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11~20話
15e、私のソースだったのに
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「俺が誘ったんだ、一緒に正門から戻って構わないんだぞ?」
「ここでいいです。その……裏門からの方が、使用人棟にも近いので」
「そうか」
先に降りたグレニスにエスコートされて馬車を降りる。
グレニスと連れ立って正門から入ろうものなら、使用人仲間に大注目を浴びること必至。そんなのは御免だ。
馬車で送ってくれるというお誘いさえ一度は断ったのだけれど、この暗い中辻馬車を探してうろつくのは危険だと言って、却下された。
断るのを断られるとは一体。
この場には御者のトールさんもいるけれど、トールさんは喋っている姿を見たことがないほど無口だから私のこともペラペラ口外したりはしないはずだ。
「今日はありがとうございました。お食事もとっても美味しかったです」
「礼には及ばない」
挨拶も終えて、あとは馬車が去っていくのを見送ろうと、目の前に立つグレニスを見上げる。
グレニスも、じっと私を見下ろす。
「……」
「……」
「……?」
「ほら、早く門に入れ。無事の帰宅を見届けなくては帰れん」
「え、あっ、申し訳ありません」
グレニスも私を見送ってくれるつもりだったようだ。
慌てて外出用に借りていた鍵を取り出し、門横の通用口を開ける。
「……おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
扉をくぐってガチャンと施錠すれば、少々あって馬車の走り出す音が聞こえた。
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