“絶対悪”の暗黒龍

alunam

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78話 女の戦いと ラウンド2!

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 ご注意:8000字超えました(汗)

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 『サンダーレイン』―――上位雷魔法であるサンダーボルトを雨の如く無数に降らせる広範囲戦術級魔法。使い手に付いた二つ名『雷妖精』の由来でもある。
 空間から雨雲を呼び、落雷を生み出す。その無数に降り注ぐ雷の雨を受けて耐えれる生物はモンスターと言えど限りがあり、鎧や金属を身に着けた敵程効果が増す。戦術級剣士たるユウメの切り札の一つ。
 この魔法を唱える事が出来るのならば、百や二百の数は物ともしない、対人・対魔・対物に有効な戦術級魔法の名に恥じない威力を持っている。



 初手から切り札を切っていく、それ程までに出し惜しみ出来る状況でも相手でも無い事を物語っている。現に、壁を埋め尽くしていた有象無象のゴーレム群のほとんどは黒焦げとなって瓦解している……が、その中にあって焦げ跡一つない輝きを放つ4体のゴーレムが、落雷の命中した証として硝煙だけをあげている。
 金属の光沢によって照らし出される、赤・青・緑は宝石の様に……それらより更に輝く銀の異形は真珠の様に、暴力的な落雷の雨が止んだ中を佇んでいる。

 無論これで決まるとはユウメも思ってはいない。それでも全くの無傷という事実に少しだけ自尊心が傷つけられる……だが動揺は無い、相手は魔族。人類の英雄と呼ばれた強者達が命を賭けて挑み、討ち果たせば冒険譚として語り継がれる様な敵だ。
 その陰には語られる英雄以上に、敗れていった栄光なき強者達がいる。だからこそ倒せれば伝説となる相手なのだから……

 「実測の為に直撃を受けてみましたが……やはりこの程度。ヒューマンタイプの中では上位個体の様ですが、我々『ロイヤルガード』の脅威になる確率は3%以下の模様。女王クイーンとして忠告します、大人しく投降しなさい」

 その魔族のリーダーである異形……ロイヤルガードの指揮者、クィーンは更に続ける。

 「繰り返します、大人しく投降しなさい。貴女達の抵抗は時間の無駄です。速やかに降伏しアンリ・マンユを引き渡しなさい。それが貴女達が選べる最も効率的な選択肢です」

 「お断りします。これが私達の答えです!セイントフォースバースト!」

 「ソリッドシューター!キャストオフッ!!」

 大よそ交渉する気の感じられない、唯の事実だと言わんばかりに言葉を発していた、アンリに母と呼ばれる異形……クィーンの降伏勧告に即座に、答えと一緒にオミの神聖魔法とエルナの風魔法を乗せた矢が返された。
 二つの直線が重なる場所に居るのはクィーン……だがその前に赤い巨人、ルークが巨体で割って入り、二人の放った攻撃をその身に受ける。鈍重な見た目に反して、その動きは迅速であった。
 衝撃と射撃に晒されて尚、ルビーで出来た壁の様にも見えるルークは揺らぐ事も無く立っている……が、

 「私の息がある内にお嬢様への道が開けると思うな!この身、砕けるまで主の盾と成らん!!」

 「どうやら魔法攻撃は無効化される様ですね……以前相対した魔族達よりも更に強力な魔力抵抗を持っているのですか……」

 オミの言う通り、魔法の衝撃はかき消されたかの如く赤い巨人の前で消えていった……だが、エルナの放った矢はしっかりと巨人の腹に刺さり、その赤い装甲に矢羽の飾りを付けていた。
 
 「つまり有効なのは物理攻撃で抵抗を突破して、其処に魔力を込めた必殺の一撃を叩きこむ……って所かな?」

 「アンコウ様に聞かされていた特徴からも間違いないかと。等級による強弱の違いはあれど、魔族に共通する特徴の様ですね」
 
 「うー……私が親方様だったら、その抵抗ごとあの無礼者を消滅させてしまえるのでしょうが……今は出来ない事をねだる時でも自分の未熟を恥じる時でもありませんね」

 ユウメの推測をオミが肯定する。エルナはそれ以外の方法を望んでいるが、それを実行するには魔力を超えた破壊の力が必要だ。そんな人外の方法を実行出来る男は現在、反対側の棟にいる。

