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8 気が狂ったチャーリー王子殿下(チャーリー王子殿下視点)
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チャーリー王子殿下視点
俺は今は地下牢に入れられ反省を促されている。
スワンの父親のカートレット大公が偉そうに俺に説教するのも気に食わない。
「お前のような愚かな主に使えていたために側近のジェイコブとレオは大変な目に合っている。そのことをお前はどう捉えているんだ?」
ーーどうと言われても、俺には当たり前なこととしか思えない。俺が良いことをすればそれは俺の手柄だ。俺が過ちを犯したとすればそれを止めなかった側近たちの責任だ。この主従関係の理論は大昔から決まっていることじゃないか!
「仕方がないと思います。俺が指示したことが間違っているとすればそれを止めなかったあいつらが悪い」
「そうか。お前は止められたらスワンに嫌がらせをしなかったか? そうではないだろう? お前のような者は間違いを指摘されれば怒り狂いその側近たちを遠ざけたに違いない。愚か者とはそういうものだ」
ーーなんでそんなに決めつけるんだよ! 俺の事なんてわかっていないくせに!
「側近たちが厳しい処分になった以上、主であるお前もそれ以上の処分を受ける必要があると思わないか?」
そう言ってくるカートレット大公はいちいち偉そうなんだよ!
「いいえ、そうは思いません。側近たちが厳しい処分を受けたのならば俺はその分減刑されるべきだ」
俺は当然の主張をしたまでだった。だが大公は顔をしかめて舌打ちをした。
「やはりこのような王子はいちど辛い目に会うべきだと思う。なので、海と山とどちらか選べ」
俺は意味のわからない質問をされ、「だったら山だな」と答えた。それがどんな意味を持つものかもわからないで……
•*¨*•.¸¸☆
鉱山なんかに送られて自分の今までの行いを反省しろと言われても俺はぴんとこない。鉱山の洞窟の中は高温でその空気には毒ガスが含まれている場合もある。まさに命がけのこんな仕事は俺がするべきことではない。なんとか隙を見て逃げ出そうといつも思っていた。
それでもなかなか逃げ出せない。なぜならいつも見張りがいて俺を厳しく監視していたからだ。俺は自分の不運と不幸を呪った。俺の不幸は側近が愚かだったことだ。決して自分が愚かだったわけではない。側近に恵まれなかった俺、ただそれだけだ。
少しも反省しなかったしそれどころか詳しくこの婚約の説明をしてくれなかった父上を恨み、身分を隠し変装すらしていたスワンを恨み、不出来な側近を恨み、文句を言いながらずっと生活をしていたんだ。
ところが、ある日定期的に様子を見に来る王家の騎士から俺の元側近、ジェイコブが流刑地から脱走しドラモンド帝国皇帝を怒らせ砂漠に置き去りにされたと聞いた。後日、その亡骸が回収されたことも。
ジェイコブは特に俺によく仕えてくれた本当に信頼できる側近だった。なのにむざむざ殺され俺は怒りに打ち震えた。自分が少しも悪いとは思わず、ただ皇帝とスワンを恨んだ。
それからおかしいんだ……夢にジェイコブが出てきて水をくれとうめく。毎日毎日水をあげるが一向に夢から消えてくれない。俺はすっかり眠るのが怖くなった。もしかして俺を恨んでいるのかな? あいつは嬉々として自分の足をスワンの足に引っ掛けたくせに、俺を本当に恨んで死んだんだろうか?
カートレット大公は俺に「側近に対して申し訳ないと思わないのか?」と聞いた。実際今だって申し訳ないとは思わないが、俺をもし恨んであの世に行ったとすればその恨みの念が俺に返ってくるかもしれない。気にし出すともう止まらない。
昼間でもジェイコブの姿がたまに現れ俺に呼びかけてくる。
「水が飲みたくてたまらない。頼むから水をくれよ」と。
•*¨*•.¸¸☆
俺はもう精神的に限界だった。神父様を呼んで下さい、と俺は現場監督に懇願した。現場監督は翌日神父様を呼んでくれた。
「元側近の姿が目の前に現れて眠ることもできません」そう訴えると、「その者のために祈りなさい」と言われた。
だから俺は毎日祈っている。朝も昼も夜も。そうしないと不安で仕方がないからだ。悪いとは思っていないが、死んだはずのジェイコブの姿が目にちらついて怖くてたまらない。だから祈るだけだ。
別にあいつの冥福など祈りたいわけじゃない。ただ目の前から消えてくれ! お願いだから成仏しろ! そんなことを思って祈りを唱えるだけだ。しかしジェイコブは消えない。だから俺は起きている間中祈り続ける。それこそ1日中聖書の言葉を唱えるんだ。
「あいつ気が狂ったよな?」
「あぁ、完璧に狂ってると思うよ」
現場監督や炭鉱の仲間たちがそう言って俺を哀れみの目で見ていた。何とでも言えばいいさ。だってほらそこにいるじゃないか? だから今だって祈りを唱える言葉は途切れさせない。でなければ怖くていられないんだから……
誰か俺を救ってくれ……頼むよ……
俺は今は地下牢に入れられ反省を促されている。
スワンの父親のカートレット大公が偉そうに俺に説教するのも気に食わない。
「お前のような愚かな主に使えていたために側近のジェイコブとレオは大変な目に合っている。そのことをお前はどう捉えているんだ?」
ーーどうと言われても、俺には当たり前なこととしか思えない。俺が良いことをすればそれは俺の手柄だ。俺が過ちを犯したとすればそれを止めなかった側近たちの責任だ。この主従関係の理論は大昔から決まっていることじゃないか!
