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一章.魔法使いと人工キメラ
八話目-大竜祭と混沌獣
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「お祭りだー!」
そう言ってメインストリートに駆け出すセシリア……に引っ張られる僕。
引き摺られると言うべきか……。
まあ、腕が千切れそうなほど痛いのには変わりないが……。
怪我をしている方を掴んでいるわけではないからたいした成長だろう……多分。
そんなことを考えている余裕何て正直言って無かったわけだが……。
「うわあああー!」
いつぞやかに紹介した村唯一の長距離移動手段の大鷲よりも速い。
速い!
時々セシリアのスピードが早すぎて全身が浮いたりするし、そうかと思えば顔面をしたたかに打ち付けたりするし……。
「さて!とーちゃーく!」
ん?とうちゃく?
駄目だ……頭がふらふらする……。視界がぼやけ……。
「起きてー!イーヴォ! えいっ!」
デコピンされた。
頭が吹き飛んだかと思った。
体は吹き飛ばされたが……。
脳震盪起こして死んだらどうする……打ちきりだぞこの小説……。
「ほーら!早くしないと食べ物が無くなっちゃうわよ! はやくはやく!」
「どうか……お手柔らかに……」
あぁそろそろ働かないとな…懐が寂しい……。
しばらく道なりに歩くとセシリアが足を止める。
「イーヴォ!私これ食べたい!」
「うん?」
ぱっと見チョコバナナだが……一本五十ゴールドか、足りそうだな……五十ゴールド!?
安っ!あまりにも安い!店主が相当優しいか……或いは……。
「ねぇ!おじちゃん!これ二本ちょうだい!」
「毎度あり! おじちゃんみんなに食べてもらいたいからね……一本ただでいいよ……フフッ」
単眼のオーガはいやらしく笑った。否、嗤った。
これはダメな方かもしれない……上の登りを見ると、「チョコバカレナ」の文字が……。
詳しい説明は省くが、「バカレナ」は蛇の一種だ……。
……ゲテモノだな。うん。
僕は五十ゴールドを店主に(仕方なく)手渡した。
「ほら!イーヴォも食べなよ!美味しいよ!」
セシリアが嬉しそうにチョコにフォンデュした蛇を頭から頬張る……。
そんなにうまいのか……これ……?いや、セシリアがチョコバナナを知らない可能性もあるかも……などと考えていると、
「んっ!んっ!ふぃーほほふぁへふぁふぉ」
「いや、僕はいいよ……うん!セシリア二本食べていいよ!」
「ふぉいふぃーふぉふぉふあふぃんふぁへふぁへふふぁふぁふぉふぃふぃーんふぁふぉ」
セシリア!笑顔で渡すんじゃない!断りずらいだろ!
「まあ……そこまで言うなら貰おうかな……?」
恐る恐るセシリアの突き出しているチョコバナナに形だけは限りなく等しい物を受け取る……。
……駄目だ!食う気になれないっ!これ先端から食べたら蛇の頭まるかじりじゃないか!
骨は……うん。セシリアがボリボリ、バキバキと咀嚼している音でよーくわかった。
「ねぇ、早く食べなよ!それとも……これ嫌いなの?」
「うっ……ううん! セシリアの善意だし、ありがたく戴くよ!」
えーい!ままよっ!
僕はよりにもよってチョコバカレナの尖端に噛みついてしまった。
歯が……全く通らん……。
旨い、不味い云々の前に人間に食べられるものではなかった……。
暫くの間、僕は全く同じところを咥え続けたがびくともしない……。
するとセシリア、
「ふっふーん……♪ 私おねーさんだから分かっちゃったよー!」
お姉さんとは一体……。
「ふぁひは?」
「イーヴォはズバリ! 好き嫌いが多いんだね!」
……セシリアおねーちゃーん!一般的な人間が食べれないものは好き嫌いのうちに入るのー?
「私が食べたげる!」
やっぱり食べることしか頭にないようだ。
ヨダレを垂らしながらまだ口の周りにチョコのついているセシリアが迫ってきて、手で受け皿を作った。
……え?
