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1~10話
6b、お断りします
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ワゴンごとグレニスの元へ戻っておかわりを手渡すと、用は済んだとばかりにすぐさま抱きつき直す。
グレニスの方もすっかり習慣化してしまったのか、空いた左手が半ば無意識に私を抱きしめ返していた。
頭上でごくごくと喉が鳴るのを聞くともなしに聞きながら、深く香りを吸い込む。
すぅぅぅぅぅっ
野性的な香りが鼻腔を撫でながら体内に落ち、吸い上げるほどにじわじわと身体中に浸透していく。
なんだかとても安心するような、なのに落ち着かない気持ちになるような。心地よい矛盾に身を委ね、うっとりと極上の香りを享受する。
こんなに密着して存分に香りを嗅いでいるというのに、まだ足りない気がするから不思議だ。
この香りのすべてを、余すところなく体内に取り込んでしまいたい。
———そういえば幼い頃、使い古された革の匂いが好きで好きで嗅ぐだけでは飽き足らず、お父様愛用の革鞄を噛って怒られたことがあったような……。
言い訳をさせてもらうとするならば、口内に含んだ物は鼻の裏側から前へと香りが抜けて、また格別の味わいがあるのだ。
え? 言い訳になってないって??
……グレニスを噛ったら、やっぱり怒られるのだろうか……。怒られるのだろうな……。
「———ぷはっ、これは飲みやすくていいな。明日からもこれと同じ物を持ってきてくれ。塩はもう少し足してもいいかもしれない」
噛りつく想像をされているとも知らず、グレニスは満足そうだ。
グレニスの方もすっかり習慣化してしまったのか、空いた左手が半ば無意識に私を抱きしめ返していた。
頭上でごくごくと喉が鳴るのを聞くともなしに聞きながら、深く香りを吸い込む。
すぅぅぅぅぅっ
野性的な香りが鼻腔を撫でながら体内に落ち、吸い上げるほどにじわじわと身体中に浸透していく。
なんだかとても安心するような、なのに落ち着かない気持ちになるような。心地よい矛盾に身を委ね、うっとりと極上の香りを享受する。
こんなに密着して存分に香りを嗅いでいるというのに、まだ足りない気がするから不思議だ。
この香りのすべてを、余すところなく体内に取り込んでしまいたい。
———そういえば幼い頃、使い古された革の匂いが好きで好きで嗅ぐだけでは飽き足らず、お父様愛用の革鞄を噛って怒られたことがあったような……。
言い訳をさせてもらうとするならば、口内に含んだ物は鼻の裏側から前へと香りが抜けて、また格別の味わいがあるのだ。
え? 言い訳になってないって??
……グレニスを噛ったら、やっぱり怒られるのだろうか……。怒られるのだろうな……。
「———ぷはっ、これは飲みやすくていいな。明日からもこれと同じ物を持ってきてくれ。塩はもう少し足してもいいかもしれない」
噛りつく想像をされているとも知らず、グレニスは満足そうだ。
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