17 / 24
15 スネイプ侯爵家への訪問
しおりを挟む
「スネイプ侯爵家に一緒に行くのは構いませんが、着ていくドレスがありません。どれもデザインが古すぎて笑われてしまいそうです」
「そうか、それならばわたしがプレゼントしよう」
恐れ多いことをおっしゃってくださるけれど、そんなことをしてもらって良いのかしら?
仕立て屋に行き、ほとんど仕上がっているドレスを見ていく。おおまかなサイズ別に分かれており、微調整だけをすれば着られるドレスのなかから、エミール様が次々と私にドレスを手渡していく。
「このライラック色のがいいね。あとこちらのブルーと、クリーム色のものも。全部試着して気に入ったらすべてを買うよ」
「ぜっ、全部ですか? 1着だけで充分です。こんな綺麗なドレスを着ていく場所などありません」
「あるさ。これからマリアンさんの絵はもっと価値があがり、いろいろなパーティに招かれることが増える。貴族や富裕層のお茶会や夜会の招待状が居間のテーブルに山積みになるよ」
「まさか・・・・・・」
そんなことは信じられない。それでもエミール様は確信に満ちた顔付きで、私に優しく微笑みかけた。
「わたしの言うことに間違いはないよ。きっとそのうちそうなるはずさ。マリアンさんはきっとわたしと同じ、いやもっとこの先、有名になるよ。楽しい輝かしい未来が君を待っているのさ」
❁.。.:*:.。.✽.
初めての貴族のお屋敷の訪問よ。しかも向かう先は高位貴族のタウンハウスでスネイプ侯爵家。緊張して馬車の中で何度も深呼吸をする。スネイプ侯爵家のタウンハウスは、王都にありながらも敷地が広く壮麗な建物だった。私達を迎えてくださったのは優しい顔付きのスネイプ侯爵夫妻だった。
「まぁ、女性を一緒に連れて来るなんて初めてのことね? ようこそスネイプ侯爵家へ」
優しく話しかけられたけれど、私の全身を素早くチェックする視線を感じた。私の素性や経歴を気になっているのがありありと伝わってくる。
「わたしが最近知り合った女性ですよ。今日は是非、トリシア義姉上に会ってほしくて連れて来たのです」
「まぁ。それは嬉しいわ」
私達は庭園のガゼボにセッティングされたお茶会の席に腰をおろした。先に招かれた3人の女性達と和やかに会話を始める。チラチラと私の顔に、好奇心に満ちた視線が向けられた。そのうちに貴族同士のお茶会の話になっていき、あそこのお茶会は楽しかったとかつまらなかったとか、そんな話になっていく。
「最近招かれたお茶会はいかがでしたか? あなたも貴族出身ですわね? お見かけしないお顔ですけど、姓を教えていただけません? 」
一人の女性が我慢しきれなかったらしく、遠慮がちに私に訊ねた。他の二人の女性も興味津々の眼差しを向けてきたから、すっかりドギマギしてほんの少し早口になってしまう。
「私は貴族ではありません。エミール様とはファーガソン画廊で知り合いました。マリアンというのは本名なのですが、その名前で絵も描いています」
その途端に令嬢達の表情が変わった。ぱっと明るく輝くような笑顔を向けられる。
「待って。マリアンって今をときめく新進気鋭の画家じゃない! まさか、あぁ、お願い。サインをくださらない?」
「まぁ、私も欲しいわ。あなたの絵画はとても素晴らしいわ」
「えぇっと、サインですか? 私なんかのサインが欲しいのですか?」
「なんか、は余計さ。マリアンさんはすでにかなり有名なのだよ。こうなると、貴族かどうかなんてもう関係ない。それにトリシア義姉上、マリアンさんが参加したお茶会はこれが初めてですよ。彼女はわたしの大事な人です」
「まぁ、まぁ。それを早くおっしゃい。あの画家のマリアンさんなら大歓迎ですよ。しかも当家のお茶会が初めてですって? なんて素晴らしいの! 皆に自慢できてよ」
さきほどまでの値踏みするような眼差しや、警戒する雰囲気はあっさりと大歓迎ムードに変わった。流石はファーガソン画廊だと思う。あの画廊で認められた画家の将来は約束されたものだ、という噂は本当だったみたい。
招待客が去り私達は四人で腹を割って話し合っていた。
「待て待て、お前の思い人は人妻なのか?」
「いや、兄上。わたし達はまだつきあってもいないし、いまのところは画家仲間だよ。ただ、彼女はすぐに離婚する。実は・・・・・・」
私の事情を黙って聞いていたスネイプ侯爵夫人は励ますように私の手をそっと握った。
「私はマリアンさんの味方よ」
その言葉がとても嬉しくて・・・・・・ファーガソン画廊のエバリンさんに、このトリシア様は私の生涯の友人になっていくのだった。
「そうか、それならばわたしがプレゼントしよう」
恐れ多いことをおっしゃってくださるけれど、そんなことをしてもらって良いのかしら?
