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51~60話
56c、人を見る目
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「父と母の間には長らく子どもができなかった。恐らくユベルは、そこに望みをかけたんだ」
子のいないダリオが隠居すれば、その頃にはまだ働き盛りの年齢である自分が家督を継げる。
騎士の道は諦めてしまったけれど、ジェルム家を継いで初めて兄と対等となり、亡き父に認められた気持ちになれるだろうと。
「しかし俺が生まれ、状況が変わった」
正式な跡継ぎが生まれたことで、家督を継ぐというユベルの積年の願いは打ち砕かれた。
さらにその邪魔者は、ユベルが手放した騎士の道を順調に進んでみせ、ついにはダリオの後任として騎士団長の座にまで収まったのだ。
「俺の存在が、ユベルの憎しみを助長させてしまったんだ……。今回の件も恐らく、俺の信用失墜を狙ったものだろう」
事件を解決できず麻薬の蔓延を許し続ければ、王都の治安は悪化し、治安維持の主導者である騎士団長がその責を問われることになる。
そこまでしてグレニスを……。
「そんなっ! そんなの……っ! グレンは何も悪くないじゃないですか!!」
勝手に逆恨みして! 麻薬を流布して関係のない人たちまで罪に巻き込んでおいて!
自分だけが被害者のような顔をして、グレニスを陥れようとするなんて!
寂しげな顔をするグレニスの心までも抱きしめたくて、太い首筋にぎゅうぎゅうと抱きつく。
グレニスは何も悪くない。
騎士団長の座だって、決して息子だからというだけで継げるような甘いものではなかったはずだ。
子のいないダリオが隠居すれば、その頃にはまだ働き盛りの年齢である自分が家督を継げる。
騎士の道は諦めてしまったけれど、ジェルム家を継いで初めて兄と対等となり、亡き父に認められた気持ちになれるだろうと。
「しかし俺が生まれ、状況が変わった」
正式な跡継ぎが生まれたことで、家督を継ぐというユベルの積年の願いは打ち砕かれた。
さらにその邪魔者は、ユベルが手放した騎士の道を順調に進んでみせ、ついにはダリオの後任として騎士団長の座にまで収まったのだ。
「俺の存在が、ユベルの憎しみを助長させてしまったんだ……。今回の件も恐らく、俺の信用失墜を狙ったものだろう」
事件を解決できず麻薬の蔓延を許し続ければ、王都の治安は悪化し、治安維持の主導者である騎士団長がその責を問われることになる。
そこまでしてグレニスを……。
「そんなっ! そんなの……っ! グレンは何も悪くないじゃないですか!!」
勝手に逆恨みして! 麻薬を流布して関係のない人たちまで罪に巻き込んでおいて!
自分だけが被害者のような顔をして、グレニスを陥れようとするなんて!
寂しげな顔をするグレニスの心までも抱きしめたくて、太い首筋にぎゅうぎゅうと抱きつく。
グレニスは何も悪くない。
騎士団長の座だって、決して息子だからというだけで継げるような甘いものではなかったはずだ。
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