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第十二話 魔王討伐時の真実

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 遠い目をしながら、聖女のしでかしを告げたユーリに、ジグは驚くことしかできなかった。
 ジグは、聖女のことを思い出しながら、魔王討伐の最終決戦の時のことを思い出すのだ。
 
 理子は、魔王軍の根城を目の前にして、こう言って走りだったのだ。
 
「よし。それじゃ、私の役目はここまでってことで。私、四天王最弱の推しを救いに行かないといけないから、行くわ~」

 軽い調子でそう言った理子は、あっという間に戦火に紛れて見えなくなっていた。
 もともと、理子は戦力としてではなく、一種のアドバイザーのような役目で旅に同行していたため、いなくなっても戦力的に問題はなかったのだ。
 呆気に取られながらも、理子に教えられた通りに根城の中を進んでいくと、これまた教えられた通りの展開が待っていたのだ。
 そこには、四天王と名乗る魔王の直属の配下がいたのだ。
 しかし、四天王というには一人足りず、ジグたちは首を傾げるのだった。
 それでも、戦いは待ってはくれなかったのだ。
 四天王(一人足りない)は、物凄い勢いでジグたちに襲い掛かってきたのだ。
 事前に、ユーリとジグ以外で四天王を抑えることになっていたため、ここでオーエンたちと別れることになるのだ。
 
 ジグとユーリは、二人で魔王がいると教えられた、城の庭園に移動していた。
 そこで、事前に理子から言われていた手順通りに、ジグが素早く魔法をかけていくのだ。
 出会い頭に、弱体の魔法を放ってから、敢えて高揚の魔法を魔王にかけるのだ。そして、高揚の所為で、魔法がうまく発動できなくなっている魔王に、さらに速度ダウンの魔法をかけるのだ。
 その間に、ユーリが闇魔法で攻撃をかけ続ける。
 しかし、魔王は闇魔法をすべて吸収してしまうのだ。
 だが、それも計算のうちだったのだ。魔法のうまく発動できない魔王は、魔力過多で勝手にオーバーヒートしてしまうのだ。
 体内で、魔力を暴発させているところで、ユーリが剣で止めを刺す。
 
 理子から指示されたときは、こんな方法で倒せるのかと誰もが不安に思っていたのに、あっという間に魔王は崩れ落ちていたのだ。
 
 それは、勝利を確信したユーリとジグが気を緩めた一瞬のことだった。
 魔王の体が、塵になって崩れ落ちるその時、魔王は、最後の力で呪いを発動させていたのだ。
 それは、すぐ近くにいたユーリに命中したのだ。
 
 呪いが体に触れた瞬間、ユーリは抑えきれないほどの凶暴な心に支配されていたのだ。
 近くにいたジグに襲い掛かったユーリだったが、微かに理性が残っていたのか、荒い息を繰り返すだけで、ジグに傷をつけることはなかったのだ。
 
 ユーリに床に押し倒されていたジグは、理子に出会った時のことを何故か思い出していたのだ。
 


「うわ~。かわいい~。もしここかR18同人ゲームの方だと、同行した魔法使いって、ユーリに犯されるシナリオがあったはず? あれ、オーエンだっけ?」


 ユーリに押し倒されながら、ジグは理解したのだ。あの時、理子が言っていたのはこのことだったのだと。
 つまり、ユーリの状態を治すには、体を差し出せばいいのだと考えたジグは、苦しそうなユーリを抱きしめていたのだ。
 
「殿下……。大丈夫です。大丈夫ですから」

 それから起こったことについて、ジグはあまり覚えていなかった。
 それでも、薄ぼんやりとした意識の中で、体を引き裂かれるような痛みだけは、しっかりと感じたのだ。
 そして、必死にユーリの呪いを解くために解除呪文を口にし続けたのだ。
 
 どのくらいそうしていたのか、ジグの持っている膨大な魔力が尽きたころ、ユーリは静かな寝息を立てていたのだ。
 そして、魔王の呪いを解いた影響なのか、ジグの髪と目はその後少しずつ変化していき、今の灰色の髪と右目だけが菫色に変化していくこととなるのだ。
 
 体中の痛みを堪えて、ユーリの身を綺麗にして、服を着せたジグは、お腹の奥の熱に淡い期待をするのだ。
 
「殿下は、国に戻ったら、聖女様を探し出して結婚されるんだろうな……。でも、わたしには、この子がいる……。きっと、ここに宿ってくれるはず……。うん。逃げなくちゃ……。この子のことが知られたら、きっと引き離されてしまう……」

 ユーリのモノを沢山注がれた自覚のあるジグは、子供が出来ていることをなんとなく確信したのだ。
 だから、この宝だけを持って、逃げようとこの時決めたのだ。
 
 それが、後々、ややこしいことになるなど、想像もしなかったのだ。
 
 
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