「仕方がないと思います。俺が指示したことが間違っているとすればそれを止めなかったあいつらが悪い」
「そうか。お前は止められたらスワンに嫌がらせをしなかったか? そうではないだろう? お前のような者は間違いを指摘されれば怒り狂いその側近たちを遠ざけたに違いない。愚か者とはそういうものだ」
ーーなんでそんなに決めつけるんだよ! 俺の事なんてわかっていないくせに!
「側近たちが厳しい処分になった以上、主であるお前もそれ以上の処分を受ける必要があると思わないか?」
そう言ってくるカートレット大公はいちいち偉そうなんだよ!
「いいえ、そうは思いません。側近たちが厳しい処分を受けたのならば俺はその分減刑されるべきだ」
俺は当然の主張をしたまでだった。だが大公は顔をしかめて舌打ちをした。
「やはりこのような王子はいちど辛い目に会うべきだと思う。なので、海と山とどちらか選べ」
俺は意味のわからない質問をされ、「だったら山だな」と答えた。それがどんな意味を持つものかもわからないで……
•*¨*•.¸¸☆
鉱山なんかに送られて自分の今までの行いを反省しろと言われても俺はぴんとこない。鉱山の洞窟の中は高温でその空気には毒ガスが含まれている場合もある。まさに命がけのこんな仕事は俺がするべきことではない。なんとか隙を見て逃げ出そうといつも思っていた。
それでもなかなか逃げ出せない。なぜならいつも見張りがいて俺を厳しく監視していたからだ。俺は自分の不運と不幸を呪った。俺の不幸は側近が愚かだったことだ。決して自分が愚かだったわけではない。側近に恵まれなかった俺、ただそれだけだ。
少しも反省しなかったしそれどころか詳しくこの婚約の説明をしてくれなかった父上を恨み、身分を隠し変装すらしていたスワンを恨み、不出来な側近を恨み、文句を言いながらずっと生活をしていたんだ。
ところが、ある日定期的に様子を見に来る王家の騎士から俺の元側近、ジェイコブが流刑地から脱走しドラモンド帝国皇帝を怒らせ砂漠に置き去りにされたと聞いた。後日、その亡骸が回収されたことも。
ジェイコブは特に俺によく仕えてくれた本当に信頼できる側近だった。なのにむざむざ殺され俺は怒りに打ち震えた。自分が少しも悪いとは思わず、ただ皇帝とスワンを恨んだ。
それからおかしいんだ……夢にジェイコブが出てきて水をくれとうめく。毎日毎日水をあげるが一向に夢から消えてくれない。俺はすっかり眠るのが怖くなった。もしかして俺を恨んでいるのかな? あいつは嬉々として自分の足をスワンの足に引っ掛けたくせに、俺を本当に恨んで死んだんだろうか?
カートレット大公は俺に「側近に対して申し訳ないと思わないのか?」と聞いた。実際今だって申し訳ないとは思わないが、俺をもし恨んであの世に行ったとすればその恨みの念が俺に返ってくるかもしれない。気にし出すともう止まらない。
昼間でもジェイコブの姿がたまに現れ俺に呼びかけてくる。
「水が飲みたくてたまらない。頼むから水をくれよ」と。
•*¨*•.¸¸☆
俺はもう精神的に限界だった。神父様を呼んで下さい、と俺は現場監督に懇願した。現場監督は翌日神父様を呼んでくれた。
「元側近の姿が目の前に現れて眠ることもできません」そう訴えると、「その者のために祈りなさい」と言われた。
だから俺は毎日祈っている。朝も昼も夜も。そうしないと不安で仕方がないからだ。悪いとは思っていないが、死んだはずのジェイコブの姿が目にちらついて怖くてたまらない。だから祈るだけだ。
別にあいつの冥福など祈りたいわけじゃない。ただ目の前から消えてくれ! お願いだから成仏しろ! そんなことを思って祈りを唱えるだけだ。しかしジェイコブは消えない。だから俺は起きている間中祈り続ける。それこそ1日中聖書の言葉を唱えるんだ。
「あいつ気が狂ったよな?」
「あぁ、完璧に狂ってると思うよ」
現場監督や炭鉱の仲間たちがそう言って俺を哀れみの目で見ていた。何とでも言えばいいさ。だってほらそこにいるじゃないか? だから今だって祈りを唱える言葉は途切れさせない。でなければ怖くていられないんだから……
誰か俺を救ってくれ……頼むよ……
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