さすがに咥えていた物を口から出して僕は喋る、
「これ食べるの?」
「うん。もちろん。食べ物を粗末にするのはよくないもんね!」
本当に良いのか?二つの意味で……。
渋々、くっきりと僕の歯形が付いたゲテモノを渡すとそれは一瞬にしてセシリアの口の中へと消えた。
僕は大量に言いたいことがあるが、学んだことが一つだけある。セシリアは木すら消化できるらしい……。セシリアの手には串のくの字も残っていなかった……。
「うん。普通に美味しいけど……改めて考えてみれば結構恥ずかしいわね……これ……」
セシリアは少し頬を赤らめた。羞恥心がまだ残っているようで本当に良かった。
「美味しかったかい? 来年も出すからまた来てね!」
単眼オーガは手を振った。
「もちろん!美味しかったわ! また来るわね!」
僕はバカレナについて一つだけ思い出したことがある。
バカレナは頭が二つ両端についている。知能は高くなく、とにかく互いが主張して動こうしない。
例とすると頭がAが北に、頭Bが南に進もうとするためまるで進まない。
その為鳥などに補食されないよう、体や骨は固く進化している。
そして食べることができるのは、一部のオーガ、ドラゴンしかいないのだと……。
僕は本当に馬鹿だ……。
「さて!次よ次っ!」
「よし!どんとこい!」
もうここまで来るとなんでもできるようなそんな気がしてくる。
僕らがメインストリートを進みだすと、
「うん?」
セシリアがまた足を止める。
「どうしたの?」
「あそこにいる人、今日の警護兵さんじゃない?」
セシリアが指差す先には確かにあの警護兵。
だが昼間とは明らかに様子が違う。こう……なにかに怯えているような……そんな感じだ。
すると、警護兵はいきなり細い路地に駆け出した……!
「追うわよ!」
セシリアが僕の手をむんずと掴む。
「え?ちょっと……! まっ……」
容赦なくセシリアは僕を引っ張り、そして路地にこちらも駆け出した。
先ほどとはうって変わって、凄まじいスピードによって僕の体は中に浮いている……が、肩がそろそろ千切れそうだ。
千切れるとまではいかなくても脱臼ぐらいはしそうだ……。
僕らはそのまま仄暗い路地に飛び込む。セシリアがスピードを緩めた。
「ここからはスピード出すと危ないから慎重に行こう!」
危ない思いをするのは僕だけだが……気遣ってくれているのかな?
僕の後ろにセシリアがつき、そのままゆっくりと進んだ。
足元には水溜まりが無数にある。歩く度にそれらがピチャピチャと跳ね、不気味な雰囲気を駆り立てる。
警護兵は何をしにここへ来たのだろう……。しばらく歩くと、急に辺り一面が真っ暗になった。
月が雲に隠れたのだろうか?そんなことを考えていると、セシリアが僕にしがみついてきた。
え?しがみついてきた!?
「!!?」
僕は全力で焦るというか照れるというか!
脳内がてんやわんやしている!
するとセシリアは小声で、
「ここ気味が悪い……。突っ切って……多分いや、絶対ここに居続けたら良くない気がするがする……」
なんだ……。良かった……全然良くなどとないが……。
僕はあらんかぎりの全力で路地を走り出した。そして突き当たりに出たとき、
「キャアアアアアー!」
セシリアが悲鳴を上げた。無理もない。目を凝らして見るとそこには腰の辺りで真っ二つに裂かれた警護兵、そしてその脚を貪る暗闇のような何かがいたのだ……!
「ぬぅ?あぁ、人の子か?に、しても妙だな……どちらからも魔物……それも上位の輩の臭いがしたのだが……」
その姿は辺りの闇が少しずつ晴れることではっきりとわかった。
角を生やし、目を黄色く光らせ、口からは青ざめる程真っ白というより真っ青な牙、腕には鋭い剣のような爪が生えている……。
僕はその正体をよく知っている。
この地方の子供達は一度は聞いたことのある童話「戒めのくに」……それに出てくる「ファントム」と呼ばれる怪物、そのものだった。
「ヒィッ!」
セシリアは怯えているのだろうか……僕もそうだが……。
件の怪物は冷やかにはっきりと告げた、
「我はファントム……今日はこの者の取り立てをしに参っただけのこと。怯える必要など……微塵もない……」
全く同じだ。物語のファントムもそう言ってにじり寄り、人の魂を食べる……。目の前の化け物もそうだろう。
「安心しなさい。 君らのことなんて食べやしないよ……さあ、こちらにおいで……」
そう言ってファントムは手招きする……。
冥界に人々をこうやって連れ去るのだ。
僕は瞬きをできるだけしないように心掛けた……。
そうやって敵をよく認知していないと心まで持っていかれそうだ……。
「こっちに君の両親がいるよ? どうした? 会いたくないのかい?」
「逢いたくなどないね!僕の両親はずっと前に死んでいる!」
生きているさ……君がそう思っているだけだよ……私は君にウソをついた奴を懲らしめただけなんだよ?さあさあ、迷ってなんかいられないね?
