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一章.魔法使いと人工キメラ
十七話目-食事処と再出発
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「うわぁぁぁっ!」
速いっ!速いっ!
セシリアは風を切り、僕を地につけることなくぐんぐんと加速する。
「イーヴォ! もうちょっと待って! この角曲がったあたりから美味しいものの匂いがする!」
「鼻良すぎるだろお前!」
そしてセシリアは赤い登りの店の前で自動車さながらの[キキーッ]というブレーキ音とともに急停止した。
僕は勢いそのまま地面に転がった。
こんなのが毎日続いたら命が何個あっても足りない……。
「さあ! 入るわよ!」
店先の看板には《中華料理処 九龍》の文字が。
勢い良くセシリアが引き戸をガラガラと開ける。
すると、にこやかな笑顔の青年が待ち構えていた。
「いらっしゃーせ!……うん? あ! 大将! 例のお客、うちに来ましたよ!」
そう言って青年は店主らしき、寸胴のような体格の男性に話しかけた。
「何だって! これでうちの評判も鰻登り……いや龍門登りだな! 丁重に接待してやれ!」
「はい!」
スタスタと青年は近づき僕らに話しかけた。
「君たちだろう? この街を救ってくれた二人組ってのは?」
「もっちろんよ!」
「まあ……結果的にそうなりましたね……」
「それじゃあ奥の方に。 付いてきて」
僕らは導かれるままに店内を歩いた。
店の中は薄暗く、その中に浮いているかのように真っ赤な提灯が天井から垂れ、うっとりとするほど華やかである。
僕らは対面形式の端の席に案内され、ゆっくりと腰を下ろした。
「それじゃあ、その辺にいるから何にするか決まったら呼んでね」
「はい。ありがとうございます」
見渡すと店内には昼前だと言うのに結構な人が居て、各々料理を美味しそうにつついていた。
「さてと……何にしましょう?」
「僕に聞いてるのそれ?」
「だって中華料理って言ってもどんなのが有るのかわかんないもん……」
こいつ己の嗅覚に全てを委ねたのかよ……。
本当に予測不可能だな……。
「じゃあひとまずメニュー見てみよ」
「そうね!そうしましょ!」
メニューをセシリアに見えるように手渡すと、
「おにーさーん! これとこれとこれ! 二つずつ!」
「もう決まったの!? それなら僕は炒飯で!」
すると青年はセシリアに聞き返す。
「え!? この量ほんとに食べるの……?」
「うん! もちろん!」
「……よし……中華料理屋 九龍の誇りにかけて作ってくるよ……!」
……何だって?
「おい……セシリア……今なら怒らないから何頼んだか喋ってご覧?」
「えーっと……これとこれとこれ!」
セシリアが指差したのは……「青椒肉絲」、「麻婆豆腐」、「超メガ盛り! 九龍の本気 テラ・ラーメン!」……。
うん普通だな……最後のやつを除いて……。
しばらくすると炒飯が一皿、麻婆豆腐と青椒肉絲が二皿ずつ、そして山という他ない冒涜的な何かが二つ運ばれてきた……。
「……セシリア……このラーメン? みたいなの……明らかにお前の身長越してるよな?」
「むぅ……! 私の方が大きいもん!」
そうじゃない。
僕が言いたいのは、明らかにこれはお前の容積を物理的に超えてるだろってことだよ……。
「失礼しちゃうわね! いっただきまーす!」
セシリアがパチンという音を立てて割り箸をわった。
さてと……僕も何か食べないとな……。
僕がレンゲを片手に炒飯の皿を取り、「いただきます」と言い終えた瞬間、その山は片方消え失せていた……。
「セシリア……この量を食べたの?」
「早くしないと麺が伸びちゃうじゃないの」
僕は一応のためもう一山を見て具材を見てみると、そこには甲殻類が丸ごと乗っていたり、メンマやチャーシューすら通常の三倍はあろうかという大きさをしていた……。
「じゃあこっちも貰うね! 」
セシリアが麺をズズズ……と音を立てて啜ると、みるみるうちに山は高さを失い、やがてそこにはどんぶりしか残っていなかった……。
慌てて店員がやってくる。
「すみません……大盛りチャレンジのやつ計り忘れてて……あの……テラ盛りラーメンどうされました?」
「美味しかった!」
セシリアは満面の笑みでそう返した。
「はぁ!? まだ十年間成功者一人もいないんですよ!? それを一人で二皿……素晴らしい……なんて素晴らしい食べっぷり!」
