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最高のプレゼント

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私に、お爺様ができた。すごく優しくて大事にしてくださる。これが家族なのね?私はノア公爵家でマナーやお勉強をしたわ。乗馬もね!シドニー男爵家には、お爺様が事情を話したみたい。あれからシドニー男爵には会えていない。

彼には婚約者がいるし、もう会うこともないのかもしれない‥‥前の私は貧困層の平民でシドニー男爵との間には身分差があった。でも、今の私とシドニー男爵の間にも身分差があるのだから。

お爺様は筆頭公爵家の当主で、亡きお婆様は王女様。私はこの国でも指折りのサラブレッドなのだ。私の結婚は、家の繁栄を維持するために厳格な人選が行われるだろう。今では、私はお爺様が大好きになっているから困らせたり、悲しませたくはない。初恋は実らないものだわ。


あれから、いろいろな貴族の貴公子に夜会に誘われたけど‥‥全然、心はときめかなかった。季節は幾度も巡りまた冬になっていた。
今日も雪がふわりふわりと舞い落ちる。私はあの日のことを思い出す。空腹で震えて鉛色の空の下を当てもなく歩いたあの日。シドニー男爵がいなかったら路上で死んでいたかもしれない。あの方が伯爵だったらまだお爺様にお願いできたのに‥‥なにを?それは、決まってるわ。私のお婿さんになってもらうこと‥


私はシドニー男爵を思い出すと、思わずため息をついた。でも、こんなのはわがままだ。温かい部屋にいられて綺麗な衣装を着て、もう飢えることもない。お爺様には大事にされ、使用人とも仲良しだ。これ以上、望んではいけない。バチがあたるわ。

お爺様は、そんな私の浮かない表情を見ていたのに、上機嫌だった。いつもなら、しつこいぐらいため息の理由を聞いてくるのに‥‥




「マドレーヌや、明日はお前のお誕生日だろう?最高のプレゼントを用意している」
お爺様が私に満面の笑みで優しく仰った。

「欲しいもの?なにもないです。ここに、こうしてお爺様がいらっしゃるのが一番の幸せです」

「そうか、そうか。嬉しいことを、いつもマドレーヌは言ってくれるね。私はお前のお爺様で一番の理解者でいることを約束するよ。明日はお前に最高のプレゼントをしよう」





私のお誕生日には、王子様まで来て高位の貴族達で溢れかえっていた。

末端男爵のシドニー男爵は当然いない‥‥あの方はもう私など忘れただろうな‥‥

ため息を小さくついたところで、お爺様が声を張り上げた。


「さて、ここで重大発表がある!!孫娘の婚約者のグレイソン・シドニー男爵だ」
ノア公爵家の重厚な奥扉から私の恋い焦がれていた姿が現れた時、私の心に陽の光がさんさんと降り注いだ。
一瞬で、この世の全てが鮮やかに色づいた。

「「「「え?王家の血筋を引く公爵家の孫娘と、たかが末端男爵家の当主は釣り合わない」」」

「「「「ありえない‥‥」」」」


高位貴族達は、みなどよめいたが、私はシドニー男爵が差し出す手をそっと握った。うれしくて頬を染める。そんな私を見つめながら、お爺様は私に悪戯っぽく言ったの。



「ほら、私はお前の最高の理解者だろう?」 

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