進行方向にはかつての両親が優しく手招きしていた……。
頭にファントムの声が響く……。
あいつの言うことなど戯言だっ!気を保てイーヴォ!
「そう……なのね……そっちに……お母さんが……」
セシリアが少しずつ前に進む。ファントムに支配されているのだろうか、目にはもうあの食べ物を前にした時の光はない……。
「駄目だ!セシリア!行くなっ!」
僕はあらんかぎりの力を込めてセシリアを押し返す……が、それも空しく彼女の怪力の前に払い除けられた。
僕は体を壁に打ち、倒れた。
「ガハッ……!」
セシリアの左腕は僕の腹を捉えていた。まるで僕を完全に忘れているが如くだ……。
「うるさいっ! 私はこっちに進みたいの!邪魔しないで!」
ほーら君だけだよ?仲間のかわいい子はどうやら賢くもあるようだねー?さぁこっちにおいで……。なーに案ずることなどないさ……さあ、さあ……!
くそっ!立て!イーヴォ!セシリアをこんなところで死なせてもいいのか!?良い筈がない!
意識を保て!甘ったれるな!
僕は決死の思いで最後の手に出た。
「うわあああー!」
鞄からグリモワールをひっ掴み余裕綽々のファントムをぶっ叩く……!
「ガッ!」
一応効いてはいるようだ……。セシリアも催眠が解けたようでその場で倒れ、寝てしまった。
「畜生! この餓鬼が! 折角良質な魂が手に入る所だったのに!」
うわ、口悪っ!
「調子乗るなよ愚図ガッ! 貴様など先程の輩と同様!否、それ以上の苦痛を味わわせてくれるっ!」
ファントムが牙を、爪を、背中の羽すらも僕に向けて迫ってきた……。
ヤバイな……喧嘩を売ったは良いものの……ファントムは霊体である。
要するに、僕の毒魔法が唯一とまではいかないが、効かないと言っても良い相手だ。
その上セシリアに全力で吹き飛ばされたせいでまともに立てそうもない……。胸?その辺りが痛い……。
まあ……良いや……。
「セシリアっ!ご飯だよ!」
「何だって!?」
やはり飛び起きた。 まだ会って日は浅いけど……こいつのことは何となくわかった気がする……。
「ってどういう状況!? 何!?うわあああー!」
「こいつは、化け物! 振り返らずに路地から出ろ! 」
「イーヴォは大丈夫なの!?」
本当にこいつは優しい人間だと思う。
少し……いや結構抜けてる所はあるけど……。
「僕は今から魔法を使う! 威力がとびきり高い奴だから、お前でも耐えれるか分からない!警護兵をつれて早く逃げろ!」
「でも……」
「振り返るな!お前はともかく警護兵は一溜まりもない!」
「……わかった!」
セシリアがようやく逃げてくれた。
それを一通り見終えたファントムは、ようやく喋り出した。
いや、笑い出した。
姿を変えて……どす黒い喪服、その上に羽織るはやはりどす黒いコート、そしてマフラー。
背はそこまで高くもない。
ここからは僕も目を疑った。
そこの闇を切り取ったような黒髪に、吸い込まれそうな程鮮やかな胆礬色の目。
死人のような、白い肌を除けば僕とまるで正反対である……。
「愚かっ……! 実に愚かだよ少年っ! ハッハッハッハッ……アッハッハッハ!」
「一時の昂りのみで自らを死に追いやり?挙げ句の果てに連れ添っていた相方どころか死に損ないの愚兵すらも助けるとは何とは何と愚かなことか!ハッハッハッハッハッハッハ!」
「あと少し進みさえすれば、二人とも楽になれたというのに……!ハッハッハッハッハッハッハ!それに君は、彼女を救おうとして肋骨を折っているね?フフッ……! そんなことしなけれ
ば僕に勝てたかもしれないのにね!」
うん?僕に?一人称がころころと……?
「僕はね……フフッ……魂を食い損ねた輩の真似をするのさ……戒めとするためにね……君が僕を見ているということは、僕も君を見られる環境にあるんだよ?フフッ! 鏡の原理すらも知らないのかい……? フフフッ!」
そうか、なんだそんなことか。いささかどうでも良いな……。
うん? どうしたんだ?