 よってユウメの提案するやり方を実行するのが、人間種族が魔族に対する唯一の有効攻撃手段と言っても過言では無い……
 即ち、魔族の強力なマジックバリアを物理攻撃で突破し、魔族の強靭な肉体を傷付け、魔族の驚異的な回復力を上回る一撃を与える。……理論上は可能だが、実行するのは限りなく不可能に近いとも言えるだろう。
 それ程までに生物としての格が違うのだ、それ程までに英雄が英雄足りえた理由は困難なのだ。力及ばず倒れて逝った強者達を笑う事など、決して出来はしない……
 
 だけど……と、ユウメは自嘲する。
困った事に、自分が地面に転がされる事に慣れてしまっている事に。笑われても仕方の無い事だと……
 挑んで、負けて、地面へと倒された日々の記憶……それでも孤独で自問自答を繰り返していた時とは大違いだ。それでも、あの時があるからこそ、無駄に高かった戦術級のプライドを捨てる事が出来た。
 今こうして切り札と呼べる手が通じないと結論付けられても『相手が相手だから仕方ない』で済んでるし、『矢が刺さるなら斬り裂ける』と安心材料も出来た。物理も魔法も効かないとかいうふざけた相手ではないのだ。
 少なくとも剣も魔法も効かないデタラメな……自分の事を『チート』と言って憚らない龍よりもマシな相手だと。
 英雄達の成し得た偉業に挑戦すると言うには……女勇者の心は気楽だった。




 「それじゃあ、やる事は決まったね……」

 「ええ、まずは邪魔な輩を排除して……」

 「あの無礼者に私達3人の力を思い知らせてやりましょう!」

 手段と目的の決まった3人がそれぞれの敵目掛けて駆け出す!だが、どこまでも対峙するロイヤルガート達は悠然と立っているだけだ……

 「……愚かな。力量の差を理解出来ず、忠告を無視し、策も無く突撃とは……地上の猿共の知能は理解不能。ならば唯、その身を魔族の為に役立てなさい……Bf4」

 そう言ったクィーンの言葉に対して、初めて反応をみせたビショップが動き出した。
 青いローブを纏った青いマネキン……全身を青一色で塗った2メートルの人型ゴーレムは両手を前に向けると、その掌には円筒形の砲身が生まれた。
 向けられたユウメは構う事無くビショップへと突っ込んでいく。

 二つの砲を手に持つ姿は、彼女の夫の戦闘スタイルを彷彿とさせる姿だが、それ故に予測しやすい。銃はその特性上、砲身から直線で飛んで来るのだから。
 
 彼女の予想通り、独特な発射音と共に実体の無いエネルギー弾の連射がユウメ目掛けて襲ってくる……だが、一度放たれた金色の矢は怯むことなく弾雨の中を、躱し、弾き、斬り裂き、ビショップ目掛け突き進む。


 「Ke3、Rfg6からg3」

 更に淡々と紡がれるクィーンの言葉によって、緑の四足獣ゴーレム……ナイトがオミに、ルークがエルナへと迫る。

 狼に似た大型の肉食獣ゴーレムであるナイトは、その見た目通り瞬発力を発揮し縦横無尽のフェイントを混ぜつつ獲物へと襲い掛かる!
 だが、主人の命令を受けた緑の猟犬が狩ろうとする獲物は、肉体強度だけなら魔族にすら匹敵する強靭さを持つハイオークだ。唯、喰われるのを待つだけの家畜では無い。
 盾を構え、襲い来る狼を押し返す様は、赤頭巾を被った狩人の如くである。


 対照的に、その巨体に物を言わせ真っすぐと赤い戦車が突撃して来るのを、舞う様に翻弄し続けながら矢を撃ち出していくダークエルフ……
 右へ左へと躱し、一矢一刺しで戦車の装甲を穿っていく。その姿は闘牛士の如く華麗で、見る者の眼を惹き付ける。


 それぞれが互角か、それ以上に有利に事を進めている。
ロイヤルガードの……クィーンは別にして、各々が伯爵級デーモンに相当するスペックを誇るはずのロイヤルガードの性能をもってしても、現状は芳しくない事に当のクィーンが少しばかりの驚きを見せた。

