16 / 19
それぞれの末路
16 コンラッドへの報復刑のその後
しおりを挟む
ꕤ୭* 第三者視点
メロン公爵家の近くに淀んだ沼がある。そこに奇妙なものが浮いていると噂が広まった。ウジだらけの動物と思われる死体が、なぜか木のボートを合わせたなかに押し込められて、強烈な悪臭を放っているという話だ。
興味本位で見に行った者は、あれは人間の死体だと言い合った。そうして、その噂は一人歩きし近隣諸国にまで広まった。特に惨殺された女性の遺体が多く発見された後だけに、これは性犯罪を犯した犯人が罰せられたんだと関連して考える者も少なくなかった。
王家が意図的に流した噂かもしれないこの話は、表向きの刑とは違う報復刑がされることの可能性を印象づけた。
「斬首刑では償えないほどの罪を犯した者は、闇の死刑執行人から残酷な刑を受けることになる。法律だけで裁けない者がこの世には存在しているのだから」
と、まことしやかに言い出す者もおり、それは因果応報を望む民衆に歓迎された。
『闇の死刑執行人』が行う刑は小説や劇で、もてはやされおおいに犯罪者に恐怖心を植え付け、特に性犯罪の減少に繋がったそうだ。
ꕤ୭*
さて、悪魔のコンラッドの雇い主であったカイデン公爵家の当主は、監督不行き届きで厳重に注意された後に爵位を降格され侯爵となった。
被害者や被害者の遺族への慰謝料はカイデン家の責務とされ、それと同時に精神的なサポートとして医師やカウンセラーがつけられた。
コンラッドの実家のケリー男爵家の両親は自害、兄が男爵家を継いだがまもなく気が狂い屋敷の窓から飛び降りたという。妹だけは修道院に籠もり、殺された被害者の冥福を祈り続けて天寿を全うした。
ここでも、犯罪者は知ることになる。自分が犯した罪が自分の一族を滅ぼしていくことを。
ꕤ୭*シーザー騎士団長の後悔
あの日、孤児院のボランティアの訪問日になぜ自分もついていかなかったのかを悔やんだ。休みなんて簡単にとれたはずだ。こんな危険な罠が待ち構えていたことを知っていたのなら、自分は全てを放り出してもそこに行ったはずなのに。
神よ、貴男は本当にいらっしゃるのですか? マリアは孤児院に行って善行を行っていたんですよ。尊い仕事を無償でしに行った見返りがこれなのか?
ボランティア活動の帰りに、母親と伯母に今流行の菓子を買おうとしただけなのに、こんな鬼畜と遭遇させるなんて! 私は今後、神には祈らない! 祈ったところで神はなにも助けてはくれない!
私は騎士団の祭日には必ず市井に行く。路地裏のパトロールは私の日課だ。目立たない私服で、帽子を目深に被り怪しい男達をつけていく。
・・・・・・あぁ、やっぱりお前達はあのコンラッドと同類か。路地裏の空き家に女性を連れ込もうとしたところで、そいつらを捕まえ思いっきり怒りの鉄拳を食らわす。こんな奴らはクソだ。半殺しにしてやらなければ気が済まない。
こんな路地に空き家をちらばめておくのもいけない! 私は国王陛下に路地裏の改善を進言した。路地にも綺麗な店をつくり、明るく清潔にし暗がりを作らないだけでも犯罪は減る。外灯をともし自警団の待機所も路地ごとに配置し、騎士団員も順番にパトロールしていく。
だが、一カ所だけはわざと暗がりを放置し犯罪者をそこに集まらせた。あの拷問刑はあれから行われたことはない。なぜなら残忍な事件を未然に防げているからだ。
「昨日も、君のような被害者になりそうな女性を助けたよ。最愛の人よ。私は君を生き返らせることはできないが、同じような被害者を二度とださないようにすることはできる」
私は毎朝、王宮に出仕する前に通り道である墓地に寄り、マリアの墓前で話しかけるのだった。
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
次、すっかり霞んでしまいどうでも良くなった感のあるイアンの末路です。
この小説の最後は、ほのぼの系を目指します。
以下、宣伝です。不快な方は飛ばしてください。
ライト文芸
愛の教えてくれた人
本日、更新しました。
「紬ちゃんの出産」です。よろしければ、お読みくださいませ🌷🌷🌷
メロン公爵家の近くに淀んだ沼がある。そこに奇妙なものが浮いていると噂が広まった。ウジだらけの動物と思われる死体が、なぜか木のボートを合わせたなかに押し込められて、強烈な悪臭を放っているという話だ。
興味本位で見に行った者は、あれは人間の死体だと言い合った。そうして、その噂は一人歩きし近隣諸国にまで広まった。特に惨殺された女性の遺体が多く発見された後だけに、これは性犯罪を犯した犯人が罰せられたんだと関連して考える者も少なくなかった。
王家が意図的に流した噂かもしれないこの話は、表向きの刑とは違う報復刑がされることの可能性を印象づけた。
「斬首刑では償えないほどの罪を犯した者は、闇の死刑執行人から残酷な刑を受けることになる。法律だけで裁けない者がこの世には存在しているのだから」
と、まことしやかに言い出す者もおり、それは因果応報を望む民衆に歓迎された。
『闇の死刑執行人』が行う刑は小説や劇で、もてはやされおおいに犯罪者に恐怖心を植え付け、特に性犯罪の減少に繋がったそうだ。
ꕤ୭*
さて、悪魔のコンラッドの雇い主であったカイデン公爵家の当主は、監督不行き届きで厳重に注意された後に爵位を降格され侯爵となった。
