[完結]死に戻りの悪女、公爵様の最愛になりましたーー処刑された侯爵令嬢、お局魂でリベンジ開始!

青空一夏

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9 解毒剤を作ったブロッサム

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 医者が飛んできたものの、患者が三人もいて、それぞれもだえ苦しんでいるため、かなり手こずっていた。

 しかも呼ばれたのは、ローズミント侯爵家のお抱え医師。毒の専門家ではない上に、発言もどこか頼りない。

「これは……そうですね、食あたりでしょう。なにか悪いものでも召し上がったんじゃないですかね」

 ――そんなこと、見ればわかるわよ。

 処方されたのは、胃腸の働きを整える薬。あとは時が解決してくれるだろうと、穏やかに言い残して帰っていった。まぁ、確かに放っておいても時間が経てばなんとかなるかもしれない。けれど。

「天使の腹は守ったーー!!」

 父がレストルームから全力で叫ぶので、うるさくて仕方がない。
 それぞれのレストルームからは凄まじいうめき声が響いていて、もう騒々しさの極みだった。

 ゲホッ、グェエッ――と、廊下の向こうからビオラの嘔吐音まで聞こえてくる。

 ……まったく、手間のかかる人たちだな。

 わざわざイザベルが自作して持ち込んだ“特製クッキー”を、父は嬉々として食べたあげく、顔面蒼白になってレストルームに籠もったまま。
 当然、そのクッキーを口にしたイザベルもビオラも、同様に悲惨な目にあっていた。

「まさに因果応報よねぇ。イザベルお母様も、ビオラも、そして……残念なお父様も」

 私は肩をすくめながら、手を前に差し出した。

「解毒の書――デトックス・ブック、起動」

 パシュッという軽い音とともに、宙に淡い光のパネルが浮かび上がる。
 毒草リストと症状検索フィールドが並ぶその画面は、まるでRPGのアイテム図鑑のようだった。

 ――あのポンコツ神様、たまにはいい仕事するじゃない。

 裁判の傍聴にハマっていた私は、根っからのゲームオタクでもある。自然と口元が緩む。

「黒竜草、っと……」

【コクリュウソウ・抽出液】
 → 検出中……検索完了。

【黒竜草・抽出液】
 毒性:弱中毒性/摂取後5分で症状発現
 主な症状:胃腸の激痛、嘔吐、めまい、重度の場合は意識混濁。
 毒の特性:高熱で成分が活性化するため、加熱調理で毒性が強まる可能性あ    り。
 対処法:即時解毒推奨。放置すれば軽度の内臓損傷のおそれあり?

「焼いてクッキーにするとか……悪意がバッチリ過ぎて、逆に笑えるわ。ていうか、この“おそれあり?”の“?”が適当すぎるでしょ」

 クスクスと笑いながら、私は「対応レシピを展開」のボタンをタップした。

【黒竜草の解毒レシピ】
 ・カタツムツムの粉末(0.8g)
 ・カキカキの種(潰してペースト状に)
 ・聖水(または代替として聖花の涙10滴)
 ※木のスプーンで撹拌すること

「ふむふむ……って、これ絶対まずいやつだ」

 私は侍女たちに材料を持ってこさせ、テーブルの上で手早く調合を始めた。
 この世界ではそこまで珍しい素材でもないようで、少し安心する。

 彼らは私を処刑に追いやった張本人たち――そう、正真正銘の悪人だ。
 それでも放っておけば、死なないにしても後遺症が残る可能性がある。
 どうせなら、生きて償ってもらわなければ意味がない。

「命の恩人って呼んでくれても、別にいいのよ? あとで請求書でも置いておこうかしら」

 独り言をつぶやきながら、私は調合した茶色くどろっとした液体を小瓶に注ぎ、三つに分けた。

 これを飲めば、しばらくすれば回復するはず。
 私は静かに笑ってから、淡々と薬の瓶を持ち、レストルームの扉越しに手渡したのだった。

 そして――

 父は私に涙ながらに感謝し、イザベルとビオラは、明らかに私に遠慮するようになった。

 だが、こんなことで私の未来が保証されたとは、まったく思っていない。

 私の次なる作戦は――
 この国で最も恐れられる男、毒公爵に近づくことだった。


•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•

※本日、「愛する人たちに裏切られた私は……」を投稿しました。こちらはシリアスで、夫の浮気に悩む公爵夫人の物語です。娘として育てた姪が……可哀想な妻、レティシアさんなのですが、もちろん最後は元サヤではないハッピーエンドです。

興味があったら、ぜひお読みいただけたら、と思います。
よろしくお願いします!
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