毒魔法使いの異世界探訪!

しぼりたて柑橘類

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一章.魔法使いと人工キメラ

二十三話目-服屋とリュックと白の帰還

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 「ねえ……イーヴォのコーデ出来たよ! 早く着てよ!」
 「……ああごめん……すっかり寝てた……」

 
 凄く変な夢を見ていた気がする……特に理由もないけれど……。

 
 セシリアから一抱えほどの服を渡される……これ全部……?

 
「セシリア……これ……全部?」
「もちろん! 私は一切妥協しないわよ!」
「……う、うん……わかったよ……」


 ワイシャツ、コート、セーター、ジャケット……デニムに、スラックス……取り敢えず、渡されたものを片っ端から着てみた……。


 まぁ……店員さんには申し訳ないが、買ったのはほんの数点……。

 散財などしている余裕はない……。


 僕はふと思い出したことがあり、服屋の店員さんに尋ねる。


 「あの……リュックってあります? 」
 「どのような物をお求めですか?」
 「えっと……さっきまでそこにいた僕の相方に似合いそうなのって有りますか?」
 「ああ……それなら……」


 セシリアはベンチに腰掛け、僕と同じようにウトウト……。


 セシリアにバッグと考えてはいたけど……高いのはまだ買えそうもないし、リュックでも喜んでくれるだろうか?


 今思えば、僕が人に物を贈るのはこれが初めてだ……。


 何だかドキドキするようでワクワクするようで……取り敢えず何だか嬉しくなってきた……!

 

 そんなことを考えつつ、品定めをしていると……。 


 [カランカラン……]


 店先の小さな鈴が鳴る。


 何となく振り向くとそこには、真っ黒な修道服に身を包んだ大柄な女性が立っていた。


 「えっと……うん、これがいいですね……すみませーん!」


 ……ん?
 修道女って普通、こんな所で自由に買い物してもいいんだっけ?

 
 そんなことを考えていると、既に買い物を済ませた修道女が寄ってくる。


 「ちょっと……いいですか?」
 「はい……どう……されましたか?」


 修道女はいきなり僕の首元に顔を近づけ……!


 凄まじい迫力が首筋を走る……それはナイフより鋭く……ピストルよりも速い……!


 
 「……スゥー……何か変な匂いがしましてね……化け物じみた何かの……気のせいだったようで……」

 「……ハァッ……ハァッ……」


 本当に吸血鬼かなにかだと思ってしまった……そんな自然かつ洗練された動き……


 こいつ…………!

 冷や汗が頬を伝い、首筋に流れる。
 
 
 すると、



  「イーヴォ……何見てるの?」


 セシリアが起き、目を擦りながら僕に近づいてきた。


 「いっ! いや!  何でもないよ!」

 咄嗟にリュックを後ろに隠す……冷や汗も相まって盛大に誤解を受けそうな気がするっ!

 
 「まあいいわ! で、この人だれ?」
 「初めまして私はレフィーネ。 修道女をやっております」

 
 レフィーネはセシリアに一瞥、

 「うん! よろし……」

 途端にセシリアの表情に嫌悪の色が混ざる……。

 セシリアはただ一点を穴が開くほど見つめる……。

 そして僕にひっそりと耳打ちをした。 
 
 
「あの胸に下がってる水風船をもぎり取る許可を下さい……」
 「やめなさい。 何考えてんだ……」


 ここまで触れなかったがその修道女、修道服が、可哀想になるほど体の要所要所のパーツが大きいのだ……。

 グラマラス? そう言えばいいのだろうか?