「?それを聞きたいのは僕の方だよ この半端者……! なんで君は僕の進路を塞ぐんだい? 今回は見逃してやる。 そこを退きなさい……?」
あ? おっさんはともかく、セシリアを食うくらいなら僕を食え。
「ハッハッハッハッハッハッハ! 天井知らずの愚か者め!僕に指図するってのか? 貴様程度の下等生物が!」
こちらを指差し全力で軽蔑するファントム、
「あ? 時間稼ぎになれば良い。あいつの足なら、歩いてもあいつの故郷にたどり着ける筈だ」
「愚かな人間よ! 僕が見せることができる幻影はな! 僕が食べて、体の一部にした奴のみだよ?」
「あ?」
嘘だろ……て言うことは、セシリアの母さんも……僕の両親も……?
「愚か者の割には物分かりが良いじゃないか! 御名答だ! 百点か、座布団十枚か、死か、好きなのをあげてやりたいねぇ! アッハッハッハ!」
ひどく嘲笑するファントム……自分の姿をしているからだろうか、苛立ちが二倍、三倍と膨れ上がる……。
嘘だ……嘘だ嘘だ!
耳を塞ぎ頭を抱える。が、ファントムの言葉は頭に直接響いてくる……。
「そうだよ? 君の両親は中々骨があったなぁ!」
やめろ……。
「母親は指を切っても、四肢をもいでも、腹を裂いても、全然死ななかったなぁ! アッハッハッハ」
やめろっ……!
「父親はそうだ! 回復魔法をかけながら、頭から下を風魔法で簡易ミキサーを作って……フフフッ」
やめろ!やめろ!
「両親の遺言、聴いたよね? あれを愚兵に仕込んだのも僕でね! ハッハッハッハッハッハッハ! 収録も僕がやったよ! 実に愚かで、最後まで楽しませてくれた! アッハッハッハ!」
……。
「やはり愚か者と愚か者の間には愚か者しか出来んね! フフフッ! 家族ぐるみで僕を愉しませてくれるとはね!ハッハッハッハッハッハッハ!」
そう言って、ファントムは僕の耳元で囁く……。
「中でも君はとびきり愚かだ……! 素晴らしいショウを有り難う……!」
広角がつり上がっている。
まるで三日月のように……。
「ハァ……ハァ……貴様は……許さん!」
声も手元も震える……ここまで激しい嫌悪は生まれて初めてだろう……。
だが、駄目だ……言葉は止めどなく溢れるのに喋る体力がない……。
「フフフッ! 君は狂ってくれるのかなぁ? 楽しみだなぁ! だけどね……」
「僕は腹ペコなんだ……。より深い怒りが、哀しみが、絶望が、魂を美味しくするわけだけど……そこまでメインディッシュを育てられるほど僕には余裕がないんだ……だから」
「「ここで死にざらせ! 愚か者!」」
まさかシンクロするとはな……まあ……僕はこいつを許せないが……間違いなく為す術もなく敗れるだろう……。
「死ねぇ!」
満面の笑みでファントムが迫る……万事休すだな。そう思い、目を閉じたその時……、
「グッ!?」
ファントムが飛ばされ反対側の壁にめり込む……?
僕は今の今まで持っていたグリモワールを見つめた。
宝石が……光ってる?
そうかと思えば今度は最後の方のページが勝手に開く?
あからさまに光っている呪文がひとつあった……。
「ヒュドラの嘆き」……? 実態なきもの、姿のなきものに九頭の龍が噛みつき、その傷が癒えることは二度と無いだろう……。
取り敢えず 一つだけ分かった。あの糞野郎を殺せるんだな?
「ヒュドラよ……我に力を……憎むものを罰し……怨むものを根絶やす力を……」
グリモワールは紫に輝き、九つの龍の頸を出した。
「グルルルルル……」「良いのか?食い殺しても?」
セシリアではないが、こいつらの言っていることが伝わってくる。
「殺れ」
そう言うと頸は瞬く間にファントムに食いかかり、その顔、腕、腹を食い千切る……が、吹き飛んだ頭が小さい龍の頭のような形になった。
「フフフッ! まさかあの状態からグリモワールを覚醒させるとは……素晴らしい!素晴らしいぞ人間! 我はまた戻る! それまで頸を洗って待っているが良いさ!フハハッ!フハハハハハッ!」
そう言ってファントムは空へと消えた。
僕は、力が抜け……意識が飛んで……。
「イーヴォ起きて! 」
気が付けば真っ白な壁に囲まれていた。
そう言ってメインストリートに駆け出すセシリア……に引っ張られる僕。
引き摺られると言うべきか……。
まあ、腕が千切れそうなほど痛いのには変わりないが……。
怪我をしている方を掴んでいるわけではないからたいした成長だろう……多分。
そんなことを考えている余裕何て正直言って無かったわけだが……。
「うわあああー!」
いつぞやかに紹介した村唯一の長距離移動手段の大鷲よりも速い。
速い!
