(完)浮気ぐらいで騒ぐな?ーーそれを貴方が言うのですか?

青空一夏

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それぞれの末路

16 コンラッドへの報復刑のその後

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ꕤ୭* 第三者視点 



 メロン公爵家の近くに淀んだ沼がある。そこに奇妙なものが浮いていると噂が広まった。ウジだらけの動物と思われる死体が、なぜか木のボートを合わせたなかに押し込められて、強烈な悪臭を放っているという話だ。

 興味本位で見に行った者は、あれは人間の死体だと言い合った。そうして、その噂は一人歩きし近隣諸国にまで広まった。特に惨殺された女性の遺体が多く発見された後だけに、これは性犯罪を犯した犯人が罰せられたんだと関連して考える者も少なくなかった。

 王家が意図的に流した噂かもしれないこの話は、表向きの刑とは違う報復刑がされることの可能性を印象づけた。

「斬首刑では償えないほどの罪を犯した者は、闇の死刑執行人から残酷な刑を受けることになる。法律だけで裁けない者がこの世には存在しているのだから」
と、まことしやかに言い出す者もおり、それは因果応報を望む民衆に歓迎された。

 『闇の死刑執行人』が行う刑は小説や劇で、もてはやされおおいに犯罪者に恐怖心を植え付け、特に性犯罪の減少に繋がったそうだ。








ꕤ୭*






 さて、悪魔のコンラッドの雇い主であったカイデン公爵家の当主は、監督不行き届きで厳重に注意された後に爵位を降格され侯爵となった。

 被害者や被害者の遺族への慰謝料はカイデン家の責務とされ、それと同時に精神的なサポートとして医師やカウンセラーがつけられた。

 コンラッドの実家のケリー男爵家の両親は自害、兄が男爵家を継いだがまもなく気が狂い屋敷の窓から飛び降りたという。妹だけは修道院に籠もり、殺された被害者の冥福を祈り続けて天寿を全うした。

 ここでも、犯罪者は知ることになる。自分が犯した罪が自分の一族を滅ぼしていくことを。





ꕤ୭*シーザー騎士団長の後悔

 あの日、孤児院のボランティアの訪問日になぜ自分もついていかなかったのかを悔やんだ。休みなんて簡単にとれたはずだ。こんな危険な罠が待ち構えていたことを知っていたのなら、自分は全てを放り出してもそこに行ったはずなのに。

 神よ、貴男は本当にいらっしゃるのですか? マリアは孤児院に行って善行を行っていたんですよ。尊い仕事を無償でしに行った見返りがこれなのか?

 ボランティア活動の帰りに、母親と伯母に今流行の菓子を買おうとしただけなのに、こんな鬼畜と遭遇させるなんて! 私は今後、神には祈らない! 祈ったところで神はなにも助けてはくれない!

 私は騎士団の祭日には必ず市井に行く。路地裏のパトロールは私の日課だ。目立たない私服で、帽子を目深に被り怪しい男達をつけていく。

 

 ・・・・・・あぁ、やっぱりお前達はあのコンラッドと同類か。路地裏の空き家に女性を連れ込もうとしたところで、そいつらを捕まえ思いっきり怒りの鉄拳を食らわす。こんな奴らはクソだ。半殺しにしてやらなければ気が済まない。



 こんな路地に空き家をちらばめておくのもいけない! 私は国王陛下に路地裏の改善を進言した。路地にも綺麗な店をつくり、明るく清潔にし暗がりを作らないだけでも犯罪は減る。外灯をともし自警団の待機所も路地ごとに配置し、騎士団員も順番にパトロールしていく。

 だが、一カ所だけはわざと暗がりを放置し犯罪者をそこに集まらせた。あの拷問刑はあれから行われたことはない。なぜなら残忍な事件を未然に防げているからだ。




 


  

「昨日も、君のような被害者になりそうな女性を助けたよ。最愛の人よ。私は君を生き返らせることはできないが、同じような被害者を二度とださないようにすることはできる」

 私は毎朝、王宮に出仕する前に通り道である墓地に寄り、マリアの墓前で話しかけるのだった。




▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃

次、すっかり霞んでしまいどうでも良くなった感のあるイアンの末路です。

この小説の最後は、ほのぼの系を目指します。




以下、宣伝です。不快な方は飛ばしてください。

ライト文芸

愛の教えてくれた人

本日、更新しました。

「紬ちゃんの出産」です。よろしければ、お読みくださいませ🌷🌷🌷

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