仕立て屋に行き、ほとんど仕上がっているドレスを見ていく。おおまかなサイズ別に分かれており、微調整だけをすれば着られるドレスのなかから、エミール様が次々と私にドレスを手渡していく。
「このライラック色のがいいね。あとこちらのブルーと、クリーム色のものも。全部試着して気に入ったらすべてを買うよ」
「ぜっ、全部ですか? 1着だけで充分です。こんな綺麗なドレスを着ていく場所などありません」
「あるさ。これからマリアンさんの絵はもっと価値があがり、いろいろなパーティに招かれることが増える。貴族や富裕層のお茶会や夜会の招待状が居間のテーブルに山積みになるよ」
「まさか・・・・・・」
そんなことは信じられない。それでもエミール様は確信に満ちた顔付きで、私に優しく微笑みかけた。
「わたしの言うことに間違いはないよ。きっとそのうちそうなるはずさ。マリアンさんはきっとわたしと同じ、いやもっとこの先、有名になるよ。楽しい輝かしい未来が君を待っているのさ」
❁.。.:*:.。.✽.
初めての貴族のお屋敷の訪問よ。しかも向かう先は高位貴族のタウンハウスでスネイプ侯爵家。緊張して馬車の中で何度も深呼吸をする。スネイプ侯爵家のタウンハウスは、王都にありながらも敷地が広く壮麗な建物だった。私達を迎えてくださったのは優しい顔付きのスネイプ侯爵夫妻だった。
「まぁ、女性を一緒に連れて来るなんて初めてのことね? ようこそスネイプ侯爵家へ」
優しく話しかけられたけれど、私の全身を素早くチェックする視線を感じた。私の素性や経歴を気になっているのがありありと伝わってくる。
「わたしが最近知り合った女性ですよ。今日は是非、トリシア義姉上に会ってほしくて連れて来たのです」
「まぁ。それは嬉しいわ」
私達は庭園のガゼボにセッティングされたお茶会の席に腰をおろした。先に招かれた3人の女性達と和やかに会話を始める。チラチラと私の顔に、好奇心に満ちた視線が向けられた。そのうちに貴族同士のお茶会の話になっていき、あそこのお茶会は楽しかったとかつまらなかったとか、そんな話になっていく。
「最近招かれたお茶会はいかがでしたか? あなたも貴族出身ですわね? お見かけしないお顔ですけど、姓を教えていただけません? 」
一人の女性が我慢しきれなかったらしく、遠慮がちに私に訊ねた。他の二人の女性も興味津々の眼差しを向けてきたから、すっかりドギマギしてほんの少し早口になってしまう。
「私は貴族ではありません。エミール様とはファーガソン画廊で知り合いました。マリアンというのは本名なのですが、その名前で絵も描いています」
その途端に令嬢達の表情が変わった。ぱっと明るく輝くような笑顔を向けられる。
「待って。マリアンって今をときめく新進気鋭の画家じゃない! まさか、あぁ、お願い。サインをくださらない?」
「まぁ、私も欲しいわ。あなたの絵画はとても素晴らしいわ」
「えぇっと、サインですか? 私なんかのサインが欲しいのですか?」
「なんか、は余計さ。マリアンさんはすでにかなり有名なのだよ。こうなると、貴族かどうかなんてもう関係ない。それにトリシア義姉上、マリアンさんが参加したお茶会はこれが初めてですよ。彼女はわたしの大事な人です」
「まぁ、まぁ。それを早くおっしゃい。あの画家のマリアンさんなら大歓迎ですよ。しかも当家のお茶会が初めてですって? なんて素晴らしいの! 皆に自慢できてよ」
さきほどまでの値踏みするような眼差しや、警戒する雰囲気はあっさりと大歓迎ムードに変わった。流石はファーガソン画廊だと思う。あの画廊で認められた画家の将来は約束されたものだ、という噂は本当だったみたい。
招待客が去り私達は四人で腹を割って話し合っていた。
「待て待て、お前の思い人は人妻なのか?」
「いや、兄上。わたし達はまだつきあってもいないし、いまのところは画家仲間だよ。ただ、彼女はすぐに離婚する。実は・・・・・・」
私の事情を黙って聞いていたスネイプ侯爵夫人は励ますように私の手をそっと握った。
「私はマリアンさんの味方よ」
その言葉がとても嬉しくて・・・・・・ファーガソン画廊のエバリンさんに、このトリシア様は私の生涯の友人になっていくのだった。
102
あなたにおすすめの小説
【完結】私の婚約者は妹のおさがりです
葉桜鹿乃
恋愛
「もう要らないわ、お姉様にあげる」
サリバン辺境伯領の領主代行として領地に籠もりがちな私リリーに対し、王都の社交界で華々しく活動……悪く言えば男をとっかえひっかえ……していた妹ローズが、そう言って寄越したのは、それまで送ってきていたドレスでも宝飾品でもなく、私の初恋の方でした。
ローズのせいで広まっていたサリバン辺境伯家の悪評を止めるために、彼は敢えてローズに近付き一切身体を許さず私を待っていてくれていた。
そして彼の初恋も私で、私はクールな彼にいつのまにか溺愛されて……?
