(完結)家族にも婚約者にも愛されなかった私は・・・・・・従姉妹がそんなに大事ですか?

青空一夏

文字の大きさ
37 / 67

37

しおりを挟む
 春祭りは連続三日間かけて行われる春の訪れを歓迎するお祭りだ。どこの領地でも大々的に行われるけれど、今日の私とライオネル殿下は、王都の中心部で行われる春祭りの初日を楽しんでいた。

 広場の中央に位置する特設会場はチューリップ、ダフニア、フリージア、そしてライラックなど、春の花々で美しく彩られていた。テントの帆布にも黄色いチューリップが描かれ、その鮮やかな色合いは太陽の光を浴びて一層輝いていた。

 特設会場のアーチの周りには淡いピンク色のダフニアが咲き誇っている。ダフニアの花々は微風にそよぐたびに、甘い芳香を運んできた。

 テントの入り口にはフリージアの花束が飾られており、その繊細な花弁からも独特の芳香が漂っている。人々はその香りを楽しむために、テントの中に入る前にしばしば立ち止まりこともあった。

 また、特設会場内にはライラックの花が豪華に咲き誇り、深紫色の花房が魅力的に美しさを際立てていた。ライラックの花々は春祭りの特別な雰囲気を醸し出し、訪れる人々の心を華やいだ気持ちにさせる。
 これらの美しい春の花々は、特設会場と広場全体に魅力的な色彩と香りをもたらし、春祭りの雰囲気を一層盛り上げていた。

 私はライオネル殿下とお忍びでここを訪れているのだが、どの花もそれぞれに美しく甘美な香りを放ち、春の訪れを私達に知らしめ、幸せな気持ちにさせてくれた。
 手をつなぎ、時には肩を優しく抱かれながら、咲き乱れる花のなかをゆっくりと歩く。まるで夢の中にいるように幸せだった。
 彼の温かい手が私の手を優しく包む時、それだけで心が満たされた。ところが、私ときたらまるでムードがない失敗の連続だった。

 幸せで胸がいっぱいなはずなのに、お祭りに立ち並び屋台の食欲をそそる香りに、お腹はキュルキュルと鳴ってしまう。お祭りの喧騒のなかとはいえ、至近距離にいるライオネル殿下には、きっとしっかり聞こえていたのね。

「お腹がすいてきましたね。さっきは、私のお腹が鳴ってしまって申し訳ない」

 恥ずかしさで顔が赤くなった私に、ライオネル殿下は自分のお腹が鳴ったと庇ってくださった。自然にこのような言葉が出るライオネル殿下は素敵な方よ!

 2回目の失敗はクレープを選んだこと。甘さ控えめながらも、中には新鮮なベリーとクリームがぎっしりと詰まっているクレープを食べたのが誤算だった。食べながら歩いているうちに、クレープの中身がすっかりワンピースにこぼれ落ちてしまった。

 そんな時も、彼はタイミングをあわせたように、屋台で買った飲み物を自分のシャツにこぼした。

「ソフィと一緒にデートしている嬉しさで、さっきから私は失敗ばかりしていますね。だが、この失敗のお陰で特設会場で売っているお揃いの服が買えます。あのエメラルドグリーンのワンピースを買いましょう。私はその隣のドレスシャツにします」

 ライオネル殿下が指さしたワンピースの前面には優雅な花柄の刺繍が施され、春の花々の美しさを象徴していた。ウエスト部分にはゴールドのベルトが取り付けられており、シルエットを引き締め女性らしい曲線を際立たせている。裾は広がりを持ち、歩くたびに優雅な動きを生みだしていた。

 その隣のドレスシャツは涼しげなミントグリーンの色調で、清潔感と爽やかさを醸し出していた。前面には、小さなパールボタンが美しく配置され、細部へのこだわりが感じられた。

 お忍びだからと目立たない服装で来たけれど、かえってこの目立つグリーンのお揃いの服の方が、周囲に溶け込んで、私達は引き続き春祭りを楽しむことができた。

「実はずっとこの服が気になっていたのですよ。ソフィのお陰でお揃いで着ることができました」

 そっと囁く彼の瞳はどこまでも優しい。この方に出会えて大切にしてもらえることが奇跡のようで、何度も自分の頬をつねりたくなった。

 途中、鮮やかなオレンジ色の帽子や黄色いマント、青いベスト、フリルつきのシャツを身に着けた大道芸人がフルートを吹いている姿も見かけた。

 ライオネル殿下も一緒になってフルートを吹く姿が微笑ましい。王族だからといって少しも威張ったところがなく、大道芸人とすら笑い合って仲良くなってしまう、そんな彼が私は大好きなのだった。

