（完結）妹に虐げられた私は･･････

2 お兄様が生きていた！

「ローラはずいぶん痩せたのじゃないか？」
　ここ1年で手は荒れ放題、すっかり痩せてしまった私に、お父様は珍しく声をかけた。

「あぁ、この子は好き嫌いが多くて食事をわざと残すのです。本当に困った子ですわ」
　マーガレットの話は全てが嘘で、与えられる食事はいつも最低限だ。

　食事はメイド部屋にミリーが持ってきて、そこで一人で食べさせられていた。干からびたようなパンに薄いスープ。たまに添えられるほんの少しの肉はパサパサで味がなかった。

（他のメイド達もこのような食事なのかしら？　だとしたら、今まで気がつかなくて可哀想なことをしてきたのね）

　私はいつもそう思いながら食事をする。お母様もお兄様もいらっしゃった頃は、メイドの食事を気にかけたことは一度もない。なんて気の利かない私だったのだろう。



★*☆*



「ローラ様、これは、ちゃんと汚れが落ちていませんね？　もう一回洗い直してください！　ほんっとに使えないのだから」
　メイドのミリーが洗濯済みの乾いた服を、地面に叩きつける。これはいつものこと。

「ローラ様、こちらのお皿もまだヌルヌルしたところがありますよ。もう一度洗い直してください。さぼることばかり一人前だわ。あなたはもうスエンソン家の令嬢じゃないのですよ」
　メイドのエスメは洗い終わった皿を3枚ほど取り出すと床にたたきつけた。これも珍しくない嫌がらせだ。


　ミリーとエスメはマーガレットの指示に忠実で、私に意地悪をするとマーガレットが喜ぶのを知っている。

「ローラ！　お皿をわざと割ったのですって？　なんて性格が悪いの！　今日の夕食は抜きです」
　マーガレットがニヤニヤと笑いながらやって来る。その様子は私をなじる喜びに溢れていた。

「お姉様、可哀想ねぇ。すっかりメイドだわね！　でも性格が悪い子はそうなるのですわ。早くあなたのお母様（ローズのこと）が持っていた宝石を全部寄越しなさいよ。お母様（マーガレットのこと）に渡した以外にも持っているのを私は知っているのよ」

「なんのことかしら？」

「とぼけないで！　エメラルドのペンダントとイヤリングよ。あとブローチもあったわよね？　ブレスレットも･･････　すごく綺麗なエメラルドばっかりだった！　お姉様の部屋を覗いた時に見てるからわかっているのよ。あれは素敵ね。私にくださらない？」

「私の部屋に勝手に入ったのですか？　マリア、あなたは非常識すぎます！　それに、あれはお兄様からのプレゼントですから私のものです」

「ふーーん。お父様に言いつけてやるわ！」
　パタパタとマリアがお父様の執務室に入っていくと、すぐに私を呼びつける怒声が屋敷中に響く。




「ローラ！　まだ宝石を隠し持っているらしいな。マリアが欲しがっている。可愛い妹が欲しがっているのだ。早く渡しなさい」
　お父様は私にイライラと言葉を投げつけた。

「あれは私のものです。お兄様が私にプレゼントしてくださったものです」

「アレキサンダーはもういない。死んだのさ。だからその宝石の持ち主は当主であるワシだ。ワシが決めたことに逆らうな」
　平手が飛んできそうな瞬間、執事が慌てて入室してきた。
　

「お喜びください！　旦那様。さきほど国王陛下から使いが･･････アレキサンダー様が戻られたそうです。おめでとうございます！！」