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一章.魔法使いと人工キメラ
十八話目-大禁書庫と旧き王
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僕らは今、図書館の前にいる。
僕はイゴロノスの城壁は少しやりすぎなのではないかと思っていたのだが……。
その壁に見合った、堅牢で厳しい建物がずっしりとそこに構えてあった……。
「それじゃあ、チャチャッと終わらせちゃいましょ!」
「あんまり騒ぐなよ……図書館の中に入ったら」
「もちろんよ! 私に任せなさい!」
すごく嫌な予感がする……セシリアの事だけでなく、他にも……。
重厚なドアを開けると、そこには延々と続いているように見える長い廊下……そして見上げると、天井ははるか上にあり、階層は全部で三つほどあるようだ……。
広いにも程がある……。
ひとまず僕らは長い長い廊下をただ真っ直ぐに歩くことにした。
すると、
「こっちだよー……」
小さな声でさっきの男の子が手招きしていた。
まもなく僕らはその子の元に静かに駆け寄った。
「ごめんね遅くなって……それで何をすればいいの?」
「ううん……えっとね……おばけ退治してもらいたいの」
……お化け?
まあ……似たようなものなら退治したけれども……。
「お化けなんていないわよ……」
「ここの奥でね……ずっと泣いてるの……ずっと……」
男の子は近くにある真っ赤な両開きの扉を指差して言った。
そのドアには[コレヨリ 先、禁書保管庫 ナリ。 許可ナキ者ノ 立入リの一切ヲ禁ズル。]と、いかにも古そうな紙に書かれてあった……。
「僕のおばあちゃん、ここの図書館作ったから僕はここ入っていいんだけど……お化けが出て入れなくなったの……」
「じ、じゃあ僕らは入ってもいいの?」
「うん。 その代わりに……」
「その代わりに……?」
男の子のその一言に辺りは時が止まったかのような沈黙に包まれる……。
さすがのセシリアもこの雰囲気に耐えかね生唾を飲み込む……。
「頭と体が一緒に出てこれないかもしれないから気をつけてね」
はぁ!?
危ない……大声を出すところだった……。
僕は一息付いてから話し始めた。
「お化けってどの辺にいるの?」
「ずっと奥の方……泣き声が聞こえるからすぐ分かるよ……」
男の子は「じゃあ、いってらっしゃい……」 と、言ってそのドアの片方を開けた。
僕らは慎重に禁書庫に入っていった。
禁書庫の中は薄暗く、所狭しと本棚が置かれていた。
そしてどこか黴臭く、まさに幽霊でも出そうな雰囲気だった。
「ねぇ……イーヴォ……」
セシリアが弱々しく話しかけてきた。
「どうしたの? またお腹すいた?」
セシリアは黙って首を振り、震える手で右側の本棚を指差した……。
すると、そこには人影らしきものが。
「あの……すみません……管理者の方ですか?」
その人は何も言わずに、ただうなだれてばかりだった。
「あの……すみません……大丈夫ですか?」
僕はひとまず肩を叩いてみる。
その肩は異様に固く、骨ばっていた。
……否、僕が叩いたものは人間の骨だった。
「うわぁぁぁ!」
僕は驚いて腰を抜かす。
なるほど……セシリアも怖がるわけだ……。
「大丈夫?」
「立てない……ごめん引っ張って……」
「もう仕方ないわね……」
僕はセシリアに引っ張られ、なんとか立ち上がる……。
僕はその骸骨が持っている本にふと目を下ろす……。
えっと題名は……「About……Phantom.」?
そんな遥か昔からファントムがいたのか?
本の内容は読める所もあれば永年放置されていたせいだろうか? 風化したり染みになったりして、完全に読めないところもある……。
ん……「ファントムの烙印」?
