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41~50話
48d、名も知らぬ婚約者
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うっ……。先ほどは勢いで言ってしまったけれど、改めて問われると恥ずかしい。
「……はい、そうです」
赤らむ顔を俯けつつ消え入りそうな声で答えれば、身体中の空気を吐き出したかのような盛大なため息が降った。
「っはぁぁぁぁ……」
グレニスは私を抱きしめたまま、脱力したようにごろんとソファに寝そべる。
ソファが狭いので、長い脚のすべては収まっていないけれど。
「あ、あの、グレン……?」
仰向けになったグレニスの身体に乗り上げてしまい慌てて下りようとしても、力強い腕がそれを許さない。
「馬を乗り換えながら飛ばして、この四日間ろくに寝ていないんだ……。少し休ませてくれ……」
「! そんな無茶をしたんですか!?」
グレニスの屋敷からここまでは馬車で順調に行って八日、馬でも恐らく五、六日はかかる。そこを一日以上縮めるということは、その分の休憩や睡眠時間を削って移動に費やしたということになる。
「修道院に入られては、二度と取り戻せないからな……。リヴ、もう俺から逃げるな……」
グレニスの声が眠気に掠れ、徐々に緩慢になっていく。
厚い胸に頬を寄せれば、とくとくと落ち着いた鼓動が聞こえてくる。
「はい……。もう二度と逃げません」
「ふっ……たとえどこに逃げようと、必ず捕まえるけどな…………」
少しして、すぅすぅと規則的な寝息が聞こえてきた。
「……はい、そうです」
赤らむ顔を俯けつつ消え入りそうな声で答えれば、身体中の空気を吐き出したかのような盛大なため息が降った。
「っはぁぁぁぁ……」
グレニスは私を抱きしめたまま、脱力したようにごろんとソファに寝そべる。
ソファが狭いので、長い脚のすべては収まっていないけれど。
「あ、あの、グレン……?」
仰向けになったグレニスの身体に乗り上げてしまい慌てて下りようとしても、力強い腕がそれを許さない。
「馬を乗り換えながら飛ばして、この四日間ろくに寝ていないんだ……。少し休ませてくれ……」
「! そんな無茶をしたんですか!?」
グレニスの屋敷からここまでは馬車で順調に行って八日、馬でも恐らく五、六日はかかる。そこを一日以上縮めるということは、その分の休憩や睡眠時間を削って移動に費やしたということになる。
「修道院に入られては、二度と取り戻せないからな……。リヴ、もう俺から逃げるな……」
グレニスの声が眠気に掠れ、徐々に緩慢になっていく。
厚い胸に頬を寄せれば、とくとくと落ち着いた鼓動が聞こえてくる。
「はい……。もう二度と逃げません」
「ふっ……たとえどこに逃げようと、必ず捕まえるけどな…………」
少しして、すぅすぅと規則的な寝息が聞こえてきた。
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