27 / 35
一章.魔法使いと人工キメラ
二十四話目-かつての夢と大勝負
しおりを挟む
さて……今僕らは質屋から出てきた……。
インゴットではなかった事ももあり、足元を見られはしたが……かなりまとまった金額が手に入った!
その為僕らは家に帰り、お金をきっちりと保管してから街に繰り出そうとしている所だ。
「ねえ……これからどこに行くの?」
セシリアが尋ねる。
あまり寝ていないこともあってか、いかんせん眠そうだ。
「セシリア、パフェ食べたかったんでしょ? 喫茶店にでも行こうよ」
「本当に……いいの?」
夢で一足先に食べた……なんて言ったら起こるかな……?
「もちろん! 僕も前から食べたかったから」
「やったぁ!」
セシリアは喜びを全身で表現している……跳んで、跳ねて、とても楽しそうだ。
……なんだろう……?
とても嫌な予感がする……この街にはいってからというものの、とてもじゃ無いが気が休まっていない……。
僕はセシリアのために買っておいたものを取り出し、セシリアに差し出す。
「セシリア……さっきの店でこれ買ったんだけどね……気に入ってくれるかな?」
「うおっ! リュックだ! リュックだぁ! やった! やった!」
セシリアはリュックを掲げてまた騒いだ。
気に入ってくれたようだ!
「それじゃあ早く行きましょ!」
「うん、そうだね!」
僕は家に鍵をかけ、セシリアと手を繋ぐ。
そうしてゆっくりと大通りから出たその時、
[ズドーン!]
慌てて振り向くと、その轟音は図書館から鳴っていたと分かった……否、分かってしまった……!
バラバラと図書館の残骸をまき散らすは、先程とは桁違いの大きさの触手の化け物……!
まさか……あの修道女……!
そんなことを考えていると空から、
「あぶないのじゃああああああああ!」
と、聞き覚えのある声が響く。
急いで上を見るとパズズが落ちて来ていた……。
何故だろう……理由もないが「親方ッ!」と叫びたくなってきた……。
それはとてつもない勢いのまま僕の眼前に落ち、地面に突き刺さる……。
「よいしょっ!」
セシリアがパズズの足を引っ張り、引き抜いた。
「ぶはぁ……ハァ……死ぬかと思ったわい……感謝するのじゃ龍娘……」
「お安い御用よ!」
パズズは体についた埃を払い除ける。
「あの……パズズさん? 何故あなたは上から降ってきたんです?」
「決闘に負けて吹き飛ばされたのじゃぁ……あの女子……強かったのじゃあ……」
パズズは泣きじゃくり、涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにして喚く……。
てっきり化け物に吹き飛ばされたと……まあ、母は強しって事なんだろうな……。
すると触手の化け物は蠢く……。
その巨躯からは信じられないような速さで……街を触手を使い砕く……。
刹那、凄まじいノイズ混じりの轟音が鳴り響く……。
「……あーー!あーー! マイクテストー! 聞こえてるみたいだね? よーし……」
声の主は……なんと壁番のネネ!
「誰か存じ上げませんが、街の破壊を今すぐ止めてくださーい! 止めないと武力行使しますよー!?」
化け物は返す。
その声は反響し、さながら山鳴りのようだった……。
「出来るものならやってみろ! 私たちが嘗て鬼の王に立ち向かった時のように! 人間など性根の腐ったものばかり! 貴様らなど滅びればいい!」
「そうなんだー! それならやっちゃうよー!?」
そう言うと声の主は拡声器のまま呪文を唱える。
「❮使役魔法:ゴーレムの息吹❯……土塊の怪物よ……我命に従え……!」
途端に街が揺れる……!
ゴーレムは確か土やら鉄やら色々なものを纏めて作る筈だが……足元にはレンガそして建物は石造りだったりと作り易くはありそうだけど……。
ネネの作ったゴーレムは小道を抜け、通りを駆け……噴水に集まり、屈強な巨兵と化した……。
材料は……かつて街を閉ざし、その文化を守り続けたあの巨壁である……。
「イゴロノスの壁っ! 今までありがとう……さて……もう一度この街を守るよ!」
……もうこいつだけで、全部大丈夫なんじゃないかな……?
ゴーレムは腕を重厚な剣に変える。
その切っ先はは化け物を捉えるも、弾かれ巻き取られ……けれども、ゴーレムはそれを引きちぎる。
化け物のそのグロテスクな見た目は一切の焦りを感じさせず、即座に触手を元に戻し……。
その凄まじい力と力のぶつかり合いは拮抗し、更にヒートアップする……。
ゴーレムは自らが壁として見つめてきたこの街を守る為、怪物は自らの恩義を返し……道にはばかる壁を壊す為に互いを殴り合う。
そんな最中、こちら側に触手の一本が飛んでくる。
それはあまりにも素早く……気が付けば僕はそれに包まれていた……!