疑わないんだ……。
僕は目の前で繰り広げられる光景を見つつ炒飯を食べる……。
大きめに切られたチャーシュー、微かではあるもののしっかりと主張しているニンニクとネギの香り……それらが混ざり合い、絡まり合う事で 初めて真価を発揮するパラパラに炒められたお米……。
美味しい……口の中が蕩ける……。
そんな僕を見て、セシリアが恥ずかしそうに喋り出した。
「ねえ……イーヴォ……?」
「どうしたの?」
「もし構わないのなら……今食べてる炒飯分けてもらっていい?」
……え? でもまだ何かしらあったはず……。
机を見るも、そこには料理など影も形もなかった……。
「仕方ない……あげるよ」
「あーん」
「……へ?」
セシリアは口を大きく開け、その中に炒飯を入れろと指差している……。
まあいいや……。 付き合ってあげよう……。
「はい、あーん」
セシリアは勢いよくレンゲに噛みつき、炒飯を頬張った。
とても幸せそうにほっぺたを押さえ、
「美味しぃ!でもラーメンは啜れば全部一気に食べれるけど、お米とかのやつはちょっとずつ食べないとなんないからめんどくさいのよねぇ」
最後の一言で台無しだよ……。
「もっとちょうだい!」
「仕方ないなぁ……」
僕ら(と言うより九割方セシリア)は食事をあっという間に終えた。
「あの……お会計よろしいですか?」
すると店主らしき男、
「お代? んなもん要らねぇよ……俺は嬢ちゃんの
食いっぷりに惚れちまったよ……」
「やだもう! 照れるわよ……」
満更でも無さそうにセシリアは答える。
「いつか嬢ちゃんが[もう食べられない!]って言うような特盛料理、振舞ってやるよ! それまで首を洗って待ってろよ!」
「望む所よ!」
そんなこんなで僕らはタダでご飯にありつけた……。
「さてと……図書館に行くよ!」
「もちろんよ!」
僕らは図書館に向かって歩き始めた。
するとセシリア、
「……あ!」
「どうしたの?」
「あのゴールデンスライム?だっけかの換金どうするの?」
「あ! ……帰ってきてからにしよう!」
「それもそうね」
先が思いやられはするが……。
速いっ!速いっ!
セシリアは風を切り、僕を地につけることなくぐんぐんと加速する。
「イーヴォ! もうちょっと待って! この角曲がったあたりから美味しいものの匂いがする!」
「鼻良すぎるだろお前!」
そしてセシリアは赤い登りの店の前で自動車さながらの[キキーッ]というブレーキ音とともに急停止した。
僕は勢いそのまま地面に転がった。
こんなのが毎日続いたら命が何個あっても足りない……。
「さあ! 入るわよ!」
店先の看板には《中華料理処 九龍》の文字が。
勢い良くセシリアが引き戸をガラガラと開ける。
すると、にこやかな笑顔の青年が待ち構えていた。
「いらっしゃーせ!……うん? あ! 大将! 例のお客、うちに来ましたよ!」
そう言って青年は店主らしき、寸胴のような体格の男性に話しかけた。
「何だって! これでうちの評判も鰻登り……いや龍門登りだな! 丁重に接待してやれ!」
「はい!」
スタスタと青年は近づき僕らに話しかけた。
「君たちだろう? この街を救ってくれた二人組ってのは?」
「もっちろんよ!」
「まあ……結果的にそうなりましたね……」
「それじゃあ奥の方に。 付いてきて」
僕らは導かれるままに店内を歩いた。
店の中は薄暗く、その中に浮いているかのように真っ赤な提灯が天井から垂れ、うっとりとするほど華やかである。
僕らは対面形式の端の席に案内され、ゆっくりと腰を下ろした。
「それじゃあ、その辺にいるから何にするか決まったら呼んでね」
「はい。ありがとうございます」
見渡すと店内には昼前だと言うのに結構な人が居て、各々料理を美味しそうにつついていた。
「さてと……何にしましょう?」
「僕に聞いてるのそれ?」
「だって中華料理って言ってもどんなのが有るのかわかんないもん……」
こいつ己の嗅覚に全てを委ねたのかよ……。
本当に予測不可能だな……。
「じゃあひとまずメニュー見てみよ」
「そうね!そうしましょ!」
メニューをセシリアに見えるように手渡すと、
「おにーさーん! これとこれとこれ! 二つずつ!」
「もう決まったの!? それなら僕は炒飯で!」
すると青年はセシリアに聞き返す。
「え!? この量ほんとに食べるの……?」
「うん! もちろん!」
「……よし……中華料理屋 九龍の誇りにかけて作ってくるよ……!」
……何だって?