時々セシリアのスピードが早すぎて全身が浮いたりするし、そうかと思えば顔面をしたたかに打ち付けたりするし……。
「さて!とーちゃーく!」
ん?とうちゃく?
駄目だ……頭がふらふらする……。視界がぼやけ……。
「起きてー!イーヴォ! えいっ!」
デコピンされた。
頭が吹き飛んだかと思った。
体は吹き飛ばされたが……。
脳震盪起こして死んだらどうする……打ちきりだぞこの小説……。
「ほーら!早くしないと食べ物が無くなっちゃうわよ! はやくはやく!」
「どうか……お手柔らかに……」
あぁそろそろ働かないとな…懐が寂しい……。
しばらく道なりに歩くとセシリアが足を止める。
「イーヴォ!私これ食べたい!」
「うん?」
ぱっと見チョコバナナだが……一本五十ゴールドか、足りそうだな……五十ゴールド!?
安っ!あまりにも安い!店主が相当優しいか……或いは……。
「ねぇ!おじちゃん!これ二本ちょうだい!」
「毎度あり! おじちゃんみんなに食べてもらいたいからね……一本ただでいいよ……フフッ」
単眼のオーガはいやらしく笑った。否、嗤った。
これはダメな方かもしれない……上の登りを見ると、「チョコバカレナ」の文字が……。
詳しい説明は省くが、「バカレナ」は蛇の一種だ……。
……ゲテモノだな。うん。
僕は五十ゴールドを店主に(仕方なく)手渡した。
「ほら!イーヴォも食べなよ!美味しいよ!」
セシリアが嬉しそうにチョコにフォンデュした蛇を頭から頬張る……。
そんなにうまいのか……これ……?いや、セシリアがチョコバナナを知らない可能性もあるかも……などと考えていると、
「んっ!んっ!ふぃーほほふぁへふぁふぉ」
「いや、僕はいいよ……うん!セシリア二本食べていいよ!」
「ふぉいふぃーふぉふぉふあふぃんふぁへふぁへふふぁふぁふぉふぃふぃーんふぁふぉ」
セシリア!笑顔で渡すんじゃない!断りずらいだろ!
「まあ……そこまで言うなら貰おうかな……?」
恐る恐るセシリアの突き出しているチョコバナナに形だけは限りなく等しい物を受け取る……。
……駄目だ!食う気になれないっ!これ先端から食べたら蛇の頭まるかじりじゃないか!
骨は……うん。セシリアがボリボリ、バキバキと咀嚼している音でよーくわかった。
「ねぇ、早く食べなよ!それとも……これ嫌いなの?」
「うっ……ううん! セシリアの善意だし、ありがたく戴くよ!」
えーい!ままよっ!
僕はよりにもよってチョコバカレナの尖端に噛みついてしまった。
歯が……全く通らん……。
旨い、不味い云々の前に人間に食べられるものではなかった……。
暫くの間、僕は全く同じところを咥え続けたがびくともしない……。
するとセシリア、
「ふっふーん……♪ 私おねーさんだから分かっちゃったよー!」
お姉さんとは一体……。
「ふぁひは?」
「イーヴォはズバリ! 好き嫌いが多いんだね!」
……セシリアおねーちゃーん!一般的な人間が食べれないものは好き嫌いのうちに入るのー?
「私が食べたげる!」
やっぱり食べることしか頭にないようだ。
ヨダレを垂らしながらまだ口の周りにチョコのついているセシリアが迫ってきて、手で受け皿を作った。
……え?