「!?」
それはまた、凄まじい速さで縮み……触手の化け物の口らしき物に放り込まれた。
「イーヴォ! 」
セシリアから呼ばれた気はしたものの身動きが取れない……。
僕はそのまま化け物の体内を進み、途端に広い所に出た。
[ドサアッ……!]
僕は地面らしき所に重力で叩きつけられる。
ゆっくりと立ち上がるとそこに居たのは……白い魔法使い。
その全てを捻じ曲げる白はどうやら僕を待っていたようだ。
「おお……ようやく来てくれたか。 少々手荒になってしまったが……済まないね」
「何故……お前は僕を何故さらった?」
するとターニャは猫のようにあどけなく語る。
「気が変わったんだよ。 それ以上でもそれ以下でもない」
「はあ?」
ターニャは続ける。
「……お前、戒めのくにってのは分かるか? 」
「ああ。 お前と、その仲間たちを題材にした物語だろ?」
「アレは私たちの身に起こった事実その物……あの時に私たちは全員ボスと契約を交わした」
ターニャは続ける。
「私はそれまで自分の外観、実力に自惚れていた。 ……タンタと戦って分かったよ……為す術もない程私より強い奴はいる……私がタンタにかけられた術……それは今の私にとって無くてはならない物」
「まあ……アイツはムカつくけどね。 美少女の柔肌を傷付けるなんて訳わかんないよ。まぁ……今は前より強くなれたからいいんだけど…… 」
「さて……ここからは私の話。……私には……かつて心から愛した人がいた。私はその人の見た目、内面……頭から爪の先まで全てが大好きだった」
ターニャの目からは静かに涙が零れる。
「そんな幸せの最中、私の愛する人……ノアはとある病気になった」
「体質的な病気……今でこそ魔素性敗血症って名前があるけど、当時は不治の病……だった……まあ、抗生物質も何も無かったからね……」
魔素性敗血症……血中の魔素の濃度が体質的に異様に高い、若しくは一般人でも高い状態の時に体内に細菌が入ることで起こる病気……。
魔素はほかの物に同調しやすい……体内の細菌と同じように宿主の体を蝕む……そして日和見菌にも広がりやすく、一気に身体に広がり……最後は血中の魔素が暴走して魔力を帯びる。
その為、最終的な死因は自分自身の魔法である事がほとんどだ……。
「ノアは炎魔法使い……その頃の宮廷魔法使いだった……現役の時はほんとに強かったんだよ? ……そんな彼から初めて買って貰ったのが鍔の広い真っ白な帽子だったんだ……」
「彼は病床に伏してからも懸命に私を励ましてくれた……[ターニャちゃん……君に天は二物も三物も与えてくれたじゃないか……どうか私が死んでも生きていてくれ……]ってね……ほんとに優しかった……」
「私はその度に[貴方が居ないなら、そんな物要らない……貴方も救えないような力なんてゴミ同然よ……]って返すの……その度に彼は照れくさそうに笑ってくれた……あの時以外は……」
ターニャは急に重々しく語り出す。
「私が勇者の一団として旅たつ時……彼は死んだわ……彼は灼炎魔法使い……その身をじわじわと焦がしながらね……」
「……私はね……彼が……彼の足が……手が……消えるのが……消えるのが怖かった……」
ターニャはぽたぽたと涙を垂らす……。
「……[空間魔法 カオスの絶対領域]……」
「……!?」
戦闘!?
まさか……!?
