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61~最終話
エピローグ1c、お楽しみはこれから
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「奥様、寝衣はいかがなさいますか?」
「寝衣……?」
『本当にこれが?』と目で問えば、『当然』と頷きが返ってくる。
白、赤、黒。
繊細なレースや刺繍が施されていて素敵だとは思うけれど、どれも妙に生地が薄くて頼りない。
「んー、いつものでいいわ。クローゼットのチェストに入ってるはずだから」
「そうは参りません」
きっぱりと却下される。
私に選択権があったはずでは……。
身一つで主寝室へと押し込まれ、やっぱり着替え直す! と引き返すより早く、パタンと鼻先で戸が閉まる。
薄明かりのなか恐る恐る振り返れば、グレニスはヘッドボードを背に、くつろいだ様子でベッドに座っていた。
———濃紺のバスローブ姿で。
「!」
「リヴ、いつまでそんな所にいるんだ? ほら、こっちに来い」
そんな……、そんなまさか……。
信じがたい気持ちで二度三度瞬いても、見えている光景は変わらない。
自分の支度に気を取られている間に、なんてこと……。
「グレン……、その格好……」
ふらふらと歩を進める。
「うん?」
大きなベッドに乗り上げ、グレニスへとにじり寄り。
当然のように開かれた腕に飛び込むと、首筋に鼻を押し当てた。
すぅぅぅぅぅぅっ
「———やっふぁり! お風呂入っひゃったんれふね!!?」
グレニスからは、さっぱりとしたミントの石鹸の香りがする。なんてこと!
甲冑でよく蒸らされた汗の香りを楽しみにしていたのに! こんなのってない! あんまりだ!!
「おい……おいおい、泣くなよ? 今が一度目じゃない。午後に甲冑を脱いだ時点で、すでに湯浴みしていたからな? あんな汗だくの状態で披露宴に行けるわけないだろう」
首筋から顔を剥がして覗き込まれ、グレニスの親指がそっと目尻をなぞる。
「そんなぁ……」
「寝衣……?」
『本当にこれが?』と目で問えば、『当然』と頷きが返ってくる。
白、赤、黒。
繊細なレースや刺繍が施されていて素敵だとは思うけれど、どれも妙に生地が薄くて頼りない。
「んー、いつものでいいわ。クローゼットのチェストに入ってるはずだから」
「そうは参りません」
きっぱりと却下される。
私に選択権があったはずでは……。
身一つで主寝室へと押し込まれ、やっぱり着替え直す! と引き返すより早く、パタンと鼻先で戸が閉まる。
薄明かりのなか恐る恐る振り返れば、グレニスはヘッドボードを背に、くつろいだ様子でベッドに座っていた。
———濃紺のバスローブ姿で。
「!」
「リヴ、いつまでそんな所にいるんだ? ほら、こっちに来い」
そんな……、そんなまさか……。
信じがたい気持ちで二度三度瞬いても、見えている光景は変わらない。
自分の支度に気を取られている間に、なんてこと……。
「グレン……、その格好……」
ふらふらと歩を進める。
「うん?」
大きなベッドに乗り上げ、グレニスへとにじり寄り。
当然のように開かれた腕に飛び込むと、首筋に鼻を押し当てた。
すぅぅぅぅぅぅっ
「———やっふぁり! お風呂入っひゃったんれふね!!?」
グレニスからは、さっぱりとしたミントの石鹸の香りがする。なんてこと!
甲冑でよく蒸らされた汗の香りを楽しみにしていたのに! こんなのってない! あんまりだ!!
「おい……おいおい、泣くなよ? 今が一度目じゃない。午後に甲冑を脱いだ時点で、すでに湯浴みしていたからな? あんな汗だくの状態で披露宴に行けるわけないだろう」
首筋から顔を剥がして覗き込まれ、グレニスの親指がそっと目尻をなぞる。
「そんなぁ……」
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