さすがに咥えていた物を口から出して僕は喋る、
「これ食べるの?」
「うん。もちろん。食べ物を粗末にするのはよくないもんね!」
本当に良いのか?二つの意味で……。
渋々、くっきりと僕の歯形が付いたゲテモノを渡すとそれは一瞬にしてセシリアの口の中へと消えた。
僕は大量に言いたいことがあるが、学んだことが一つだけある。セシリアは木すら消化できるらしい……。セシリアの手には串のくの字も残っていなかった……。
「うん。普通に美味しいけど……改めて考えてみれば結構恥ずかしいわね……これ……」
セシリアは少し頬を赤らめた。羞恥心がまだ残っているようで本当に良かった。
「美味しかったかい? 来年も出すからまた来てね!」
単眼オーガは手を振った。
「もちろん!美味しかったわ! また来るわね!」
僕はバカレナについて一つだけ思い出したことがある。
バカレナは頭が二つ両端についている。知能は高くなく、とにかく互いが主張して動こうしない。
例とすると頭がAが北に、頭Bが南に進もうとするためまるで進まない。
その為鳥などに補食されないよう、体や骨は固く進化している。
そして食べることができるのは、一部のオーガ、ドラゴンしかいないのだと……。
僕は本当に馬鹿だ……。
「さて!次よ次っ!」
「よし!どんとこい!」
もうここまで来るとなんでもできるようなそんな気がしてくる。
僕らがメインストリートを進みだすと、
「うん?」
セシリアがまた足を止める。
「どうしたの?」
「あそこにいる人、今日の警護兵さんじゃない?」
セシリアが指差す先には確かにあの警護兵。
だが昼間とは明らかに様子が違う。こう……なにかに怯えているような……そんな感じだ。
すると、警護兵はいきなり細い路地に駆け出した……!
「追うわよ!」
セシリアが僕の手をむんずと掴む。
「え?ちょっと……! まっ……」
容赦なくセシリアは僕を引っ張り、そして路地にこちらも駆け出した。
先ほどとはうって変わって、凄まじいスピードによって僕の体は中に浮いている……が、肩がそろそろ千切れそうだ。
千切れるとまではいかなくても脱臼ぐらいはしそうだ……。
僕らはそのまま仄暗い路地に飛び込む。セシリアがスピードを緩めた。
「ここからはスピード出すと危ないから慎重に行こう!」
危ない思いをするのは僕だけだが……気遣ってくれているのかな?
僕の後ろにセシリアがつき、そのままゆっくりと進んだ。
足元には水溜まりが無数にある。歩く度にそれらがピチャピチャと跳ね、不気味な雰囲気を駆り立てる。
警護兵は何をしにここへ来たのだろう……。しばらく歩くと、急に辺り一面が真っ暗になった。
月が雲に隠れたのだろうか?そんなことを考えていると、セシリアが僕にしがみついてきた。
え?しがみついてきた!?
「!!?」
僕は全力で焦るというか照れるというか!
脳内がてんやわんやしている!
するとセシリアは小声で、
「ここ気味が悪い……。突っ切って……多分いや、絶対ここに居続けたら良くない気がするがする……」
なんだ……。良かった……全然良くなどとないが……。
僕はあらんかぎりの全力で路地を走り出した。そして突き当たりに出たとき、
「キャアアアアアー!」
セシリアが悲鳴を上げた。無理もない。目を凝らして見るとそこには腰の辺りで真っ二つに裂かれた警護兵、そしてその脚を貪る暗闇のような何かがいたのだ……!
「ぬぅ?あぁ、人の子か?に、しても妙だな……どちらからも魔物……それも上位の輩の臭いがしたのだが……」
その姿は辺りの闇が少しずつ晴れることではっきりとわかった。
角を生やし、目を黄色く光らせ、口からは青ざめる程真っ白というより真っ青な牙、腕には鋭い剣のような爪が生えている……。
僕はその正体をよく知っている。
この地方の子供達は一度は聞いたことのある童話「戒めのくに」……それに出てくる「ファントム」と呼ばれる怪物、そのものだった。
「ヒィッ!」
セシリアは怯えているのだろうか……僕もそうだが……。
件の怪物は冷やかにはっきりと告げた、
「我はファントム……今日はこの者の取り立てをしに参っただけのこと。怯える必要など……微塵もない……」
全く同じだ。物語のファントムもそう言ってにじり寄り、人の魂を食べる……。目の前の化け物もそうだろう。
「安心しなさい。 君らのことなんて食べやしないよ……さあ、こちらにおいで……」
そう言ってファントムは手招きする……。
冥界に人々をこうやって連れ去るのだ。
僕は瞬きをできるだけしないように心掛けた……。
そうやって敵をよく認知していないと心まで持っていかれそうだ……。
「こっちに君の両親がいるよ? どうした? 会いたくないのかい?」
「逢いたくなどないね!僕の両親はずっと前に死んでいる!」
生きているさ……君がそう思っているだけだよ……私は君にウソをついた奴を懲らしめただけなんだよ?さあさあ、迷ってなんかいられないね?
