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五手目◆遊び駒
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「倫子も知っておる通り、余は将棋が強い!
それは将軍だからと言うことを抜きにしても、余は本当に将棋が強いと自分でも思う!
ただ、それは余が長い間、将棋に思いを込めることができた結果でしかなく、何も最初から余は将棋が強かったと言うわけではない。
お祖父様に将棋を教えてもらった最初の頃は、何度も負けた。
そして、その度に自分の考えを改めて様々な知識を吸収し今に至る。
お陰で今となっては、知っている者であろうが、知らぬ者であろうが、そんじょそこらの者になど負けるとは思えぬほどの自信と実力を付けることができた」
家治は膝を崩し、右手に持つ扇子を広げ二三度、自分の顔を扇ぎふと下の方を見ながら、考えに更ける。
「そして、そんなお祖父様に勝つための糸口を最初に授けてくれた素晴らしい人物がいたのをお前は知っておるか?
それがなぁ何を隠そう……お前だよ。
倫子。
お祖父様に連れられて何度も何度も浜御殿に通って、その度にお前はおったなぁ。
いつでも何の遊び道具もない暇そうな奥の部屋に、何をするわけでもなく一人寂しそうな顔をしていたのを覚えていおるよ。
恐らく倫子は僅か11歳にして京都から、縁もゆかりもない江戸に連れてこられたのであろう?
周りの人も土地も何もかもが知らないものばかり、そんな状態で心細く無いわけが無いものなぁ。
そんな時にな、お祖父様は変なことを言ってきたんだ」
広げた扇子を再び元に戻し、家治は再び正座をしながら上を向きため息を一つした。
彼の頭の中には、若き日の自分と吉宗の姿が広がっていたのかもしれない。
『家治やお前は昨日も余に将棋で負けたよな?
お前が余に将棋で勝てないのは、遊び駒が多いからだぞ。
攻めにも受けにも関わっていない遊び駒が多くあると言うことは、それだけ周囲が見えていないと言うことに他ならない。
それは即ち人同士の関係、これから生きていく人生など全ての事においても同様のことが言えるのだ。
今日もおったなあの娘。
あの娘とは何を話したのだ?
何も話さぬまま、今日も時を無駄に過ごしたのか?
それでは遊び駒と一緒ではないか!
この次行く時も恐らく、あの娘はあの部屋におるぞ。
あの娘もこのまま、お前の遊び駒にしておくつもりなのか?
それも良かろう、余に勝つつもりがないのであればな』
「お祖父様の眼力はさすがだと思ったよ……」
それは将軍だからと言うことを抜きにしても、余は本当に将棋が強いと自分でも思う!
ただ、それは余が長い間、将棋に思いを込めることができた結果でしかなく、何も最初から余は将棋が強かったと言うわけではない。
お祖父様に将棋を教えてもらった最初の頃は、何度も負けた。
そして、その度に自分の考えを改めて様々な知識を吸収し今に至る。
お陰で今となっては、知っている者であろうが、知らぬ者であろうが、そんじょそこらの者になど負けるとは思えぬほどの自信と実力を付けることができた」
家治は膝を崩し、右手に持つ扇子を広げ二三度、自分の顔を扇ぎふと下の方を見ながら、考えに更ける。
「そして、そんなお祖父様に勝つための糸口を最初に授けてくれた素晴らしい人物がいたのをお前は知っておるか?
それがなぁ何を隠そう……お前だよ。
倫子。
お祖父様に連れられて何度も何度も浜御殿に通って、その度にお前はおったなぁ。
いつでも何の遊び道具もない暇そうな奥の部屋に、何をするわけでもなく一人寂しそうな顔をしていたのを覚えていおるよ。
恐らく倫子は僅か11歳にして京都から、縁もゆかりもない江戸に連れてこられたのであろう?
周りの人も土地も何もかもが知らないものばかり、そんな状態で心細く無いわけが無いものなぁ。
そんな時にな、お祖父様は変なことを言ってきたんだ」
広げた扇子を再び元に戻し、家治は再び正座をしながら上を向きため息を一つした。
彼の頭の中には、若き日の自分と吉宗の姿が広がっていたのかもしれない。
『家治やお前は昨日も余に将棋で負けたよな?
お前が余に将棋で勝てないのは、遊び駒が多いからだぞ。
攻めにも受けにも関わっていない遊び駒が多くあると言うことは、それだけ周囲が見えていないと言うことに他ならない。
それは即ち人同士の関係、これから生きていく人生など全ての事においても同様のことが言えるのだ。
今日もおったなあの娘。
あの娘とは何を話したのだ?
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それでは遊び駒と一緒ではないか!
この次行く時も恐らく、あの娘はあの部屋におるぞ。
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