気が付けば僕は賑やかな街の中にいた。
ターニャは再び語る。
「それじゃあ、あの日の記憶を見てもらうことにするよ……」
僕はターニャに導かれるままにドアに手をかける……。
目の前には金髪のやつれた美青年、そしてまだ真っ黒な髪のターニャがそこに居た。
「貴方が居ないなら……私は……嫌よ……こんな世界……一緒に死に……ましょう?」
「甘ったれるなっ!」
「!?」
その男、ノアは上半分しか残っていないその体で懸命に声を張り上げる……。
「何を言ってるんだ! 君が……君がっ……自殺するなら私は意地でもここに今撃てる最上級の魔法を放つ! ……そして街を焼き払う……ガハッ……ガハッ……」
喀血しつつも彼は喋る。
「何言ってるの……?」
「君は綺麗なんだ……そして強いんだ……だから私は君が好きなんだ……。 ハァ……そんな君が私と心中? ハァ……私は……は許さない!」
二人のターニャは涙を流す……。
「なら……私はどうすればいいの?」
記憶の中のターニャは問う。
「自分なりに……ハァ……懸命に生きてくれ……ハァ……犬死なんて……許さない……後悔しない死を遂げてくれ……それ迄……ハァ……何年だって待っている……出来れば……私の事を……ほかの人にも私たちのようにならないように伝えてほしい……」
そう言ってノアはターニャの手を握る……。
「間違っても……ハァ……後を追うんじゃない……私はターニャちゃんに会えて……幸せな……最高な人生だった……」
ターニャは涙で顔をくしゃくしゃにしてノアの手を握る……。
もうその喉は悲しみでむせ返り、声は既に出ず、ただうんうんと首を縦に振るのみだった……。
だが、ターニャもどうにか声を出す。
「分かったよ……私は頑張るよ……世界一の……ノアが霞む程にまで強い……魔法使いになるよ……!」
「分かった……流石……私の妻だ……じゃあ……いって……らっしゃ……い……」
ノアはターニャをきつく抱擁し……事切れる……。
その顔は幸せそうだったが……何処か物寂しげだった……。
「それじゃあ……行ってきます!」
ターニャは元気にドアを開け、外へと駆け出す。
途端に幻想は崩れ、周りは怪物の体内に戻る。
僕は潤んだ瞳を擦り、繕った。
「そういうこと……人は儚いのさ……これを言いたかった……貴方とお相手に言いたかった……けれども私にはボスという存在がある……気安くは言えなかった……」
そして……ターニャは構える……その真っ白な鍔を片手に、真っ赤なグリモワールを取り出して……!
「さて……毒魔法使いっ! 私と……私たちと闘え! 彼の……魔法で……! 大魔法使いターニャの最後の戦いだっ!」
「ああ……分かった……来いっ! ターニャ!」
途端、地面が平らになり、場も円形になる。
「さあ……正々堂々……自己紹介からだっ!」
「灼炎魔法使い白の極地! ターニャ・アルバーナ ! 貴様を焼き尽くす! 」
「毒魔法使い……イーヴォ・ディーツェル! お前を……溶かさせてもらう!」
「「いざ、尋常に……勝負っ!」」
両者、激しく弾幕を展開……今、魂がぶつかる大勝負っ!
インゴットではなかった事ももあり、足元を見られはしたが……かなりまとまった金額が手に入った!
その為僕らは家に帰り、お金をきっちりと保管してから街に繰り出そうとしている所だ。
「ねえ……これからどこに行くの?」
セシリアが尋ねる。
あまり寝ていないこともあってか、いかんせん眠そうだ。
「セシリア、パフェ食べたかったんでしょ? 喫茶店にでも行こうよ」
「本当に……いいの?」
夢で一足先に食べた……なんて言ったら起こるかな……?
「もちろん! 僕も前から食べたかったから」
「やったぁ!」
セシリアは喜びを全身で表現している……跳んで、跳ねて、とても楽しそうだ。
……なんだろう……?
とても嫌な予感がする……この街にはいってからというものの、とてもじゃ無いが気が休まっていない……。
僕はセシリアのために買っておいたものを取り出し、セシリアに差し出す。
「セシリア……さっきの店でこれ買ったんだけどね……気に入ってくれるかな?」
「うおっ! リュックだ! リュックだぁ! やった! やった!」
セシリアはリュックを掲げてまた騒いだ。
気に入ってくれたようだ!
「それじゃあ早く行きましょ!」
「うん、そうだね!」
僕は家に鍵をかけ、セシリアと手を繋ぐ。
そうしてゆっくりと大通りから出たその時、
[ズドーン!]
慌てて振り向くと、その轟音は図書館から鳴っていたと分かった……否、分かってしまった……!
バラバラと図書館の残骸をまき散らすは、先程とは桁違いの大きさの触手の化け物……!
まさか……あの修道女……!
そんなことを考えていると空から、
「あぶないのじゃああああああああ!」
と、聞き覚えのある声が響く。
急いで上を見るとパズズが落ちて来ていた……。
何故だろう……理由もないが「親方ッ!」と叫びたくなってきた……。
それはとてつもない勢いのまま僕の眼前に落ち、地面に突き刺さる……。
「よいしょっ!」
セシリアがパズズの足を引っ張り、引き抜いた。
「ぶはぁ……ハァ……死ぬかと思ったわい……感謝するのじゃ龍娘……」
「お安い御用よ!」
パズズは体についた埃を払い除ける。
「あの……パズズさん? 何故あなたは上から降ってきたんです?」
「決闘に負けて吹き飛ばされたのじゃぁ……あの女子……強かったのじゃあ……」
パズズは泣きじゃくり、涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにして喚く……。
てっきり化け物に吹き飛ばされたと……まあ、母は強しって事なんだろうな……。
すると触手の化け物は蠢く……。
その巨躯からは信じられないような速さで……街を触手を使い砕く……。
刹那、凄まじいノイズ混じりの轟音が鳴り響く……。
「……あーー!あーー! マイクテストー! 聞こえてるみたいだね? よーし……」
声の主は……なんと壁番のネネ!