「おい……セシリア……今なら怒らないから何頼んだか喋ってご覧?」
「えーっと……これとこれとこれ!」
セシリアが指差したのは……「青椒肉絲」、「麻婆豆腐」、「超メガ盛り! 九龍の本気 テラ・ラーメン!」……。
うん普通だな……最後のやつを除いて……。
しばらくすると炒飯が一皿、麻婆豆腐と青椒肉絲が二皿ずつ、そして山という他ない冒涜的な何かが二つ運ばれてきた……。
「……セシリア……このラーメン? みたいなの……明らかにお前の身長越してるよな?」
「むぅ……! 私の方が大きいもん!」
そうじゃない。
僕が言いたいのは、明らかにこれはお前の容積を物理的に超えてるだろってことだよ……。
「失礼しちゃうわね! いっただきまーす!」
セシリアがパチンという音を立てて割り箸をわった。
さてと……僕も何か食べないとな……。
僕がレンゲを片手に炒飯の皿を取り、「いただきます」と言い終えた瞬間、その山は片方消え失せていた……。
「セシリア……この量を食べたの?」
「早くしないと麺が伸びちゃうじゃないの」
僕は一応のためもう一山を見て具材を見てみると、そこには甲殻類が丸ごと乗っていたり、メンマやチャーシューすら通常の三倍はあろうかという大きさをしていた……。
「じゃあこっちも貰うね! 」
セシリアが麺をズズズ……と音を立てて啜ると、みるみるうちに山は高さを失い、やがてそこにはどんぶりしか残っていなかった……。
慌てて店員がやってくる。
「すみません……大盛りチャレンジのやつ計り忘れてて……あの……テラ盛りラーメンどうされました?」
「美味しかった!」
セシリアは満面の笑みでそう返した。
「はぁ!? まだ十年間成功者一人もいないんですよ!? それを一人で二皿……素晴らしい……なんて素晴らしい食べっぷり!」
疑わないんだ……。
僕は目の前で繰り広げられる光景を見つつ炒飯を食べる……。
大きめに切られたチャーシュー、微かではあるもののしっかりと主張しているニンニクとネギの香り……それらが混ざり合い、絡まり合う事で 初めて真価を発揮するパラパラに炒められたお米……。
美味しい……口の中が蕩ける……。
そんな僕を見て、セシリアが恥ずかしそうに喋り出した。
「ねえ……イーヴォ……?」
「どうしたの?」
「もし構わないのなら……今食べてる炒飯分けてもらっていい?」
……え? でもまだ何かしらあったはず……。
机を見るも、そこには料理など影も形もなかった……。
「仕方ない……あげるよ」
「あーん」
「……へ?」
セシリアは口を大きく開け、その中に炒飯を入れろと指差している……。
まあいいや……。 付き合ってあげよう……。
「はい、あーん」
セシリアは勢いよくレンゲに噛みつき、炒飯を頬張った。
とても幸せそうにほっぺたを押さえ、
「美味しぃ!でもラーメンは啜れば全部一気に食べれるけど、お米とかのやつはちょっとずつ食べないとなんないからめんどくさいのよねぇ」
最後の一言で台無しだよ……。
「もっとちょうだい!」
「仕方ないなぁ……」
僕ら(と言うより九割方セシリア)は食事をあっという間に終えた。
「あの……お会計よろしいですか?」
すると店主らしき男、
「お代? んなもん要らねぇよ……俺は嬢ちゃんの
食いっぷりに惚れちまったよ……」
「やだもう! 照れるわよ……」
満更でも無さそうにセシリアは答える。
「いつか嬢ちゃんが[もう食べられない!]って言うような特盛料理、振舞ってやるよ! それまで首を洗って待ってろよ!」
「望む所よ!」
そんなこんなで僕らはタダでご飯にありつけた……。
「さてと……図書館に行くよ!」
「もちろんよ!」
僕らは図書館に向かって歩き始めた。
するとセシリア、
「……あ!」
「どうしたの?」
「あのゴールデンスライム?だっけかの換金どうするの?」
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「それもそうね」
先が思いやられはするが……。
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