“絶対悪”の暗黒龍

alunam

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第60話 ハイエルフとダークエルフと

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 俺達は冒険者ギルドの一室…豪華な調度品等が並んでいるのを見ると応接室かな?に案内された
 係の人にドアを開けて貰い中に入ると、そこには二人の女エルフがいた

 一人は種族:ハイエルフ、透き通るような肌と金髪、スラッとした長い手足、スレンダーな体型で緑のドレスを着ている
 顔は文句なしに美人なんだろう……切れ長の眼、高い鼻筋、色素の薄い形のいい唇……まるで精巧なマネキンの様だ、生気を感じさせない美しさだ

 そのハイエルフの背後に控える様に立つのがダークエルフ。こちらは銀髪・褐色とエルナと同じ特徴だが……エルナとの大きな違いがある、彼女のバストは豊満であった……!
 エルナが子猫なら、このダークエルフは女豹だ。しなやかで肉感的な肢体を革のボンテージに包み、要所要所を武装している
 顔の印象も同様、子猫の様なつぶらな瞳のエルナに対して彼女は肉食獣の瞳……精悍でキリッとした意志が垣間見える。エルナも10年したら、こんな大人の顔つき身体つきになるのだろうか……
 我が家のエンゲル係数の大半がどこに消えているのか分からないが、将来が楽しみである

 どうやらエルナの知り合いの様だ、彼女のエルナを見る目がまるで妹を見ているかの様な目になっている。エルナも彼女を見て、声を上げそうになったのを我慢している。同郷のダークエルフの様であるが、二人とも今は場を弁えて辛抱しているみたいだ


 「初めまして、来るのが遅れて申し訳ありませんでした。私はセントラル所属の武官でハイエルフのБδξと申します。こちらはダークエルフのτη¢……私の補佐になります」

 「よろしくお願いします、自分はアンコウと申しまして……」

 自己紹介がてらユウメとオミとエルナとアンリを紹介していく……エルナをエルナと紹介した時、ダークエルフのお姉さんの顔に驚きの色が出たが、スグにキリッとした表情に戻った
 その後は二・三の世間話をして本題が切り出された
 
 「この度は我等が悩みであった、湖畔のダンジョン討伐の栄誉を表彰し、報酬の品は何を望まれるかを相談しに参りました。望まれる物によっては、ダンジョンからの拾得物を我等が女王に献上して頂く事になりますが……あなた方は何を望まれますか?」

 「自分達の望みは、最高位解析スキル所持者の情報の開示、又その紹介をして頂ければと……足りるかは分かりませんが、入手したダンジョンコアは献上して構いません」

 「それはこちらとしても有り難い提案ですね。本音を言えば、どう切り出そうかと迷っていた所でした……ダンジョンコアを提出して頂けるなら、こちらは協力を惜しむ事はありません。後日、正式に我等が女王の居城である天空ダンジョン内部にて、表彰式と同時に紹介状を授与しましょう」

 「ダンジョンコアは今、この場所で提出すれば?」

 「それは表彰式の時に、我等が女王への献上の儀の折に……私共も、まだ最高位解析スキル持ちの所在とリストを作成せねばなりません。お恥ずかしながら、私は関知せぬ事なのでまだハッキリとした事が言えず申し訳ありません……冒険者の方々なら、武器や防具や財宝等を要求される事が多いと聞いたもので私が参った所存なのですが」

 「ああ、それは確かに畑違いの要求をしてしまった様ですね……」

 こちらからの謝罪も笑顔で答えてくれた。笑う顔は少女の様で、マネキンの様だった美に急に温かみが宿った感じがする
 少しドキッとするが、俺の隣には美人ハイエルフにも劣らぬ美人の嫁がいるので涼しい顔で対応出来ている……ちょっと、この空間の美女・美少女率の高さが凄いと思うけど大人の対応が出来ていると思う……多分
 



 その後のやり取りはスムーズそのものだった。心配していたセントラルへの伝手もダンジョン討伐で解決したし、紹介状にプラスして世界樹の木材も提供して貰える運びになったので至れりつくせりだ
 暇つぶしのつもりが、事態の好転っぷりに感謝せねばなるまい。女王への謁見は今から一週間後……許可証を貰ってから更に四日後という事になる。また日が空いてしまったが、問題はほぼ解決してしまった。後は、協力者に会ってアヴェスタ問題に専念するのみだ!

 そういった訳で俺達のやり取りは終わったので……

 「ああ……良かった!会いたかったよ、バド!良く無事でいてくれたね!」

 「シーディス姉さんもお元気そうで!もう二度と会えないかと思っていた所に……何故、セントラルの武官補佐官に?」

 新芽バド苗木シーディスか……名前よりもあだ名みたいなもんだな、俺でも分かるわ


 抱き合って再会を喜ぶ二人の涙、それ以上の水を差すのは野暮ってもんだろう。しばらく二人だけの時間を取らせる
 ハイエルフの武官さんも、何も言わない所を見ると補佐官を理解しているいい上司なのだろう。この人の対応は理知的で優雅だ、遅れた事に対する謝罪の一礼にすら気品を感じたしな

 「良かったわね、文官と武官。余り例の無い、ダンジョン討伐功績の処理をどっちがするかで揉めるなんて下らない時間を取られたけど……私達が担当になったのは運命だったようね」