 「測定した以上の数値が予測範囲をわずかに超えている……?成る程、それが身の程を弁えない猿の浅知恵ですか……それならば」

 その言葉を残してクィーンの姿がかき消えた!
否、四足の獣以上の縦横無尽さで、高速戦車以上の直進で、撃ち出された弾丸以上の速度で、ロイヤルガードの首魁は動いたのだった!それだけで……この戦場という盤面全てを駆け巡るには十分だった。

 「Qxf4、Qxe3、Qxg3……」

 唯、確認するかの如く口に出して作業をこなしていく。そこには何の感情も感動も無い……己の部下に命令した様に、己自身に命令する。
 しかし冷徹な作業の始まりは、唯々三人を……嫌、クィーンの立場からならば三匹の猿を無力化していった。

 上位魔族である伯爵級……それらを圧倒する程の力を持った英雄に匹敵する人間達。
 そんな彼女達ですら、侯爵級であるクィーンの前では等しく無力な猿に過ぎないのかもしれない……

 その侯爵級デーモンの持つ超スピード故に、言葉の終わりと同時に完了した作業……ユウメは名刀の如き輝きを放つ銀の手刀で右肩を切られ、オミは金属の拳に風を超える速度が乗った嵐の如き一撃で吹き飛ばされ、エルナはクイーンの手の甲に出現した砲身から撃ち出されたエネルギー弾によって動けなくなっている。

 達人とも呼べる彼女達が呻き声をあげる間もなく倒された……最早、悪魔の仕業としか思えない残酷な現実。
 当然だろう……故に人々は彼等を「魔族」と呼び、古から語り継ぎ、畏れたのだから……
 


 ――――だからこそ……圧倒的に生物としての力が違っても、例え何度打ち倒され敗れたとしても……その度に立ち上がり、立ち向かう事を恐れない者を人々はこう呼んだ……

 『勇者』と――――



 「腕を斬り飛ばすプランが……不確定要素を排除出来るだけの出力はあったはず……まだイレギュラーが残っていた……?」

 「……なるべく私にも分かる言葉で話してくれるかな……ここに来てからずっと、何となくこんな意味なのかな?って言葉ばっかり飛び交ってて、それこそ理解不能なんだよね……」

 先程よりも確実に動揺が見られるクィーンと、右肩を押さえるユウメ……
 魔法剣を持つユウメの右腕は流れ出る血で染まっていくが、オミには遠く及ばない回復魔法で応急処置をする。

 「圧倒的実力差を見せつけられて尚、その現状を理解出来ていないかの様な自信……貴女のそのボロボロの牙をへし折ればイレギュラーも消えるのでしょうか……」

 「殺さずに無力化しよう……なんて考えの女王様に自信に関して云々言われたくないわね!」

 ユウメの理想もクィーンを無力化してアンリの想いを聞かせた後、謝罪の一言でも言わせるつもりであったはずなのだが……完全に自分の事は棚にあげて言い返している。
 しかし言葉は勝気だが、彼女の右肩の傷は浅くない……そして彼女の持つ魔法剣は、クィーンの言う通り、攻撃を防いだ時に入ったヒビが亀裂となって、辛うじて繋がっているだけのボロボロの状態であった。
 最早、次の攻撃を凌ぐだけの耐久度は無い……

 「ユウメちゃん、だめーーーーっ!」

 「見てなさいアンリ!どっちがアナタのお母さんに相応しいか……お母さんは、お母さんじゃないなんて言う奴なんかに負けないんだから!」

 「その呆れる程の根拠のない自信には敬服します……ですが、不確定要素は完全消去するのみ……消えなさい、イレギュラー」

 母を心配する娘の声は歌うのを止め、叫びとなって室内に響き渡った……だが両者は止まる事なく、片や迅雷の速度で、片や魔性の速度でお互いの距離を詰めていく。
 圧倒的速度差を誇るクイーンに対して、負傷した片腕を引き摺る様に進むユウメ……銀の煌めきが放たれる手刀に対して、魔法回路に決定的亀裂が入り、ショートした線から漏れる魔力の光が火花の様に散っている魔法剣。

 訪れる未来は、当然の結果をもたらした――――




 鋼を切り裂く右手の手刀で振り抜かれ弾かれた魔法剣はヒビの入った部分から叩き折られ、辛うじて繋がっていた剣先は半ばからユウメの左後方へと飛ばされていく……
 牙をへし折られたユウメに、クイーンの左手刀が彼女の首目掛けて無慈悲に振り下ろされた!





