは、店は焼かれるは……そんで、我慢できなくなって」
「殴っちゃったんですね?」
「あたぼうよ! ハハハハハ!」
鬼才の名を思うがままにする賢人だったり、考えなしに喧嘩をふっかける大馬鹿者だったり混沌とし過ぎてるこの人……。
「で、だ。 あいつははいくら腕を飛ばしても瞬く間に再生するし、体は燃えてるし、大鉈は振り回すし……ありゃあ間違いない、天災の類だなハハハハハ!」
いや、笑ってられない。
本当に笑えない。
そんなのがいるのか……この木造住宅しかないような街に。
よりにもよって延焼しやすい長屋のような造りになっている所に……。
「まあ……やつの名が分かったのは、間違いなくフーカのお手柄だがな!」
「えっ? フーカさんが? 何故?」
「あいつはな、行商の娘だったのさ。 そんで……」
そこまで大河さんが言うと、
僕と大河さんの目の前を突っ切るようにナイフが飛んできた。
そのナイフは真っ直ぐ、反対の壁に突き刺さった。
「チッ……余計なことを……!」
投げた主は言わずもがなフーカさんである。
ついでに言おう。目がマジだ。
間違いなくあのナイフはどちらかに当てる気で投げていたのだろう。
「すいません以後気をつけます……」
これを言ったのは僕ではない。
情けないが大河さんだ。
僕に頼み込むよりも遥かに深々と……地面に顔がめり込むように頭を下げている。
どこかで聞いたことがある気がするが、これは目上の人に目下の人が行う、独特な謝罪方法だったはずだ。
確か名を[土下座]という、謝罪の意と反省の意を込めた、最上級の敬礼の一種だとかなんとか……。
あとそろそろ大河さんやめてください。
自分まで惨めな気持ちになってきます。
大河さんの謝罪は長く、顔を押し付ける力によって後頭部が床に隠れるほどにめり込んでいる。
この修羅場の中、フーカさんが口を開いた。
「あ……無駄話してるってことは大体説明終わったのね?」
「まだ、計画の半分……」
「お前はもう一生そこで床として生きろ」
「は、はい……」
フーカさんはため息ひとつして、
「さてと……全体は掴めただろうから細かいところを喋ればいいのね……?」
「はい」
「了解した……」
そのまま気だるそうに続けた。
「まず、ここの革命隊……あなたたちも含めて二十人弱しか居ないわ……」
まあ、全員一騎当千の強者だけどね?、と付け足した。
嘘だろ?
きっと何百人もいて、「部隊としていつでも攻められるよ!」って感じなのだと勝手に勘違いしていたが……まあそうだろう。
そんなに居たら、期日さえ考えないのであればいつだって攻められるだろうし、僕らをそこまで必要とはしないはずだ。
「だから……私たちは仲間を集めることにした。 まず遊郭、次に獄中、最後にスラムにね……」
「それでどうなったんです?」
「いいえ……ひとりとして集まらなかったわ……。 きっとみんな将軍を恐れているのよ……」
フーカさんは頭を抱えてこう返した。
「だがしかし! お前らという戦力が増えた今はどうだ!」
気がつけば大河さんは僕の横で仁王立ちしていた。
そして、したり顔のまま続けた。
「上手く行けば懐柔することだって容易いさ!」
「手始めに遊郭の壁をぶっ壊す! 次は獄中の政治犯を全て解放する! 最後にスラムの外郭を派手に壊してそいつらも解放する!」
う、うわあ……。
なんというか……完全に的を射た説明のはずなのに、すっごくバカっぽく聞こえてきたぞう?
フーカさんが慌てて、
「この国では、遊女……まあ、娼婦みたいなもんね……それとスラムの連中は高い塀で囲まれている独自の街で生活するのを強いられてるのよ……将軍の政策でね……」
「そいつらを封じている塀をあと一日で壊す……そしてそいつらを仲間にしないといけない……」
「次に地下監獄に向かう……これは一番楽だし簡単よ……何せここと壁一つしか隔たりがないんだもの」
へ?
じゃあここって……?
「そうここは桜馨の地下……私と、元いたレジスタンスたちが何年もかけて掘り進めた最後の希望よ……」
「そうだとも! それに秘密基地ってのは地下にある方がいいに決まっている! 」
確かにワクワクしなくはないが……。
まあ、大河さんの言っていることはさておき、 僕は取り敢えず2人に聞いてみたいことがあった。
「この場所は将軍とやらにはバレていないんですか?」
すると大河さん、
「馬鹿か! こんな所に巣食ってる害虫がいるのを皇帝が見つけてたら、あいつは間違いなくここに向かってあらゆる兵器を使うだろうよ!」
続いてフーカさん
「まあ……一緒に牢獄ごとここいらをぶっ壊してしまうだろう……だから牢獄の解放は最後にして……最終的な計画ではこの基地を捨てて、そのまま将軍の城の攻略に移る……」
そこで僕はもう一つ質問をした。
「いくら将軍が潰すって言ったって……この国には天井があったじゃないですか……それに家だって長屋のような造りだし、複雑に入り組んだ迷宮みたいになってますよ!?」
「 万が一火でも点いたら」とまで言いかけた所で、大河さんが話に割り込んだ。
「ああ。 間違いない。 奴はこの国の中で兵器を使い、国を文字通り『焼き』、殺戮兵器 を解き放つつもりだろうさ」
「え?」
「この国の中心部にはな……火の被害を受けない石造りの地区がある。 そこには権力者やら、熱心な将軍の臣下やら、お前らを蹴散らした兵隊よりも格上の衛兵共がいる……実質、国は滅びないのさ」
大河さんはため息をつき、その場にあぐらをかいた。
続いてフーカさん、
「要はこの国の汚点と厄介者を三日後に全て消し去るつもりなのよ……閉鎖国家ならではのなせる技だけど……」
こんなことが……あっていいのだろうか?
端的に見ればまあ……正しいのだろう。
健全な国民を残し、穢れには触れさせず、国の古い文化を崩し、そしてそこに新しく国を広げる……。
だが……それはやっていいことじゃない。
人の命がそこまで軽く扱われていいはずが無い!
「そこでだ……」
大河さんが再び口を開いた。
「お前らを即刻使いたいんだがな? ……言っておくぞ……奴らに手加減はいらない」
「お前らは俺らの仲間とみなられて既に手配されている。 もう穏やかにここから出る方法はないと思ってくれ……」
それに対して僕は、
「無論です。 喜んで戦わせていただきます……」
と、答える。
どうせ逃げ場など無いのだろう。
助けて貰った恩もある……ここは手を貸さない訳にはいかなかった。
だが、どうしても僕はもうひとつ聞きたいことがある。
「フーカさん、どうして僕らに手形を? 」
フーカさんは数秒黙って、
「ごめん……それは言えない。 色々と言いたいことはあるけど……全てが終わらないとなんとも言えないわ……聞きたいんなら大河から勝手に聞けばいい」
そう言って、俯いたまま部屋を出ていってしまった。
「あちゃー……まあいいか。 俺からもそいつは最後に言わせて頂こうかな……? それよりもお前さん、肝心な事忘れてるだろ? 」
肝心なこと……?
あ!
「セシリア!」
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よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
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