[ファントムに魅入られた者、或はファントムと契約を交した者に付けられる羽の骨格のような形の痣。
なお、それは差別や偏見の対象となるためにほとんどは足の裏など目立たない所に付けられる。
そんなものを掲げるなど自ら晒し者になるようなものだが、オーガの軍隊はそれを顔に彫ったり、鎧の装飾にしたりと様々だ……。]
そしてそのベージの端にはその印が書かれてある……。
何故だろう……とてつもなく見覚えがある……僕の周りのものに書かれているかのように……。
僕は結局思い出すことが出来なかった……。
まあいい。少しこれを持って行って借りられるか聞いてみよう。
弱点とか載ってるかもしれないし……。
そんなことを考えていると、セシリアがグイグイと袖を引っ張ってきた。
「イーヴォ……早く行こう……もう飽きた……埃っぽいし」
「じゃあとっととお化け退治するか……」
僕らがつけつけと歩くと、
[ぅぅぅぅっ……グスン……ぅぅぅぅっ……]
という啜り泣く声が聞こえた……。
それは部屋にこだまし、より一層暗闇の不気味さを駆り立てて言った……。
するとセシリア、
「これ奥の方から聞こえてきてる……でも割と近そう」
その言葉を信じて周りを見渡すと、一箇所だけ本が散らばっている所があった。
その本を辿ると、そこには本の山が……。
泣き声はどうやらここから聞こえているらしい……。
「おーい! そこにいるのー? いるなら返事してー!」
と、セシリアが言うと本の山から声がした。
「うん!? そこに誰かおるのか!?」
声は女の子だ。
地縛霊とかそういったものだろうか……?
「コホン……そこにおる下等種族! わらわを助けさせてやらんこともないぞ!」
むっちゃ偉そうだな……でも助けろって?
すると山の裏からはドタドタと、何かがもがいているような音がした。
セシリアを連れて裏から見てみると、本の山からスカートを履いた人の腰から下が生えていた……。
うわぁ……気味が悪い……。
するとこちらが近づいたことに気付いたのか本に捕らわれた人は喋り出した。
「これ! 何をグズグズしておる! このわらわが! この魔王パズズ様が苦しんでおるのだぞ! 貴様らにはわらわを助ける権利を……」
延々と喋っているが……魔王パズズ? がなんでまた幼女になって、その上こんな所でじたばたしてるんだ?
しばらくするとその脅しは、やがて懇願の声に変わっていた……。
「頼むよぅ……ズズッ……さっきは偉そうな事言って悪かったって……ヒック……謝るからぁ……グスッ……見捨てないでぇ……ヒック……」
威厳も何もあったもんじゃないな……段々、可哀想になってきた……。
でも……僕の力ではとてもこの本を退かせそうもないな……。
「セシリア、この人の上に乗ってる本退かせ……」
「うりゃあ!」
刹那、セシリアは渾身の左ストレートを放った……。
本の山から生えている尻に向かって……。
辺りには本がぼとぼとと落ち、自称:魔王パズズは弾丸のような起動を描いて、向かいの本棚に衝突した……。
[ズドーン……]
凄まじい木片とおびただしい量の埃を撒き散らしながら魔王パズズは本棚だったものの下に消えた……。
「ふふーん! 私に掛かればこんなもの、イーヴォに言われる前に解決出来るわよ!」
「セシリア、ごめん。 解決方法を頭が理解しようとしてない……」
こいつには少なくとも「引く」という選択肢は無かったようだ……。
すると崩れ去った本棚だったものの山から、ゆっくりと、人影が動き出した……。
「ぶっ……無礼者! わらわの……わらわの高貴な体をぞんざいに扱いおって! ……貴様ァ! 万死に値する!」
本の上に這い上がって仁王立ちを決めたのは背中に四枚の上二枚が赤と下二枚が青のコウモリの羽根のようなものを生やし、大変ご立腹そうにこちらを睨む幼女の姿だった……。
彼女の髪は鮮血が噴き出しているかのような赤、そしてこめかみの当たりからは二本の黒い捻じれ角が生えていた……。
その顔は埃で薄汚れてはいたが、どうやらかすり傷一つ付いていないようだ……。
「ええい! 貴様らここでわらわ復活の糧にしてくれるわ!」
するとパズズの周りに激しい気流が出来始めた……。
「喰らえ! 《パズズの怒り》!」
その気流は獅子の顔へと姿を変え、こちらに突進してきた……!
するとセシリア、
「おー!カッコイイ! 私も! フウッ! 」
あろう事かセシリアはこの埃の立ち込める倉庫、それも古く乾燥した本の周りで火を吹いた……。
その炎は、風の獅子を巻き込み……まもなく術者に降り掛かった……。
風魔法を体に纏っていたパズズはたちまちに炎上し転げ回る……。
「あちちっ! あっち! 熱い熱い熱いっ!」
セシリアはパズズがそうやって右往左往する様を見て笑い転げる……。
何が起こってるのかって?