 「はっ!ありがとうございます!討伐員の中にダークエルフがいると聞いて、もしやと思った私の為に引き受けて下さって……あなたの補佐を出来る事は私の喜びです!」

 「気にしなくていいわよ、うるさい文官の言い訳を聞きたくなかっただけだから……有能な補佐官もいる事ですしね」

 エルナにとってのアンリの様に、このダークエルフにとってハイエルフが主人になる様だ
 

 話によると、攻め滅ぼされ故郷を失ない、奴隷同然だったダークエルフ達は、武官のトップ……この国の将軍である、名前は相変わらず分かんないけど『月光の金狼』が二つ名のハイビースト……狼の獣人族に拾われる事になった
 最初は内外から反発もあったが、その度量の大きさ・出自ではなく実力で重用される人事等でダークエルフ達もセントラルも黙らせた。選民思想な文官のエリート達とは根本的に仲が悪いのだけは珠に傷だが、それも実力主義故の軋轢からであるそうだ

 後、事務処理が苦手で当てにならないと副官でもあるハイエルフが愚痴っている……耳が痛い……


 「月光の金狼ですか……叔父上の仇とは言え……やはり敵ながら見事な傑物なのですね……」

 「そうだ……長年の怨敵であり、私達の英雄を討った仇敵でもあったが……今では、仕えるべき主が仕えるに相応しい御方だよ。あんたも出会った様だね?」

 「はい……あの時の悲しい別れから……一人逃げる事しか出来なかった私が……この様な幸運に巡り合えたのも全て叔父のお蔭であり、ここに居られる方々のお蔭です!」

 俺達を紹介するエルナの誇らしげな表情である事この上ないな……だったら俺も胸を張って、謙遜しないで堂々としておくべきだろう

 「私からも礼を言わせて欲しい……バド…じゃないですね、エルナは私にとっても一番年の近い妹みたいな娘でして……年端も行かないこの子が無事で居られて、尚且つダンジョン討伐なんて実績で凱旋して帰って来てくれたんです……本当にありがとうございます」

 「どうか頭をお上げ下さい、エルナは私達にとっても妹。御礼を言われる事は何もありません」

 「そうです、こうしてあなたと出会えたことも神の御導き。感謝なら運命神へ捧げて、私達は今後の友誼を図るべきです!」

 シーディスさんと呼ばせて貰う事になったダークエルフに、ユウメとオミが答える。長身な彼女達よりも、5センチ程高いので副官さんもシーディスさんも175センチってところか?
 エルフ種は長身だって聞くし、エルナも大きくなるんだろうな。今は俺から見たら中学生位だが……

 「祈りなんて生まれてこの方、265年間した事はありませんが……すべての事に感謝したい位に、今日は良い日です!」

 ……一番年が近いと聞いて2歳か3歳差位かと思ったら、まさかの250年差だったとは……やっぱファンタジーは桁が違うな……
 

 

 最終確認で話を詰めた俺達は、部屋を出て別れた
もっとシーディスさんと二人で話したい事もあるだろうから「部屋でも取って外泊してきていいぞ」って言っても「お嬢様から離れる等、滅相も御座いません!」と忠義を新たにしたエルナに一蹴されてしまった……
 「これからゆっくりと語り合えばいいんですから……」とも言ってたエルナは、年相応の顔をしていたのだけは見逃さなかったけどな





 「なぁ、エルナ……もういいんじゃないか?」

 「何をでしょうか、親方様?」

 「それ、俺を様付けで呼ぶの。オミもだけど、俺は別に何て呼ばれても気にしないし」

 「う~ん、やはり私としてはお仕えする御方を呼び捨てにするのは抵抗が……ああ、でも来年には『旦那様』と呼ばせて頂きますし、やはり今のままがいいですね~」

 「だ、旦那様ですか//////憧れます……いえ、あの、私もやはりお嬢様と親方様が呼び慣れているのもありますし……まだこのままでご容赦を」

 「では、私達の様付けを止めるのはどう?シ-ディスさんに接していた時の様にしてくれると嬉しいから、私からもそうするべきよね」

 オミの人生設計では決定事項の様である。エルナも俺は駄目だったが、ユウメの提案には満更では無い様子で……

 「う……では、ユウメ姉さん……オミ姉さん……//////」

 「うん、エルナ。これからもよろしくね!」

 「こ、これは中々の破壊力を持っていますね//////エルナ、何でしたらお姉ちゃんでもいいですよ?」

 「いいな~俺達二人はフラれちゃったぞ、アンリ。慰めてくれるか?」

 「ん?わかった、よしよし……」 

 女同士の距離感が縮まる中、よく分かってないけど俺を小さな手で撫でてくれるアンリ
 不幸な別れもあれば、幸運な出会いもある。俺にもよく分かる……俺もあの時に人化出来なかったら、今頃はどうなっていたのだろうか?……ま、この幸せな空気の中では考えるだけ無駄な事か!



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地面は揺れてますが、作者が飛び跳ねているからではありません。今後も引き続きご愛顧の程よろしくお願いします。

 只今、web保存で新しいタイトルを上げておりますがこの作品と同じ世界観設定になっております
 なろうにて掲載しています、アル中のダメ人間を面白く書けたらなと思っておりますが……まずは、これを完結させないとね~
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