妹のおさがりばかりを貰っていた私は、初めて本でも家庭教師でも実権でもないものを、両親にねだる。
「お父様、お母様、私この方と婚約したいです」
リリーの大事なものを守る為に奮闘する侯爵家次男レイノルズと、領地を大事に思うリリー。そしてリリーと自分を比べ、態と奔放に振る舞い続けた妹ローズがハッピーエンドを目指す物語。
小説家になろう様でも別名義にて連載しています。
※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)
婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです
柚木ゆず
恋愛
コストール子爵令嬢マドゥレーヌ。彼女はある日、実父、継母、腹違いの妹、そして婚約者に裏切られ、コストール家を追放されることとなってしまいました。
ですがその際にマドゥレーヌが咄嗟に口にした『ある言葉』によって、マドゥレーヌが去ったあとのコストール家では大変なことが起きるのでした――。
【完結】私を裏切った最愛の婚約者の幸せを願って身を引く事にしました。
Rohdea
恋愛
和平の為に、長年争いを繰り返していた国の王子と愛のない政略結婚する事になった王女シャロン。
休戦中とはいえ、かつて敵国同士だった王子と王女。
てっきり酷い扱いを受けるとばかり思っていたのに婚約者となった王子、エミリオは予想とは違いシャロンを温かく迎えてくれた。
互いを大切に想いどんどん仲を深めていく二人。
仲睦まじい二人の様子に誰もがこのまま、平和が訪れると信じていた。
しかし、そんなシャロンに待っていたのは祖国の裏切りと、愛する婚約者、エミリオの裏切りだった───
※初投稿作『私を裏切った前世の婚約者と再会しました。』
の、主人公達の前世の物語となります。
こちらの話の中で語られていた二人の前世を掘り下げた話となります。
❋注意❋ 二人の迎える結末に変更はありません。ご了承ください。
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
お姉様、今度は貴方の恋人をもらいますわ。何でも奪っていく妹はそう言っていますが、その方は私の恋人ではありませんよ?
柚木ゆず
恋愛
「すでに気付いているんですのよ。わたくしやお父様やお母様に隠れて、交際を行っていることに」
「ダーファルズ伯爵家のエドモン様は、雄々しく素敵な御方。お顔も財力も最上級な方で、興味を持ちましたの。好きに、なってしまいましたの」
私のものを何でも欲しがる、妹のニネット。今度は物ではなく人を欲しがり始め、エドモン様をもらうと言い出しました。
確かに私は、家族に隠れて交際を行っているのですが――。その方は、私にしつこく言い寄ってきていた人。恋人はエドモン様ではなく、エズラル侯爵家のフレデリク様なのです。
どうやらニネットは大きな勘違いをしているらしく、自身を溺愛するお父様とお母様の力を借りて、そんなエドモン様にアプローチをしてゆくみたいです。
妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。
雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」
妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。
今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。
私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。
婚約者マウントを取ってくる幼馴染の話をしぶしぶ聞いていたら、あることに気が付いてしまいました
柚木ゆず
恋愛
「ベルティーユ、こうして会うのは3年ぶりかしらっ。ねえ、聞いてくださいまし! わたくし一昨日、隣国の次期侯爵様と婚約しましたのっ!」
久しぶりにお屋敷にやって来た、幼馴染の子爵令嬢レリア。彼女は婚約者を自慢をするためにわざわざ来て、私も婚約をしていると知ったら更に酷いことになってしまう。
自分の婚約者の方がお金持ちだから偉いだとか、自分のエンゲージリングの方が高価だとか。外で口にしてしまえば大問題になる発言を平気で行い、私は幼馴染だから我慢をして聞いていた。
――でも――。そうしていたら、あることに気が付いた。
レリアの婚約者様一家が経営されているという、ルナレーズ商会。そちらって、確か――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる