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3章

4.お仕事と雨《ジョザイア目線》

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今日はいい日。
朝からアイリーン先生と話せたし、
触れたし、撫でてもらえた。

ああ、幸せ‥

もっと僕に触れて欲しい。
アイリーン先生、大好き。


そのためにも、もっと頑張らなきゃ。
アイリーン先生を職場のアスコット精神病棟まで送った後、僕は仕事に取り掛かる。

まあ、ホントの仕事とは別だけど
やることは一緒。

殺せばいいだけ。


僕が歩き出すと携帯のバイブ音がした。
画面には《クロード・ウェイン》と表示されている。僕の部下だ。仕事はできるけど、
口煩いから、嫌い。

仕方なく電話にでる、
「なんか用?今忙しいんだけど。」

『昨日お願いした殺しの依頼、
お忘れですか?マクベイン様。』

「ああ、あったね。そんなの。
でも僕、個人的な用で忙しいから。

僕が出所した途端、容疑のかかってた
殺人が止まるとか変でしょ?」

『ああ、先生へのプレゼント‥でしたっけ?
では、それのついでで結構です。
別に人は選ばないでしょう?』

「たしかに、そいつを
ちょうちょにすればいいか」

『ええ、それが良いかと。

あと、余計かもしれませんが‥

あまりアイリーン・タウンゼントには
お会いにならないほうが良いですよ。
より、仕事を優先させた方が‥』

僕は眉間にしわを寄せる。

「‥あ?‥?
‥黙って車もってきて。
10秒待ってあげる。」

『ちょっそんなっ‥!』

僕はワザと携帯を床に落として、
踏みつけた。
バキッといい音が鳴る。

すると18秒後、猛スピードで、
黒塗りの大きな車が目の前に止まる。

僕はそれの広い後部座席に乗り込み、
運転席に居るクロードに尋ねる。

「‥なにがなのかな?」

僕はクロードの頭を髪の毛ごと強く掴み、
顔を向けさせる。


「いや‥あの‥」


クロードは、僕の地雷を踏んだことを
理解しているらしい。だが、もう遅い


「僕には、彼女だけなんだよ。

アイリーンだけが僕のすべて‥‥

彼女との時間は僕の人生の中でも
最高の瞬間なんだ。

それを外野が、『そんなこと』か‥

‥まぁいいや、クロード、眼鏡外して。」


クロードは顔を引きつらせ、
冷や汗をかきながら素直に眼鏡を外した。


次の瞬間、

僕はクロードの顔面を思いっ切り、
ハンドルに叩きつけた。  

「がっ!!っうゔっっ!!??」

何度も繰り返し、繰り返しクロードを痛めつける。バキッと変な音がしてクラクションが何回も鳴る。

ハンドルが変形し、
クロードは苦痛に悶え苦悶の表情を浮かべる、いい気味だ。

クロードが余計なことを言うからこうなるんだ。反省して欲しいよ、まったく。

鈍い音がして、

鼻が折れた。
歯が折れた。

クロードの汚い血が
フロントガラスに飛び散る。


「がっっ‥!!くぶっ!」


僕はひとまず気が済んだので、
座席にもたれかかる。


「くろーどー!!
はやく車だしてよ。
そのために眼鏡割らないであげたんだから」

「うぐっ‥お気遣い、ありがとうございます‥

あなたって人は‥
いつキレるかわかったもんじゃないですね。」

「嫌いなら殺してもいいよ。
上司も部下も関係ないんだから、」

「そんなことしません。なんだかんだ私、
マクベイン様が好きなので。」

「え‥クロードってMなの‥?」

「違います。」


クロードは
血まみれの顔を拭き眼鏡をかけ直し、
車を走らせる。


‥‥

あーあ‥アイリーン先生が居ないと、
なんかムシャクシャしちゃうよ。
楽しくない。苦しい。悲しい。
僕、アイリーン先生以外はみんな嫌い。

僕を異常者呼ばわりして、
部下も教師も兄も両親も、
僕を恐れるか、憎むばかりだった。

両親は特に酷かった。

仕事ばかりでかまってくれないから
僕が取引先の人を包丁で刺し殺したら、
精神病棟に入れられた。


異常者として、
拘束されて過ごすことになった。


僕はただ二人と一緒に居たかっただけなのに
二人が僕にかまわないのが悪いのに。
なんでこんなこと、されなきゃいけないの?


そこでも僕は一人ぼっち、


誰も僕を受け入れてはくれない。


けど、先生は違った。 
僕を受け入れて、微笑んでくれた。
僕のこと好きだって言ってくれた。
抱き締めてくれた。

二人でいる時間はほんとうに幸せで‥


はやく貴女と二人きりになりたい、
他の奴なんていらない。
貴女だけがいればいい。
ずっーと、ずっーと、一緒にいよう。

もうどこにも行かせない。
僕のそばにいなきゃ許さない。


‥‥‥そう考えながら僕は車の窓を眺めた。
外は雨が降っていた。


「ねぇ、クロード‥‥

病院に戻ってアイリーン先生を
抱き締めてきていい?」


「彼女が好きなのはわかりましたから
お願いします。仕事してください。」

「ちぇっ…」

そんな会話をしながら、殺害対象のいる
クラブへと車は走って行った。







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