僕に聞かないでくれ……。
ひとまず火を消さないと……この狭い部屋で延焼なんかしたら、僕だけ焼死体になってしまうだろう……。
「パズズさん! そこから動かないで!」
とりあえず僕は着ていたコートでパズズを叩く……が、水も含んでいないコートは良い燃料になったようだ……今度はコートが燃え上がる……。
「あっち! あー! そうだそこの白髪! お前魔法使えんのか! 熱っ! わらわがウェルダンになる前に…… 熱っ! 何とかならんかー!?」
……魔王とかに毒って効くのか……?
あ!リュックの中!
僕はリュックを漁る。
「パズズさん! 真っ直ぐに僕に突っ込んできて!」
「策があるのか!? あづっ!」
「一応ある!」
パズズは真っ直ぐに僕に突っ込む……聞き分けはセシリアよりいいようだ……。
その火達磨に僕は回復薬を鍋ごとかけた。
ジュー……という音とともに火は消えた……。
「全く……わらわがわらわ自身の高貴な能力で服を作っていなければ今頃わらわは……酷い恥辱を受けていたに違いあるまい……グスッ」
そう言って魔王パズズはその金色の瞳一杯に涙を溜めた……。
可哀想に……。
するとセシリアはパズズに駆け寄る。
「ごめんね……火力の制御が利かなくて……」
「うるさいっ! お前なんて……お前なんて……全盛期のわらわならあっという間に倒しておるのに……ヒック……」
するとパズズは、
「貴様らが何しに来たか知らんが、わらわは本を探さないとならないのじゃ! とっとと消えるが良いわっ!」
「さっきの罪滅ぼしとして手伝わせて! なんて本なの?」
「むぅ……望んで隷属になりに来るとは……わらわの力はやはり絶大なようじゃの! アーッハッハッハ!」
「イーヴォ……れーぞく?ってなあに? レーズンの仲間?」
……一ミリも話が噛み合ってない……。
僕は取り敢えず質問をしてみることにした。
「あの……パズズさん?」
「何じゃ?」
「何故本を探しているんです?」
「わらわの……魔王パズズとしての力をファントムから取り戻す為じゃ!」
ファントム!?
僕はイゴロノスの城壁は少しやりすぎなのではないかと思っていたのだが……。
その壁に見合った、堅牢で厳しい建物がずっしりとそこに構えてあった……。
「それじゃあ、チャチャッと終わらせちゃいましょ!」
「あんまり騒ぐなよ……図書館の中に入ったら」
「もちろんよ! 私に任せなさい!」
すごく嫌な予感がする……セシリアの事だけでなく、他にも……。
重厚なドアを開けると、そこには延々と続いているように見える長い廊下……そして見上げると、天井ははるか上にあり、階層は全部で三つほどあるようだ……。
広いにも程がある……。
ひとまず僕らは長い長い廊下をただ真っ直ぐに歩くことにした。
すると、
「こっちだよー……」
小さな声でさっきの男の子が手招きしていた。
まもなく僕らはその子の元に静かに駆け寄った。
「ごめんね遅くなって……それで何をすればいいの?」
「ううん……えっとね……おばけ退治してもらいたいの」
……お化け?
まあ……似たようなものなら退治したけれども……。
「お化けなんていないわよ……」
「ここの奥でね……ずっと泣いてるの……ずっと……」
男の子は近くにある真っ赤な両開きの扉を指差して言った。
そのドアには[コレヨリ 先、禁書保管庫 ナリ。 許可ナキ者ノ 立入リの一切ヲ禁ズル。]と、いかにも古そうな紙に書かれてあった……。
「僕のおばあちゃん、ここの図書館作ったから僕はここ入っていいんだけど……お化けが出て入れなくなったの……」
「じ、じゃあ僕らは入ってもいいの?」
「うん。 その代わりに……」
「その代わりに……?」
男の子のその一言に辺りは時が止まったかのような沈黙に包まれる……。
さすがのセシリアもこの雰囲気に耐えかね生唾を飲み込む……。
「頭と体が一緒に出てこれないかもしれないから気をつけてね」
はぁ!?