 「電磁拘束エレクトロバインド!」

 「む、これは……」

 ユウメの喉元へと到達寸前、クイーンの手刀がその動きを止める!
 折れた魔法剣から伸びる雷の鞭……それが触手の様にクイーンの腕に絡み付き、死神の一撃を防いだのであった!
 磁力によって拘束された『現象の枷』は、物理や腕力では抜け出す事が出来ない。
 強力なマジックバリアを持つクイーンに魔法は効かないが、剥き出しの魔力回路を直接クイーンの装甲に接触させる事によってバリアを貫通した効果を得られた結果である。

 偶然か、必然か、ただ言える事はユウメの卓越した戦闘センスが、訪れる未来の最悪を回避した。絶体絶命の瞬間で、天才的とも言える選択を直感でやってのける……それが英雄の条件だと言わんばかりに。

 「愚かな、片腕を封じた所で結果は変わりません。牙は折りました、次はその命を手折ります。」

 そう……残されたクイーンの右手、それもまた死神の刃であった。再び必殺の一撃が振り下ろされる……だがっ!

 「牙が折られても、私には!アイツ・・・から貰った爪があるのよッ!!!」

 ――――剣戟の一閃!
魔法剣が折られ飛ばされた時と対称するかの如く、クイーンの右手がクイーンの右後方へと斬り飛ばされた!
 ユウメの左手にあるのは龍爪のカタナ。銀腕の手刀を跳ね返し、鈍く輝く刀身が逆手に持たれ抜刀されていた。

 神も魔も滅ぼす龍の爪……人を超越する魔族の天敵、暗黒龍の爪。
それを刀身に抱いたドラゴンクロウソード、組み込まれし光魔石魔力回路の回復効果が傷付いたユウメに剣を振るう力を与えたのであった。


 
 ユウメがエレクトロバインドの拘束を解いて、一旦距離を取る為に後方に飛び退くと、さしものクイーンと言えど、右腕の重量を失いバランスを崩し膝を付いた。
 追撃に移る為の体力と魔力は、肩迄も上がらない右腕、血を失った身体には無い。

 「これでちょっとはアンリの話を聞く気になったかな?脅威を感じない生き物にだって意思もあれば意地もあるのよ!」

 ……だが気力だけは漲っている。気力も振り絞れば更なる一撃を与えられたかもしれないが、それでも良くて相打ちだ。娘の前で負ける姿を……ましてや母親二人の共倒れなど……大切なアンリに見せる訳にはいかない。
 どこまでも熱く、どこまでも冷静に今のユウメは己を制御している。

 「魔力合金アマルガムボディを切り裂く武器……ここにもイレギュラーが……」

 一方のクイーンは今、己が膝付いている状況を解析している。どこまでも冷徹にマシーンの如く!
 どこまでも対象的な二人の対峙は、小さな娘によって終わりを告げる。


 「もうやめよ?みんながいたいのは…もうやだよ……」

 「アンリ!?来ちゃ駄目!」

 結界を解き母二人の元へと駆け寄ろうとするアンリ、幾ら聡明で聞き分けが良いとは言え、子供に取ってはこれ以上大好きな母親同士が傷つくのは耐えられる事では無かった。
 ユウメの制止の声でも止まらないアンリは……一体どちらに向かって駆けて行こうとしているのかは分からない。

 「情にかられて戦闘中に隙を見せるなど……やはり理解に苦しみます。コールオーダー:ビショップ、ナイト、ルーク」

 刹那の隙とは言え、冷静さを欠いたユウメに冷徹なクイーンの命令を受けた三色の影が迫る!
 背後には立ち上がったクイーン!四方を囲まれたユウメに逃げ場は無い……赤い巨影は直進で、緑の獣影は左右に振れながら、青い人影は銃口を向けるハンターの如く駆けながら獲物を仕留めんと襲い掛かる!