「誰か存じ上げませんが、街の破壊を今すぐ止めてくださーい! 止めないと武力行使しますよー!?」
化け物は返す。
その声は反響し、さながら山鳴りのようだった……。
「出来るものならやってみろ! 私たちが嘗て鬼の王に立ち向かった時のように! 人間など性根の腐ったものばかり! 貴様らなど滅びればいい!」
「そうなんだー! それならやっちゃうよー!?」
そう言うと声の主は拡声器のまま呪文を唱える。
「❮使役魔法:ゴーレムの息吹❯……土塊の怪物よ……我命に従え……!」
途端に街が揺れる……!
ゴーレムは確か土やら鉄やら色々なものを纏めて作る筈だが……足元にはレンガそして建物は石造りだったりと作り易くはありそうだけど……。
ネネの作ったゴーレムは小道を抜け、通りを駆け……噴水に集まり、屈強な巨兵と化した……。
材料は……かつて街を閉ざし、その文化を守り続けたあの巨壁である……。
「イゴロノスの壁っ! 今までありがとう……さて……もう一度この街を守るよ!」
……もうこいつだけで、全部大丈夫なんじゃないかな……?
ゴーレムは腕を重厚な剣に変える。
その切っ先はは化け物を捉えるも、弾かれ巻き取られ……けれども、ゴーレムはそれを引きちぎる。
化け物のそのグロテスクな見た目は一切の焦りを感じさせず、即座に触手を元に戻し……。
その凄まじい力と力のぶつかり合いは拮抗し、更にヒートアップする……。
ゴーレムは自らが壁として見つめてきたこの街を守る為、怪物は自らの恩義を返し……道にはばかる壁を壊す為に互いを殴り合う。
そんな最中、こちら側に触手の一本が飛んでくる。
それはあまりにも素早く……気が付けば僕はそれに包まれていた……!
「!?」
それはまた、凄まじい速さで縮み……触手の化け物の口らしき物に放り込まれた。
「イーヴォ! 」
セシリアから呼ばれた気はしたものの身動きが取れない……。
僕はそのまま化け物の体内を進み、途端に広い所に出た。
[ドサアッ……!]
僕は地面らしき所に重力で叩きつけられる。
ゆっくりと立ち上がるとそこに居たのは……白い魔法使い。
その全てを捻じ曲げる白はどうやら僕を待っていたようだ。
「おお……ようやく来てくれたか。 少々手荒になってしまったが……済まないね」
「何故……お前は僕を何故さらった?」
するとターニャは猫のようにあどけなく語る。
「気が変わったんだよ。 それ以上でもそれ以下でもない」
「はあ?」
ターニャは続ける。
「……お前、戒めのくにってのは分かるか? 」
「ああ。 お前と、その仲間たちを題材にした物語だろ?」
「アレは私たちの身に起こった事実その物……あの時に私たちは全員ボスと契約を交わした」
ターニャは続ける。
「私はそれまで自分の外観、実力に自惚れていた。 ……タンタと戦って分かったよ……為す術もない程私より強い奴はいる……私がタンタにかけられた術……それは今の私にとって無くてはならない物」
「まあ……アイツはムカつくけどね。 美少女の柔肌を傷付けるなんて訳わかんないよ。まぁ……今は前より強くなれたからいいんだけど…… 」
「さて……ここからは私の話。……私には……かつて心から愛した人がいた。私はその人の見た目、内面……頭から爪の先まで全てが大好きだった」
ターニャの目からは静かに涙が零れる。
「そんな幸せの最中、私の愛する人……ノアはとある病気になった」
「体質的な病気……今でこそ魔素性敗血症って名前があるけど、当時は不治の病……だった……まあ、抗生物質も何も無かったからね……」
魔素性敗血症……血中の魔素の濃度が体質的に異様に高い、若しくは一般人でも高い状態の時に体内に細菌が入ることで起こる病気……。
魔素はほかの物に同調しやすい……体内の細菌と同じように宿主の体を蝕む……そして日和見菌にも広がりやすく、一気に身体に広がり……最後は血中の魔素が暴走して魔力を帯びる。
その為、最終的な死因は自分自身の魔法である事がほとんどだ……。
「ノアは炎魔法使い……その頃の宮廷魔法使いだった……現役の時はほんとに強かったんだよ? ……そんな彼から初めて買って貰ったのが鍔の広い真っ白な帽子だったんだ……」
「彼は病床に伏してからも懸命に私を励ましてくれた……[ターニャちゃん……君に天は二物も三物も与えてくれたじゃないか……どうか私が死んでも生きていてくれ……]ってね……ほんとに優しかった……」
「私はその度に[貴方が居ないなら、そんな物要らない……貴方も救えないような力なんてゴミ同然よ……]って返すの……その度に彼は照れくさそうに笑ってくれた……あの時以外は……」
ターニャは急に重々しく語り出す。
「私が勇者の一団として旅たつ時……彼は死んだわ……彼は灼炎魔法使い……その身をじわじわと焦がしながらね……」
「……私はね……彼が……彼の足が……手が……消えるのが……消えるのが怖かった……」
ターニャはぽたぽたと涙を垂らす……。
「……[空間魔法 カオスの絶対領域]……」
「……!?」
戦闘!?