進行方向にはかつての両親が優しく手招きしていた……。
頭にファントムの声が響く……。
あいつの言うことなど戯言だっ!気を保てイーヴォ!
「そう……なのね……そっちに……お母さんが……」
セシリアが少しずつ前に進む。ファントムに支配されているのだろうか、目にはもうあの食べ物を前にした時の光はない……。
「駄目だ!セシリア!行くなっ!」
僕はあらんかぎりの力を込めてセシリアを押し返す……が、それも空しく彼女の怪力の前に払い除けられた。
僕は体を壁に打ち、倒れた。
「ガハッ……!」
セシリアの左腕は僕の腹を捉えていた。まるで僕を完全に忘れているが如くだ……。
「うるさいっ! 私はこっちに進みたいの!邪魔しないで!」
ほーら君だけだよ?仲間のかわいい子はどうやら賢くもあるようだねー?さぁこっちにおいで……。なーに案ずることなどないさ……さあ、さあ……!
くそっ!立て!イーヴォ!セシリアをこんなところで死なせてもいいのか!?良い筈がない!
意識を保て!甘ったれるな!
僕は決死の思いで最後の手に出た。
「うわあああー!」
鞄からグリモワールをひっ掴み余裕綽々のファントムをぶっ叩く……!
「ガッ!」
一応効いてはいるようだ……。セシリアも催眠が解けたようでその場で倒れ、寝てしまった。
「畜生! この餓鬼が! 折角良質な魂が手に入る所だったのに!」
うわ、口悪っ!
「調子乗るなよ愚図ガッ! 貴様など先程の輩と同様!否、それ以上の苦痛を味わわせてくれるっ!」
ファントムが牙を、爪を、背中の羽すらも僕に向けて迫ってきた……。
ヤバイな……喧嘩を売ったは良いものの……ファントムは霊体である。
要するに、僕の毒魔法が唯一とまではいかないが、効かないと言っても良い相手だ。
その上セシリアに全力で吹き飛ばされたせいでまともに立てそうもない……。胸?その辺りが痛い……。
まあ……良いや……。
「セシリアっ!ご飯だよ!」
「何だって!?」
やはり飛び起きた。 まだ会って日は浅いけど……こいつのことは何となくわかった気がする……。
「ってどういう状況!? 何!?うわあああー!」
「こいつは、化け物! 振り返らずに路地から出ろ! 」
「イーヴォは大丈夫なの!?」
本当にこいつは優しい人間だと思う。
少し……いや結構抜けてる所はあるけど……。
「僕は今から魔法を使う! 威力がとびきり高い奴だから、お前でも耐えれるか分からない!警護兵をつれて早く逃げろ!」
「でも……」
「振り返るな!お前はともかく警護兵は一溜まりもない!」
「……わかった!」
セシリアがようやく逃げてくれた。
それを一通り見終えたファントムは、ようやく喋り出した。
いや、笑い出した。
姿を変えて……どす黒い喪服、その上に羽織るはやはりどす黒いコート、そしてマフラー。
背はそこまで高くもない。
ここからは僕も目を疑った。
そこの闇を切り取ったような黒髪に、吸い込まれそうな程鮮やかな胆礬色の目。
死人のような、白い肌を除けば僕とまるで正反対である……。
「愚かっ……! 実に愚かだよ少年っ! ハッハッハッハッ……アッハッハッハ!」
「一時の昂りのみで自らを死に追いやり?挙げ句の果てに連れ添っていた相方どころか死に損ないの愚兵すらも助けるとは何とは何と愚かなことか!ハッハッハッハッハッハッハ!」
「あと少し進みさえすれば、二人とも楽になれたというのに……!ハッハッハッハッハッハッハ!それに君は、彼女を救おうとして肋骨を折っているね?フフッ……! そんなことしなけれ
ば僕に勝てたかもしれないのにね!」
うん?僕に?一人称がころころと……?
「僕はね……フフッ……魂を食い損ねた輩の真似をするのさ……戒めとするためにね……君が僕を見ているということは、僕も君を見られる環境にあるんだよ?フフッ! 鏡の原理すらも知らないのかい……? フフフッ!」
そうか、なんだそんなことか。いささかどうでも良いな……。
うん? どうしたんだ?
