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ファイルⅡ:誘拐事件
#10
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「これ、今から三年前の西小学校で、読書感想文最優秀賞を取った人に贈られたやつだよね?確か、毎年素材やデザインが少しずつ違ってるはず。
それは、まぁ置いておいて。本題はその小学生が地元の新聞に小さくだが名前だけ紹介される。本来なら見逃してしまうくらい小さい見出しだけど、私は見逃さなくて、それを覚えていた。
最優秀賞は毎年そんなに出るものじゃないし、景品も学年ごとに違う。その年は確か、六、四、一年生からそれぞれ一人ずつ出ていた。でも、そのスクールバッグを貰えるのは、六年生だけ。だったら必然的に答えに辿りつけるよね?柏木楓さん。」
「凄い…。」
その小さい体から出された解答と説明は、あまりにも現実的ではない。確かに小六の頃、読書感想文で最優秀賞を取り、そのバッグを景品として貰った。新聞と言っても、小さい子供新聞とかそんなレベルの規模の大きい物でもない。
仮に、それを覚えていたとしても、それがあたしの名前に結び付くとは考えにくい。あたし自信もそれなりに頭が良い部類だと思っていたが、彼女は文字通り『別格』だ。
「それで良いの?って聞いたのは、君があの公園に居たのには、何か理由があるんじゃないかと思ってね?」
彼がコーヒーを啜りながら彼女の質問を説明した。
「大丈夫、長くなる様なら俺たちが送るから。」
この人たちには全てお見通しだと思った。多分今の言葉も、あたしが無意識のうちに時計を見る癖でも見抜かれたのだろう。あたしは観念し、全て話した。と言っても話すことなんて、ただあたしを理解する人なんて、居ないとだけいえば良いだけだったから、それ程時間はかからなかった。
「そっか。じゃぁこれから、ここに来ると良い。」
彼がそう言った。
「ここなら、あの公園からもそんなに離れてないし、君の家も近いはず。さらに言えば、駅からは近いが、人通りがある道ではない。誰かに見られる心配もないと思うよ。」
さらに彼女が『安全だし。』と付け足す。
「ここって…。それはそれで良いんですか?」
あたしはバーテンダー風の男の男に訊ねた。周りを見るにここは何かしらの事務所であることは確かだ。それに何か機密情報とかあれば危険だし、あたしの様な存在は尚更危ない。
「彼がそう言うんでしたら、大丈夫なんじゃないですか?」
「でも…。」
「ここは、ホームズって言う探偵事務所。君みたいに困っている人を助ける、専門的な所。だから君が困っているなら、居ても問題ないのさ。」
彼がまたコーヒーを啜った。
「流石にお酒は出せないけど、粗方飲み物も揃ってるし、好きな物あったらここから摘まんでいいし。」
彼女が一番端っこのテーブルに行き、スナック菓子を一つ摘まみ頬張った。遠目で見えないが、チョコレートや飴もあるようだった。
「お前は食べ過ぎ。」
「糖分は取らなきゃ!」
彼のぼそりと呟いた言葉が聞こえたのか、彼女が大声で返した。それが少し面白かった。
そして、彼女の後ろの入り口のドアが開いた。入ってきたのは、彼が着ていたのとは少し違う、ブランド物のミリタリージャケットを羽織った、長身の男が入ってきた。手にはコンビニ袋を提げていた。それを彼女に渡し、彼の元に近寄ってきた。
「今戻りました。すみません、助太刀できず…。」
「これくらい、どうって事ないよ。それより、もう少ししたら、アマキと一緒に送って行って差し上げな。」
「了解しました。」
その後、男はあのモニターだらけのテーブルに行き、腰を下ろした。それに続く様に、アマキさんもモニター前に座った。
「あの娘も今はあんなんだけど、君と一緒だったんだよ。」
彼がいつの間にか、あたしの座っていたテーブル席に移動していた。
「一緒だった?」
「あの頭の良さだから、親を含めた周囲から、忌み嫌われて、虐められて、捨てられた。
その隣の男、リューって言うんだけど、あいつも昔大変だったみたいで、気付けば人を傷つけるだけの、凶器と化した存在になってた。」