 何はともあれ、そんなことしたらもう街から出入り禁止になるどころか犯罪者の仲間入りだぞ……セシリア。


 すると修道女、

 「あの……君……図書館ってどっちです?」
 「えっと……あっちです……!」
 「ありがとう……助かりました……」


 そう言って一瞥し、修道女は扉を潜った。

 なんなんだろ……あの人……。


 「悪は……去った! 」
 「セシリア……やめなさい……」

 
 きっとさっきのセリフ……普通の人が喋ったら笑えるんだろうな……セシリアは本当にできるし、やりかねないからとても笑えない……。


 「そうだセシリア……早く家に戻ってゴールデンスライム換金しないと……」
 「それもそうね! 早く帰りましょ!」


 僕らは手を繋いで、ゆっくりと歩く……。

 
 するとセシリア、

 
 「ねえ……イーヴォ」
 「どうしたの?」
 「あの毒の鎧の魔法って名前あるの?」
 「名前? グリモワールに載ってるやつでも無いし……言われてみれば考えたことも無かった……」 
 「私とイーヴォの合体技みたいな感じだし、名前欲しいなって思ってね!」


 名前ねぇ……パッと使えないから最後の手段としか考えてなかったけどなぁ……。


 「私は勇者とか騎士とかそんなかっこいいのがいい!」
 「かっこいいのねえ……駄目だ……後で練習でもしつつ考えよう」
 「そう……ならいいけど!」


 気まずそうにセシリアは俯く。

 急にどうしたんだろ……最近戦い続きだからかな……?


 互いに何かしら思う事があっても伝わらないってもどかしいな……。


  そんなことを思いつつ僕は玄関を開け中に入る。


 「たっだいまー!」
 

 セシリアがドタドタと玄関に上がる。


 こんな日々がずっと続けばいいな……。







 場所は変わって図書館の一角。


 「こらっ! ターニャちゃん……あんな三下に負けるなんてなんてことですか?」

 
 修道女はナメクジに語りかける……。

 さながらそれは滑稽でいて、どこかおどろおどろしい……。


 「キューゥ……」


 ナメクジは矮小ながらもしっかりと訴える……。

 
 「ふふっ……そういえば私ナメクジ語喋れませんでしたね……」

 
 そう言うと、修道女はグリモワールを構え……その間に挟んでいた一枚の紙を取り出す。
 

 「ちょっとだけ待っててくださいね、ターニャちゃん……」

 
そう言ってポケットから取り出したのはケースに入った至って普通の羽付きのペン……柄に針が付いているのを除けば……。

 それを修道女は躊躇なく握り、ペンを紙の上で踊らせる。

 たらたらと流れ、伝う鮮血……。
 
 それが紙の上に載り……文や模様へと自由自在に形を変える。

 出来上がったのは赤黒く、複雑極まりない魔法陣だった……。

 
 その中心にナメクジを置き、


 「……偉大なるファントムよ……その深淵の力の一片を……彼の者に捧げよ……」


 そう言うとメキメキとナメクジは姿を変える……そして出来上がったのは、真っ白な美少女だった……。

 その光景はさながらヴィーナスの誕生のように美しい……だが、その儀式が成功したことは再び白い災厄が降り立ったことを意味する……。

 
 「全く……面倒なんですよこれ……ファントム様の力を求めてやってくる悪魔を寄せない為に魔法陣も書かないとならないし……」
 「ごめんね…………」

 
 そう返し、ターニャはレガッタと呼んだ人物から服を受け取る。

 「さーて……まずはエネルギーを補完しないとですね……食べ物は取ってきました……どうぞターニャちゃん」
 「ありがとうね……レガッタ……一時はどうなることかと思ったよ……フフッ」


 ターニャは取り敢えずパンとハムをむんずと捉え、一気にがっつく……。


 「よし……[カオスの絶対領域]……」

 
 グリモワールから淀みのようなものが流れる……それは周りの空間を歪め……レガッタとターニャを消した。


 「……覚悟していろ……003-en……そして忌み子の毒魔法使い……お前らをこの街ごと消し飛ばすッ! 絶世の白……千貌の魔法使いに喧嘩を売ったこと……骨の髄まで底の無い恐怖と絶望を味わせてやる……」


 そしてターニャは呟く。

 「全てはボスの仰せのままに……私の……私達のの為に……」
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