「?それを聞きたいのは僕の方だよ この半端者……! なんで君は僕の進路を塞ぐんだい? 今回は見逃してやる。 そこを退きなさい……?」
あ? おっさんはともかく、セシリアを食うくらいなら僕を食え。
「ハッハッハッハッハッハッハ! 天井知らずの愚か者め!僕に指図するってのか? 貴様程度の下等生物が!」
こちらを指差し全力で軽蔑するファントム、
「あ? 時間稼ぎになれば良い。あいつの足なら、歩いてもあいつの故郷にたどり着ける筈だ」
「愚かな人間よ! 僕が見せることができる幻影はな! 僕が食べて、体の一部にした奴のみだよ?」
「あ?」
嘘だろ……て言うことは、セシリアの母さんも……僕の両親も……?
「愚か者の割には物分かりが良いじゃないか! 御名答だ! 百点か、座布団十枚か、死か、好きなのをあげてやりたいねぇ! アッハッハッハ!」
ひどく嘲笑するファントム……自分の姿をしているからだろうか、苛立ちが二倍、三倍と膨れ上がる……。
嘘だ……嘘だ嘘だ!
耳を塞ぎ頭を抱える。が、ファントムの言葉は頭に直接響いてくる……。
「そうだよ? 君の両親は中々骨があったなぁ!」
やめろ……。
「母親は指を切っても、四肢をもいでも、腹を裂いても、全然死ななかったなぁ! アッハッハッハ」
やめろっ……!
「父親はそうだ! 回復魔法をかけながら、頭から下を風魔法で簡易ミキサーを作って……フフフッ」
やめろ!やめろ!
「両親の遺言、聴いたよね? あれを愚兵に仕込んだのも僕でね! ハッハッハッハッハッハッハ! 収録も僕がやったよ! 実に愚かで、最後まで楽しませてくれた! アッハッハッハ!」
……。
「やはり愚か者と愚か者の間には愚か者しか出来んね! フフフッ! 家族ぐるみで僕を愉しませてくれるとはね!ハッハッハッハッハッハッハ!」
そう言って、ファントムは僕の耳元で囁く……。
「中でも君はとびきり愚かだ……! 素晴らしいショウを有り難う……!」
広角がつり上がっている。
まるで三日月のように……。
「ハァ……ハァ……貴様は……許さん!」
声も手元も震える……ここまで激しい嫌悪は生まれて初めてだろう……。
だが、駄目だ……言葉は止めどなく溢れるのに喋る体力がない……。
「フフフッ! 君は狂ってくれるのかなぁ? 楽しみだなぁ! だけどね……」
「僕は腹ペコなんだ……。より深い怒りが、哀しみが、絶望が、魂を美味しくするわけだけど……そこまでメインディッシュを育てられるほど僕には余裕がないんだ……だから」
「「ここで死にざらせ! 愚か者!」」
まさかシンクロするとはな……まあ……僕はこいつを許せないが……間違いなく為す術もなく敗れるだろう……。
「死ねぇ!」
満面の笑みでファントムが迫る……万事休すだな。そう思い、目を閉じたその時……、
「グッ!?」
ファントムが飛ばされ反対側の壁にめり込む……?
僕は今の今まで持っていたグリモワールを見つめた。
宝石が……光ってる?
そうかと思えば今度は最後の方のページが勝手に開く?
あからさまに光っている呪文がひとつあった……。
「ヒュドラの嘆き」……? 実態なきもの、姿のなきものに九頭の龍が噛みつき、その傷が癒えることは二度と無いだろう……。
取り敢えず 一つだけ分かった。あの糞野郎を殺せるんだな?
「ヒュドラよ……我に力を……憎むものを罰し……怨むものを根絶やす力を……」
グリモワールは紫に輝き、九つの龍の頸を出した。
「グルルルルル……」「良いのか?食い殺しても?」
セシリアではないが、こいつらの言っていることが伝わってくる。
「殺れ」
そう言うと頸は瞬く間にファントムに食いかかり、その顔、腕、腹を食い千切る……が、吹き飛んだ頭が小さい龍の頭のような形になった。
「フフフッ! まさかあの状態からグリモワールを覚醒させるとは……素晴らしい!素晴らしいぞ人間! 我はまた戻る! それまで頸を洗って待っているが良いさ!フハハッ!フハハハハハッ!」
そう言ってファントムは空へと消えた。
僕は、力が抜け……意識が飛んで……。
「イーヴォ起きて! 」
気が付けば真っ白な壁に囲まれていた。
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