被害者や被害者の遺族への慰謝料はカイデン家の責務とされ、それと同時に精神的なサポートとして医師やカウンセラーがつけられた。
コンラッドの実家のケリー男爵家の両親は自害、兄が男爵家を継いだがまもなく気が狂い屋敷の窓から飛び降りたという。妹だけは修道院に籠もり、殺された被害者の冥福を祈り続けて天寿を全うした。
ここでも、犯罪者は知ることになる。自分が犯した罪が自分の一族を滅ぼしていくことを。
ꕤ୭*シーザー騎士団長の後悔
あの日、孤児院のボランティアの訪問日になぜ自分もついていかなかったのかを悔やんだ。休みなんて簡単にとれたはずだ。こんな危険な罠が待ち構えていたことを知っていたのなら、自分は全てを放り出してもそこに行ったはずなのに。
神よ、貴男は本当にいらっしゃるのですか? マリアは孤児院に行って善行を行っていたんですよ。尊い仕事を無償でしに行った見返りがこれなのか?
ボランティア活動の帰りに、母親と伯母に今流行の菓子を買おうとしただけなのに、こんな鬼畜と遭遇させるなんて! 私は今後、神には祈らない! 祈ったところで神はなにも助けてはくれない!
私は騎士団の祭日には必ず市井に行く。路地裏のパトロールは私の日課だ。目立たない私服で、帽子を目深に被り怪しい男達をつけていく。
・・・・・・あぁ、やっぱりお前達はあのコンラッドと同類か。路地裏の空き家に女性を連れ込もうとしたところで、そいつらを捕まえ思いっきり怒りの鉄拳を食らわす。こんな奴らはクソだ。半殺しにしてやらなければ気が済まない。
こんな路地に空き家をちらばめておくのもいけない! 私は国王陛下に路地裏の改善を進言した。路地にも綺麗な店をつくり、明るく清潔にし暗がりを作らないだけでも犯罪は減る。外灯をともし自警団の待機所も路地ごとに配置し、騎士団員も順番にパトロールしていく。
だが、一カ所だけはわざと暗がりを放置し犯罪者をそこに集まらせた。あの拷問刑はあれから行われたことはない。なぜなら残忍な事件を未然に防げているからだ。
「昨日も、君のような被害者になりそうな女性を助けたよ。最愛の人よ。私は君を生き返らせることはできないが、同じような被害者を二度とださないようにすることはできる」
私は毎朝、王宮に出仕する前に通り道である墓地に寄り、マリアの墓前で話しかけるのだった。
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
次、すっかり霞んでしまいどうでも良くなった感のあるイアンの末路です。
この小説の最後は、ほのぼの系を目指します。
以下、宣伝です。不快な方は飛ばしてください。
ライト文芸
愛の教えてくれた人
本日、更新しました。
「紬ちゃんの出産」です。よろしければ、お読みくださいませ🌷🌷🌷
26
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
〖完結〗残念ですが、お義姉様はこの侯爵家を継ぐことは出来ません。
藍川みいな
恋愛
五年間婚約していたジョゼフ様に、学園の中庭に呼び出され婚約破棄を告げられた。その隣でなぜか私に怯える義姉のバーバラの姿があった。
バーバラは私にいじめられたと嘘をつき、婚約者を奪った。
五年も婚約していたのに、私ではなく、バーバラの嘘を信じた婚約者。学園の生徒達も彼女の嘘を信じ、親友だと思っていた人にまで裏切られた。
バーバラの目的は、ワイヤット侯爵家を継ぐことのようだ。
だが、彼女には絶対に継ぐことは出来ない。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
感想の返信が出来ず、申し訳ありません。
義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜
有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。
「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」
本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。
けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。
おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。
貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。
「ふふ、気づいた時には遅いのよ」
優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。
ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇!
勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!
【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!
山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」
夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる