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61~最終話

エピローグ1d、お楽しみはこれから

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「これでも香油のたぐいは使わずにおいたんだぞ?」

 言われてみれば……グレニスからは石鹸の香りはしても、他の強い香りはなかった。
 グレニスなりに、私へと配慮してくれていたらしい。

「うぅ……大好き」

 再びぎゅっと首筋にしがみつく。
 ミント混じりの石鹸の香りの奥に、大好きな大好きなグレニスの香り。
 蒸れた汗の香りなら、明日また甲冑を嗅がせてもらえばいい。

 グレニスも私の首筋に鼻を寄せると、すんすんと鼻を鳴らした。

「……リヴは薔薇の香りがするな。花の妖精にでもなったようだ」

 首元にかかった髪をそっと流して、露になった首筋に熱い唇が触れる。
 離れたかと思えばペロリと舐められ、同時にガウン越しの脇腹を撫で上げられて。
 反射的にバッと身体を離すと、ガウンの合わせを握りしめた。

「———こっ、この部屋! 随分模様替えしたんですねっ! 全然違う部屋みたいでびっくりしました!」

「…………ああ、元々俺用の寝室にしていたからな。壁紙からすべて一新し、ベッドも二人用の物を用意した」

 そんな大改装を今日一日でやってのけるとは。
 知らない間に着々と手筈を整えてあったのだろう。わぁ、すごい!

 二人用と言われたベッドは、五人だって余裕で寝られそうなほどの広さがある。
 グレニスの私室と同じ深いグリーン系だった壁紙は、温かみのあるバーガンディー深い赤紫に。
 調度品もどっしりと重厚な物から、緩やかな曲線が美しい飴色の物に変わり、今まではなかった大きな鏡台も据えられている。

「温もりを感じる部屋ですね」

「……気に入ったか?」

「はい、とっても!」

 余計な物のないグレニスらしい寝室も好きだったけれど、私と二人で過ごす空間として、こんなにも穏やかで温かな部屋にしつらえてくれたことが嬉しい。

「それはよかった」

 こつりと額を合わせられ、吐息の交わる距離。
 どちらからともなく、引かれ合うようにして唇が重なった。
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