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3 知りたくなかった秘密(マルガレータ視点)

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(マルガレータ視点)

 私はアルフォンズ様を心から愛していた。オリエンタルな漆黒の髪と黒曜石の瞳は、精悍な顔立ちを見事に引き立たせている。

 なにより彼は騎士団長で誰よりも正義感が強く、ストイックに剣術を極めた男性だった。美しいだけの軟弱で傲慢な貴公子が多いなかで、彼だけは違う。鳩の群れに鷹がいる、と思った。

 私のお母様は国王陛下が溺愛する妹で、コンスタンティンは従兄弟にあたる。あいつは、私によくまとわりついてくる、とても迷惑な子だった。

「憧れています。大好きなんです。その輝くブロンドに空を切り取ったような澄んだ瞳。その美貌は王太子妃に相応しい。とピッタリでしょう?」
 
 ナルシストの従兄弟は自分が大好きな人間だ。

(自分で自分のことを麗しいなんて言う? 気持ち悪いわ。ほんと、無理!!)


 お母様に「コンスタンティンにいつも言い寄られて困ってしまうわ」と愚痴ったら、殿国王陛下に断固抗議してくださる。

 「マルガレータには、すでに密かにお慕いしている方がおりますのよ? 王太子殿下と無理に婚約なんかさせたら、もうお兄様とは思いませんわ! お兄様の×○×や△○△も王妃殿下に申し上げます。王妃殿下は私の親友ですもの。今すぐにでも・・・・・・」

「待て、待て。マルガレータが望まない限り、コンスタンティンの思い通りにはさせないから安心しなさい」

 お母様は国王陛下に溺愛されているうえに、最強の切り札をいくつか持っているらしい。そのお陰で、私は執拗なあいつの求愛から逃れることができた。
 まぁ、定期的に愛の告白はされたけれど、全て無視。恋い焦がれていたのはアルフォンズ様一人なのですもの!




 騎士団の模擬試合があるたびに、手づくりサンドイッチを持参し、必死になってアピールした。

(お願い、私を見て)

 好きになってほしかった。愛してほしかった。私と同じ熱量で抱きしめてほしい。

 その甲斐あって私達は婚約し、お付き合いを始める。けれど、私はリトラー侯爵家を訪れる度に違和感を感じた。

 アルフォンズ様がエメリーンに優しすぎて、その向ける眼差しがとても気になる。まるで私がアルフォンズ様を見つめる眼差しに似ていたから・・・・・・まさか?

 私はリトラー家の家系図を入手し、国王陛下である伯父様にも探りをいれた。

「リトラー家のエメリーンは養女だ。リトラー侯爵夫人の妹が亡くなる前に生んだ子さ。専属執事と駆け落ちして出来た子だから、肩身の狭い思いをしないようにと、実子として届け出ることを許可したのだよ」

 予期していた事実だけれどショックだった。血の繋がらない妹を愛する兄?・・・・・・お芝居ではよく題材にされるけれど、私の愛する男性がそれだとは・・・・・・

 彼にはすでに一番愛する女性がいたのよ。彼女の名前はエメリーン・リトラー。アルフォンズ様と同じ黒髪黒眼だけれど、小動物のような愛らしい子だ。

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