まさか……!?
気が付けば僕は賑やかな街の中にいた。
ターニャは再び語る。
「それじゃあ、あの日の記憶を見てもらうことにするよ……」
僕はターニャに導かれるままにドアに手をかける……。
目の前には金髪のやつれた美青年、そしてまだ真っ黒な髪のターニャがそこに居た。
「貴方が居ないなら……私は……嫌よ……こんな世界……一緒に死に……ましょう?」
「甘ったれるなっ!」
「!?」
その男、ノアは上半分しか残っていないその体で懸命に声を張り上げる……。
「何を言ってるんだ! 君が……君がっ……自殺するなら私は意地でもここに今撃てる最上級の魔法を放つ! ……そして街を焼き払う……ガハッ……ガハッ……」
喀血しつつも彼は喋る。
「何言ってるの……?」
「君は綺麗なんだ……そして強いんだ……だから私は君が好きなんだ……。 ハァ……そんな君が私と心中? ハァ……私は……は許さない!」
二人のターニャは涙を流す……。
「なら……私はどうすればいいの?」
記憶の中のターニャは問う。
「自分なりに……ハァ……懸命に生きてくれ……ハァ……犬死なんて……許さない……後悔しない死を遂げてくれ……それ迄……ハァ……何年だって待っている……出来れば……私の事を……ほかの人にも私たちのようにならないように伝えてほしい……」
そう言ってノアはターニャの手を握る……。
「間違っても……ハァ……後を追うんじゃない……私はターニャちゃんに会えて……幸せな……最高な人生だった……」
ターニャは涙で顔をくしゃくしゃにしてノアの手を握る……。
もうその喉は悲しみでむせ返り、声は既に出ず、ただうんうんと首を縦に振るのみだった……。
だが、ターニャもどうにか声を出す。
「分かったよ……私は頑張るよ……世界一の……ノアが霞む程にまで強い……魔法使いになるよ……!」
「分かった……流石……私の妻だ……じゃあ……いって……らっしゃ……い……」
ノアはターニャをきつく抱擁し……事切れる……。
その顔は幸せそうだったが……何処か物寂しげだった……。
「それじゃあ……行ってきます!」
ターニャは元気にドアを開け、外へと駆け出す。
途端に幻想は崩れ、周りは怪物の体内に戻る。
僕は潤んだ瞳を擦り、繕った。
「そういうこと……人は儚いのさ……これを言いたかった……貴方とお相手に言いたかった……けれども私にはボスという存在がある……気安くは言えなかった……」
そして……ターニャは構える……その真っ白な鍔を片手に、真っ赤なグリモワールを取り出して……!
「さて……毒魔法使いっ! 私と……私たちと闘え! 彼の……魔法で……! 大魔法使いターニャの最後の戦いだっ!」
「ああ……分かった……来いっ! ターニャ!」
途端、地面が平らになり、場も円形になる。
「さあ……正々堂々……自己紹介からだっ!」
「灼炎魔法使い白の極地! ターニャ・アルバーナ ! 貴様を焼き尽くす! 」
「毒魔法使い……イーヴォ・ディーツェル! お前を……溶かさせてもらう!」
「「いざ、尋常に……勝負っ!」」
両者、激しく弾幕を展開……今、魂がぶつかる大勝負っ!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで
ひーにゃん
ファンタジー
誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。
運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……
与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。
だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。
これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。
冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。
よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる