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紫色のおひたし

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 匂いは、ほうれん草と同じ青菜の匂いだな。おひたしなら醤油か? 俺は調味料入れから醤油を取り出してかけた。

「よし、異世界のおひたしを食べるぞ!」

 色が紫だからか、食べるのに躊躇してしまう。美味しい物が食べたいと願ったんだ、美味いはずだ。

 パクッ。

「苦っ、だけどクセになる味だな。ほうれん草と同じベーコンと炒めても、サラダで出てきても食べれそうだ」

 これは何の野菜だ?

[ホロホロ草。こちらでは生食、スープに入れて食す、苦味のある野草です]

 ホロホロ草かぁ、クセになる野草だ。
 


 俺は熱々のチンご飯となめこのカップ味噌汁、ホロホロ草のお浸しをかっこんだ。

「最高だ!」
 
 ステータスを確認して、女神達とラインをしていて、気付けば昼飯の時間が過ぎて夕飯の時間になっていた。

 窓から見える、時計台の時刻は5時過ぎ。

「うはっ、昼飯食い損ねたぁ~もったいない!」

 日本にいた頃、一度も思ったことがない言葉が口に出て俺自身驚く。巻き込まれたことに対しては、少しムカつくが……胃腸の心配なく食事ができるのは幸せだ。

 夕飯はスフの白身の塩焼きとライ麦パン、ホロホロ草の紫色をしたスープだった。

 白身魚のスフの塩焼きは、脂が少ないサバの味。ライ麦パンは噛めば噛むほど香ばしくて、ホロホロ草のスープは葉の色が溶け紫色。

 女神食堂で食べていなかったら、飲む勇気が出なかったが。苦味がクセになった俺には、美味いスープだった。これに溶き卵があれば、また一段と上手くなるな。

「ごちそうさまでした」

「昼飯に降りてこなかったから……心配したが。その食いっぷりは嬉しいな。コレ昼飯に作ったパニーニだが、食べてくれ」

 おっさんがテーブルまで来て、もっちりしたライ麦パンのパニーニを置いた。俺がおっさんの飯が不味くて、降りてこなかったと思われた? 

(……しまった)

 ステータスを見ていて、時間がたっていたんだが、心配をかけたのはおっさんに悪かった。
 
「ありがとうございます。昼食を食べたかったんですが……長旅で(色々ありすぎて)疲れていたらしくて、気付いたらこの時間でした」

「寝てたのか! そうか、そうか。明日の朝、もっと、美味いもんを食べさせるからな」

「ほんとうですか? 楽しみにしてます」

 おっさんは豪快に笑うと、厨房へと戻っていった。俺はライ麦パンのパニーニをもらい部屋に戻り。教えてもらった隣の風呂屋で、汗を流して、ベッドでぐっくり眠った。
 
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