 

 

 
☆彡 ★彡





 夜は王宮で開かれる春祭りの晩餐会に出席した。もちろんボナデアお母様もビニ公爵様も参加していて、私のエスコートはライオネル殿下がしてくださった。

 王宮の庭園は春のお祭りの晩餐会のために美しく飾られている。会場は広大な芝生の上に設けられ、小さな白いランタンが優雅な光を放ち、その周囲には鮮やかな花々が咲き誇っていた。

 招かれた方たちは様々な身分と背景を持つ人々で、貴族、芸術家、そして商人たちが一堂に会していた。貴族たちは鮮やかな絹のドレスやタキシードを身に纏い、宝石で飾り立てられた帽子やアクセサリーを身に着けていた。彼らの服は豪華で洗練されたデザインであり、その美しさは王宮の壮麗さと調和していた。

 芸術家たちは斬新なスタイルの衣装を選び、色とりどりのマントや帽子を身に着けていた。彼らの服装は個性的でありながらも洗練された美しさを持ち、芸術的な才能を感じさせるものだった。彼らは会場のあちこちで絵筆を持ち、音楽に合わせて描画や彫刻のパフォーマンスを披露していた。

 商人たちもまた、豪華な衣装を纏っていた。彼らは繊維や宝石、贅沢品を扱う商人であり、その服装は彼らの富や成功を物語っていた。彼らは上品なシルクの服や華やかなアクセサリーを身につけ、王宮の庭園を歩き回りながらビジネスの話を進めていた。

 会場全体は華やかな色彩に包まれていた。鮮やかな花々の香りが漂い、優雅なキャンドルの光が庭園を照らし出している。美しい音楽が流れ、人々は楽しみながら会話を交わし、美味しい料理と上質なワインを楽しんでいた。

 ところが、このようなタイミングで、カロライナ王国から使者が到着した。本来ならば謁見の間でなされるやりとりも、今回は春祭りの会場である庭園でそのまま続けられた。

「カロナイナ国王からの書状です。ライオネル殿下、お受け取りください」

 国王陛下や王妃殿下に対する儀礼的な挨拶を済ませた使者は、書状をライオネル殿下に差し出した。ライオネル殿下は言われるままにそれを受け取る。カロライナ王国の王家の紋章が透かし模様になった上質な紙には、次のように綴られていた。

『ライオネル殿下、我が国、カロライナ王国とメドフォード国との間には、深く堅固な信頼と磐石な友情が築かれており、これらの感情はまさに不滅のものであると言えます。ゆえに、私たちは音楽を通じてさらなる親睦を深めるべきだと考えます。そこで、カロライナ王国では特別な文化交流会を開催し、我が国の音楽と、貴国の音楽とを共有したいと存じます・・・・・・』

 その手紙の最後には、カメーリア殿下とのヴァイオリン・デュエットの文字が見えた。ライオネル殿下は手紙を読み終え、微笑みながらおっしゃった。

「音楽を通じての親睦は素晴らしい提案だと思います。私はこの招待を喜んで受け入れます。使者殿、帰国した際にはカロライナ国王に感謝の意を伝えていただきたい」

 使者は一礼し、満足そうに微笑んだのだった。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「10歳の頃の想いなど熱病と同じ」と婚約者は言いました──さようなら【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王太子フリードリヒの婚約者として、幼い頃から王妃教育を受けてきたアメリア・エレファウント公爵令嬢。 誰もが羨む未来を約束された彼女の世界は、ある日突然1人の少女の登場によって揺らぎ始める。 無邪気な笑顔で距離を(意図的に)間違える編入生ベルティーユは、男爵の庶子で平民出身。 ベルティーユに出会ってから、悪い方へ変わっていくフリードリヒ。 「ベルが可哀想だろ」「たかがダンスくらい」と話が通じない。 アメリアの積み上げてきた7年の努力と誇りが崩れていく。 そしてフリードリヒを見限り、婚約解消を口にするが話は進まず、学園の卒業パーティーで断罪されてしまう……?! ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています

【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ

水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。 ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。 なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。 アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。 ※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います ☆HOTランキング20位(2021.6.21) 感謝です*.* HOTランキング5位(2021.6.22)

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※短編です。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4800文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。

凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」 リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。 その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。 当然、注目は私達に向く。 ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた── 「私はシファナと共にありたい。」 「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」 (私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。) 妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。 しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。 そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。 それとは逆に、妹は── ※全11話構成です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。

処理中です...