いろはにほへとちりぬるを……

とうるくん

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十六手目◇感想戦

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「倫子や。

 将棋で対戦が終わった後に余と対戦相手が何やら言い合いのようなことをしているのをみたことがあるだろう?

 知らんとは言わさん。
 周囲にばれないようにチラチラと余の方を気にしていたことを余は知っていいるからな。

 あれは感想戦と言ってな、どこが良かったか悪かったのかなどをな話し合っているのだ。

 決して仲が悪いわけではない。

 もしかすると『へー』と言う一言で終わってしまうかもしれんが…
 それも、将棋で強くなりたいと思ったら大切なことのひとつなのだ。

 恐らくなのだが知らなかったであろう?

 とは言っても、それも将棋だけのことだからな、倫子にはあまり興味がないことかもしれんな。

 そしてお前が知っている通り余も結構、知らんことはある

 父上から将軍職を譲う受けとき、余は正二位・内大臣に昇叙したわけだったのだが……
 正直、あの時は余は何をすれば良いのか分からなかったんだ……

 と言うのもな、父が将軍職を退いたのは大岡忠光が無くなったことが原因だったと言うのは、誰の目にも分かったとは思う。
 それで、しばらくしたのちに余が将軍となり代わりに取り仕切ることになったのではあるが、基本的なことにおいては側用人の田沼に任せてと言うことだったしなぁ…
 正直、将軍となる前と後での違いと言うのが良く分からなかった。

 だから、あの時本当ならば父上のお側に持っといた方が良かったのかと今更ながらに思ってしまうのだ。

 父上はお前も知っておる通り、あの通りだろ?

 とは言っても当時、将軍だった父上だけに城内で表だって噂をたてるものなどはおらんかった。
 だが、人の噂に戸は立てられないとは良く言ったもので……
 知らず知らずの内に色々なものがなぁ……
 そんな中で奴の訃報。

 父上は、さぞや驚いたことであろうなぁ。

 とは言っても人の命が限りがないと言うのは誰もが感じること。
 奴の事はどうすることも出来なかったのであろうなぁ。

 もしかすると父上と奴の関係というのは、ある意味では余とお前の関係に良く似ていたと言うことなのであろうか…

 人生には感想戦と言うものは存在しないんだよなぁ…」
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