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21~30話
21c、吸われた分も吸い返すしかない
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「あひたは、街れ待ち合わせにしまふぇんか?」
火妖日の鍛練後。グレニスが明日のお出かけについて言及したので、思いきって提案してみる。
「街で? なぜわざわざそんなことを? ここから一緒に馬車で向かえばいい」
「それはそうなんれふけど……」
うぅ、うまい言い訳が思い付かない。
グレニスと二人で正門からお出かけだなんて、さあ噂してくれと言っているようなものだ。
グレニスがどんなつもりで誘ってくれたのかはわからないけれど、そんな大々的に誤解を生むような真似はするべきでないと思う。
「用意に時間がかかろうと気にしなくていい。前回のように裏門へ迎えにいけばいいか?」
訓練見学に行った日の帰り、「裏門からの方が使用人棟に近いので」と言った私の言葉を覚えていてくれたらしい。
裏門であれば、先に門を出てちょっと離れた場所で待っていればどうにかなりそうだ。
「はい……じゃあ、裏門れお願いしまふ」
「ああ」
答えて、グレニスの武骨な指がふにふにと頬をくすぐる。
これがなんの催促なのかを知ってしまっている私は、せめてもの抵抗にぎゅっと強くしがみついて胸に顔を押しつけた。
「……」
グレニスの指が諦めたように頬から離れ、ほっとしたのも束の間。
頭頂部に、何かが押し当てられる感触。
「?」
すん……
髪内部の温まった空気が失われ、微かに地肌がひんやりとして……。
「っあー!! 旦那ふぁま、私のこと嗅いれまふね!?」
「たまには俺から嗅いだっていいだろう」
グレニスが悪びれもせず答えるのに合わせ、温かな吐息が前髪を揺らす。
「旦那ふぁまは匂いに興味なんてないれしょう!」
「だがリヴェリーには興味がある」
「うぐっ……!」
なんという殺し文句だ。
こんな風に誤解を与えるようなことばかり言っていては、惚れられても文句は言えないと思うけれど!?
「あひたは、街れ待ち合わせにしまふぇんか?」
火妖日の鍛練後。グレニスが明日のお出かけについて言及したので、思いきって提案してみる。
「街で? なぜわざわざそんなことを? ここから一緒に馬車で向かえばいい」
「それはそうなんれふけど……」
うぅ、うまい言い訳が思い付かない。
グレニスと二人で正門からお出かけだなんて、さあ噂してくれと言っているようなものだ。
グレニスがどんなつもりで誘ってくれたのかはわからないけれど、そんな大々的に誤解を生むような真似はするべきでないと思う。
「用意に時間がかかろうと気にしなくていい。前回のように裏門へ迎えにいけばいいか?」
訓練見学に行った日の帰り、「裏門からの方が使用人棟に近いので」と言った私の言葉を覚えていてくれたらしい。
裏門であれば、先に門を出てちょっと離れた場所で待っていればどうにかなりそうだ。
「はい……じゃあ、裏門れお願いしまふ」
「ああ」
答えて、グレニスの武骨な指がふにふにと頬をくすぐる。
これがなんの催促なのかを知ってしまっている私は、せめてもの抵抗にぎゅっと強くしがみついて胸に顔を押しつけた。
「……」
グレニスの指が諦めたように頬から離れ、ほっとしたのも束の間。
頭頂部に、何かが押し当てられる感触。
「?」
すん……
髪内部の温まった空気が失われ、微かに地肌がひんやりとして……。
「っあー!! 旦那ふぁま、私のこと嗅いれまふね!?」
「たまには俺から嗅いだっていいだろう」
グレニスが悪びれもせず答えるのに合わせ、温かな吐息が前髪を揺らす。
「旦那ふぁまは匂いに興味なんてないれしょう!」
「だがリヴェリーには興味がある」
「うぐっ……!」
なんという殺し文句だ。
こんな風に誤解を与えるようなことばかり言っていては、惚れられても文句は言えないと思うけれど!?
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