 「やめてーーーーーっ!!」

 幼女の悲痛な叫びが室内に響き渡る……が、それを聞き届ける影は存在しない。
 三つの影が重なる様に、ユウメの居た場所を埋め尽くしている。それぞれの影が放った攻撃で、舞い上がった硝煙がゆっくりと晴れていく……






 「私達を無視するのはキチンとトドメを刺してからにして欲しいですね…!」

 其処には龍角の大盾を構えたオミが、三影の全ての攻撃からユウメを守っていた。

 「心の臓を貫くのでは無く、気絶で捕らえようとした事を後悔させてやる!」

 そのオミを援護する様に、膝立ちで弓を構え口の端から血を流すエルナ……ショック性エネルギー弾の気絶から耐える為に、舌を噛み切り意識を繋いで放った龍矢が、3体のロイヤルガードの脚部に刺さっている。

 勢いを殺されたとは言え三つの影を受け止めたオミ。
高速で動く三つの影の脚部を正確に射抜いたエルナ。
 どちらが欠けてもユウメを救う事は出来なかったであろう……一つ一つなら魔族とは比べるべくもないが、連携・協力し、その力を何倍にも出来る。
 伯爵級の力を持つとは言え、意思無き傀儡として操られるだけの駒である3体のゴーレムには不可能な事であった……



 だが忘れてはならない、自身をクイーンと呼ぶ者もまた、己自身すらを駒の一つとして扱う事を。ロイヤルガードの第一優先事項はパンドラを地上へと送り返すこと……それはつまりアンリとパンドラの確保にあると!

 「想定外のイレギュラーがありましたが、これで王手チェックメイトです」

 全ては指し手の布石であったのか……斬り飛ばされた右腕が浮かび上がった!腕そのものが意思を持つかの如く、一個の生物としてアンリへと迫る!
 まるで弾丸の勢いで射出された銀腕は、クイーンと対峙するユウメ。ビショップ・ルーク・ナイトを抑え込むオミでは止める事は出来ない……

 「させるか!お嬢様には指一本触れさせない!」

 エルナの宣言と共に弓から放たれた3連の矢、寸分違わず飛来する銀腕を撃ち落とさんと迎え撃つ!

 「無駄な事を、これで詰みです」

 だが、一直線にアンリへと向かっていた軌道が途中で弧を描き、遠隔コントロールされているかの如く矢を避けて再びアンリへと迫る!

 「やらせるかあぁぁぁ!!」

 気合を振り絞ったエルナがコンポジットボウを投げ捨て、龍爪のショートソードを抜き放ち、痺れる体に鞭打って銀腕とアンリの間へと立ち塞がる!
 迫り来る弾丸を撃ち落とす剣技は彼女には無い……命に変えても主人アンリを守る!決死の覚悟しかエルナに残された術は無かった。

 「例えこの身が貫かれようと!お嬢様には届かせない!!」

 「愚かな……無駄に命を散らす必要などありはしないのに、理解不能」

 「「エルナ!」」

 「エルナちゃん!だめええぇぇぇっ!!」

 不退転の意思と、憐憫れんびんにも似た吐露、姉達からの焦燥と幼き主人の悲痛な叫びが重なり、広大な室内に鳴り響いた……






 やがて訪れた静寂の中で、奇妙な物体だけが浮いていた。
 直径50センチ程の球体……最も基本的な役割を果たす機能しか持たない『ポーン』と呼ばれる個体。
 それが体当たりでクイーンの銀腕を叩き落とし、エルナの危機を救った……本来なら白い球体、金属然とした銀色の翼を持つはずの姿は、黒い球体に漆黒の翼をしていた。

 ユウメのサンダーレインで焼き焦げた色では無い!暗黒に染まったその姿は、ここに居るはずのない男を連想させた!
 
 「……待たせたな!」

 暗黒のポーンから発せられた声は間違いなく、その男……暗黒龍アンコウの声を発していた!




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 大変お待たせしております
お気に入り100超え、並びにファンタジー大賞への500票以上もの投票、誠にありがとうございます!
 10月頭にアップする予定がもう11月とか嘘やろ!?

 更新頻度を上げるべく指の練習を始めました。もしもしで三千から四千字書ける様になったら少しはマシになる(はず)かと……
 
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