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61~70話
70a、メイド長はご主人様の嗜好をわかっていない1
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私がこの屋敷にやってきたのは、ガリュース様が5歳になられた頃でした。
真っ赤な瞳のガリュース様がお生まれになったことで迷信やその魔力の強さを恐れた使用人が続々と職を辞し、その補充にとご縁をいただくこととなりました。
初めてガリュース様と対面した時、5歳の子供を前に、例に漏れず私も足が竦みました。
魔族は魔力の扱いに長けることから魔力そのものにも敏感であり、瞳を見れば表面上の色に出た赤の濃さだけでなく、その奥に内包された魔力の大きさを朧気ながら感じとることができるのです。
ガリュース様を前にして、その鮮烈な瞳と空気ごと押し返してくるような圧倒的な魔力量に、この子の機嫌一つで命を奪われるのではとの恐怖すら覚えました。
それでも、歳の近い子供を持つ私にはただ、幼くして母親から引き離されたガリュース様が哀れに思えてならなかったのです。
ガリュース様のお世話係を申しつかり部屋の清掃に入った際に、一度だけ、カーテンの影に隠れるようにして庭を眺めているお姿を目にしてしまいました。
眼下に広がる庭のテーブルセットでは、奥様がお茶を嗜まれています。
見上げられた時視界に入ってしまわないよう身を潜めながら、それでも母親に焦がれる気持ちは隠せず。
カーテンに隠れてそっと母親を眺める小さな後ろ姿が、何とも痛ましく、何の力にもなれない自分の不甲斐なさにきりきりと胸が締め付けられたのをよく覚えています。
真っ赤な瞳のガリュース様がお生まれになったことで迷信やその魔力の強さを恐れた使用人が続々と職を辞し、その補充にとご縁をいただくこととなりました。
初めてガリュース様と対面した時、5歳の子供を前に、例に漏れず私も足が竦みました。
魔族は魔力の扱いに長けることから魔力そのものにも敏感であり、瞳を見れば表面上の色に出た赤の濃さだけでなく、その奥に内包された魔力の大きさを朧気ながら感じとることができるのです。
ガリュース様を前にして、その鮮烈な瞳と空気ごと押し返してくるような圧倒的な魔力量に、この子の機嫌一つで命を奪われるのではとの恐怖すら覚えました。
それでも、歳の近い子供を持つ私にはただ、幼くして母親から引き離されたガリュース様が哀れに思えてならなかったのです。
ガリュース様のお世話係を申しつかり部屋の清掃に入った際に、一度だけ、カーテンの影に隠れるようにして庭を眺めているお姿を目にしてしまいました。
眼下に広がる庭のテーブルセットでは、奥様がお茶を嗜まれています。
見上げられた時視界に入ってしまわないよう身を潜めながら、それでも母親に焦がれる気持ちは隠せず。
カーテンに隠れてそっと母親を眺める小さな後ろ姿が、何とも痛ましく、何の力にもなれない自分の不甲斐なさにきりきりと胸が締め付けられたのをよく覚えています。
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