懐かしそうに話しているが、あたしには聞いていられなかった。でも、今彼等は、楽しそうだった。
それは、まぁ置いておいて。本題はその小学生が地元の新聞に小さくだが名前だけ紹介される。本来なら見逃してしまうくらい小さい見出しだけど、私は見逃さなくて、それを覚えていた。
最優秀賞は毎年そんなに出るものじゃないし、景品も学年ごとに違う。その年は確か、六、四、一年生からそれぞれ一人ずつ出ていた。でも、そのスクールバッグを貰えるのは、六年生だけ。だったら必然的に答えに辿りつけるよね?柏木楓さん。」
「凄い…。」
その小さい体から出された解答と説明は、あまりにも現実的ではない。確かに小六の頃、読書感想文で最優秀賞を取り、そのバッグを景品として貰った。新聞と言っても、小さい子供新聞とかそんなレベルの規模の大きい物でもない。
仮に、それを覚えていたとしても、それがあたしの名前に結び付くとは考えにくい。あたし自信もそれなりに頭が良い部類だと思っていたが、彼女は文字通り『別格』だ。
「それで良いの?って聞いたのは、君があの公園に居たのには、何か理由があるんじゃないかと思ってね?」
彼がコーヒーを啜りながら彼女の質問を説明した。
「大丈夫、長くなる様なら俺たちが送るから。」
この人たちには全てお見通しだと思った。多分今の言葉も、あたしが無意識のうちに時計を見る癖でも見抜かれたのだろう。あたしは観念し、全て話した。と言っても話すことなんて、ただあたしを理解する人なんて、居ないとだけいえば良いだけだったから、それ程時間はかからなかった。
「そっか。じゃぁこれから、ここに来ると良い。」
彼がそう言った。
「ここなら、あの公園からもそんなに離れてないし、君の家も近いはず。さらに言えば、駅からは近いが、人通りがある道ではない。誰かに見られる心配もないと思うよ。」
さらに彼女が『安全だし。』と付け足す。
「ここって…。それはそれで良いんですか?」
あたしはバーテンダー風の男の男に訊ねた。周りを見るにここは何かしらの事務所であることは確かだ。それに何か機密情報とかあれば危険だし、あたしの様な存在は尚更危ない。
「彼がそう言うんでしたら、大丈夫なんじゃないですか?」
「でも…。」
「ここは、ホームズって言う探偵事務所。君みたいに困っている人を助ける、専門的な所。だから君が困っているなら、居ても問題ないのさ。」
彼がまたコーヒーを啜った。
「流石にお酒は出せないけど、粗方飲み物も揃ってるし、好きな物あったらここから摘まんでいいし。」
彼女が一番端っこのテーブルに行き、スナック菓子を一つ摘まみ頬張った。遠目で見えないが、チョコレートや飴もあるようだった。
「お前は食べ過ぎ。」
「糖分は取らなきゃ!」
彼のぼそりと呟いた言葉が聞こえたのか、彼女が大声で返した。それが少し面白かった。
そして、彼女の後ろの入り口のドアが開いた。入ってきたのは、彼が着ていたのとは少し違う、ブランド物のミリタリージャケットを羽織った、長身の男が入ってきた。手にはコンビニ袋を提げていた。それを彼女に渡し、彼の元に近寄ってきた。
「今戻りました。すみません、助太刀できず…。」
「これくらい、どうって事ないよ。それより、もう少ししたら、アマキと一緒に送って行って差し上げな。」
「了解しました。」
その後、男はあのモニターだらけのテーブルに行き、腰を下ろした。それに続く様に、アマキさんもモニター前に座った。
「あの娘も今はあんなんだけど、君と一緒だったんだよ。」
彼がいつの間にか、あたしの座っていたテーブル席に移動していた。
「一緒だった?」
「あの頭の良さだから、親を含めた周囲から、忌み嫌われて、虐められて、捨てられた。
その隣の男、リューって言うんだけど、あいつも昔大変だったみたいで、気付けば人を傷つけるだけの、凶器と化した存在になってた。」
懐かしそうに話しているが、あたしには聞いていられなかった。でも、今彼等は、楽しそうだった。
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