危ない……大声を出すところだった……。
僕は一息付いてから話し始めた。
「お化けってどの辺にいるの?」
「ずっと奥の方……泣き声が聞こえるからすぐ分かるよ……」
男の子は「じゃあ、いってらっしゃい……」 と、言ってそのドアの片方を開けた。
僕らは慎重に禁書庫に入っていった。
禁書庫の中は薄暗く、所狭しと本棚が置かれていた。
そしてどこか黴臭く、まさに幽霊でも出そうな雰囲気だった。
「ねぇ……イーヴォ……」
セシリアが弱々しく話しかけてきた。
「どうしたの? またお腹すいた?」
セシリアは黙って首を振り、震える手で右側の本棚を指差した……。
すると、そこには人影らしきものが。
「あの……すみません……管理者の方ですか?」
その人は何も言わずに、ただうなだれてばかりだった。
「あの……すみません……大丈夫ですか?」
僕はひとまず肩を叩いてみる。
その肩は異様に固く、骨ばっていた。
……否、僕が叩いたものは人間の骨だった。
「うわぁぁぁ!」
僕は驚いて腰を抜かす。
なるほど……セシリアも怖がるわけだ……。
「大丈夫?」
「立てない……ごめん引っ張って……」
「もう仕方ないわね……」
僕はセシリアに引っ張られ、なんとか立ち上がる……。
僕はその骸骨が持っている本にふと目を下ろす……。
えっと題名は……「About……Phantom.」?
そんな遥か昔からファントムがいたのか?
本の内容は読める所もあれば永年放置されていたせいだろうか? 風化したり染みになったりして、完全に読めないところもある……。
ん……「ファントムの烙印」?
[ファントムに魅入られた者、或はファントムと契約を交した者に付けられる羽の骨格のような形の痣。
なお、それは差別や偏見の対象となるためにほとんどは足の裏など目立たない所に付けられる。
そんなものを掲げるなど自ら晒し者になるようなものだが、オーガの軍隊はそれを顔に彫ったり、鎧の装飾にしたりと様々だ……。]
そしてそのベージの端にはその印が書かれてある……。
何故だろう……とてつもなく見覚えがある……僕の周りのものに書かれているかのように……。
僕は結局思い出すことが出来なかった……。
まあいい。少しこれを持って行って借りられるか聞いてみよう。
弱点とか載ってるかもしれないし……。
そんなことを考えていると、セシリアがグイグイと袖を引っ張ってきた。
「イーヴォ……早く行こう……もう飽きた……埃っぽいし」
「じゃあとっととお化け退治するか……」
僕らがつけつけと歩くと、
[ぅぅぅぅっ……グスン……ぅぅぅぅっ……]
という啜り泣く声が聞こえた……。
それは部屋にこだまし、より一層暗闇の不気味さを駆り立てて言った……。
するとセシリア、
「これ奥の方から聞こえてきてる……でも割と近そう」
その言葉を信じて周りを見渡すと、一箇所だけ本が散らばっている所があった。
その本を辿ると、そこには本の山が……。
泣き声はどうやらここから聞こえているらしい……。
「おーい! そこにいるのー? いるなら返事してー!」
と、セシリアが言うと本の山から声がした。
「うん!? そこに誰かおるのか!?」
声は女の子だ。
地縛霊とかそういったものだろうか……?
「コホン……そこにおる下等種族! わらわを助けさせてやらんこともないぞ!」
むっちゃ偉そうだな……でも助けろって?
すると山の裏からはドタドタと、何かがもがいているような音がした。
セシリアを連れて裏から見てみると、本の山からスカートを履いた人の腰から下が生えていた……。
うわぁ……気味が悪い……。
するとこちらが近づいたことに気付いたのか本に捕らわれた人は喋り出した。
「これ! 何をグズグズしておる! このわらわが! この魔王パズズ様が苦しんでおるのだぞ! 貴様らにはわらわを助ける権利を……」
延々と喋っているが……魔王パズズ? がなんでまた幼女になって、その上こんな所でじたばたしてるんだ?
しばらくするとその脅しは、やがて懇願の声に変わっていた……。
「頼むよぅ……ズズッ……さっきは偉そうな事言って悪かったって……ヒック……謝るからぁ……グスッ……見捨てないでぇ……ヒック……」
威厳も何もあったもんじゃないな……段々、可哀想になってきた……。
でも……僕の力ではとてもこの本を退かせそうもないな……。
「セシリア、この人の上に乗ってる本退かせ……」
「うりゃあ!」
刹那、セシリアは渾身の左ストレートを放った……。
本の山から生えている尻に向かって……。
辺りには本がぼとぼとと落ち、自称:魔王パズズは弾丸のような起動を描いて、向かいの本棚に衝突した……。
[ズドーン……]
凄まじい木片とおびただしい量の埃を撒き散らしながら魔王パズズは本棚だったものの下に消えた……。
「ふふーん! 私に掛かればこんなもの、イーヴォに言われる前に解決出来るわよ!」
「セシリア、ごめん。 解決方法を頭が理解しようとしてない……」
こいつには少なくとも「引く」という選択肢は無かったようだ……。
すると崩れ去った本棚だったものの山から、ゆっくりと、人影が動き出した……。
「ぶっ……無礼者! わらわの……わらわの高貴な体をぞんざいに扱いおって! ……貴様ァ! 万死に値する!」
本の上に這い上がって仁王立ちを決めたのは背中に四枚の上二枚が赤と下二枚が青のコウモリの羽根のようなものを生やし、大変ご立腹そうにこちらを睨む幼女の姿だった……。
彼女の髪は鮮血が噴き出しているかのような赤、そしてこめかみの当たりからは二本の黒い捻じれ角が生えていた……。
その顔は埃で薄汚れてはいたが、どうやらかすり傷一つ付いていないようだ……。
「ええい! 貴様らここでわらわ復活の糧にしてくれるわ!」
するとパズズの周りに激しい気流が出来始めた……。
「喰らえ! 《パズズの怒り》!」
その気流は獅子の顔へと姿を変え、こちらに突進してきた……!
するとセシリア、
「おー!カッコイイ! 私も! フウッ! 」
あろう事かセシリアはこの埃の立ち込める倉庫、それも古く乾燥した本の周りで火を吹いた……。
その炎は、風の獅子を巻き込み……まもなく術者に降り掛かった……。
風魔法を体に纏っていたパズズはたちまちに炎上し転げ回る……。
「あちちっ! あっち! 熱い熱い熱いっ!」
セシリアはパズズがそうやって右往左往する様を見て笑い転げる……。
何が起こってるのかって?
僕に聞かないでくれ……。
ひとまず火を消さないと……この狭い部屋で延焼なんかしたら、僕だけ焼死体になってしまうだろう……。
「パズズさん! そこから動かないで!」
とりあえず僕は着ていたコートでパズズを叩く……が、水も含んでいないコートは良い燃料になったようだ……今度はコートが燃え上がる……。
「あっち! あー! そうだそこの白髪! お前魔法使えんのか! 熱っ! わらわがウェルダンになる前に…… 熱っ! 何とかならんかー!?」
……魔王とかに毒って効くのか……?
あ!リュックの中!
僕はリュックを漁る。
「パズズさん! 真っ直ぐに僕に突っ込んできて!」
「策があるのか!? あづっ!」
「一応ある!」
パズズは真っ直ぐに僕に突っ込む……聞き分けはセシリアよりいいようだ……。
その火達磨に僕は回復薬を鍋ごとかけた。
ジュー……という音とともに火は消えた……。
「全く……わらわがわらわ自身の高貴な能力で服を作っていなければ今頃わらわは……酷い恥辱を受けていたに違いあるまい……グスッ」
そう言って魔王パズズはその金色の瞳一杯に涙を溜めた……。
可哀想に……。
するとセシリアはパズズに駆け寄る。
「ごめんね……火力の制御が利かなくて……」
「うるさいっ! お前なんて……お前なんて……全盛期のわらわならあっという間に倒しておるのに……ヒック……」
するとパズズは、
「貴様らが何しに来たか知らんが、わらわは本を探さないとならないのじゃ! とっとと消えるが良いわっ!」
「さっきの罪滅ぼしとして手伝わせて! なんて本なの?」
「むぅ……望んで隷属になりに来るとは……わらわの力はやはり絶大なようじゃの! アーッハッハッハ!」
「イーヴォ……れーぞく?ってなあに? レーズンの仲間?」
……一ミリも話が噛み合ってない……。
僕は取り敢えず質問をしてみることにした。
「あの……パズズさん?」
「何じゃ?」
「何故本を探しているんです?」
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ファントム!?
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