(完)私の家を乗っ取る従兄弟と従姉妹に罰を与えましょう!

青空一夏

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4  益虫だしいいわよね?

 
「え? マーガレットが妊娠した? まさか、本当なの?」
 フェンスによじ登って離れに住むマーガレットの診察を終えた医師に私は苦笑しながら尋ねた。

「はい、えっと・・・・・・おめでたい? ではないですなぁーー。この場合は残念と申しあげればいいですかな? マーガレット様は妊娠なさっております」

「ふーーん。犬や猫じゃあるまいし・・・・・・放っておいても増えるなんて異常な繁殖力よねぇーー」

「奥様! ワンコやニャンコに失礼ですわ。私は動物愛護協会の役員をしておりますれば!」
 ランス伯爵家の侍女長がムッとするので、丁重にそこは謝っておいた。



「それで、マーガレット様がお話があるようでして逢いたいと盛んにわめいております」
 今度はランス伯爵家の執事が渋い顔をして私に報告。

「そう。どうせお金のことよね? あのフェンスをよじ登って来ればいいわ! もうシラミも落ち着いたのでしょう?」

「はい、もうかれこれ一年近くはシラミと戦っておりましたからね。ようやく、絶滅できました。しかし、こんなしぶといシラミは見たことも聞いたこともありませんでしたが」
 医者が感慨深げに言うけれど、私の魔法で強化したシラミ君達だ。1年で駆除できたなら御の字だわ。





 マーガレットが本邸と離れの間にある鉄格子のフェンスを、ドレス姿のままでよじ登っているのを私は執務室の窓から見物していた。

 裾をたくし上げてそのフェンスをよじ登っては何度もずり落ちるのを、紅茶を飲みながら見ているけれど全く学習能力がなく呆れてしまう。何度も何度も同じ場所を掴み足をかける。その度に手や足を滑らせる。エンドレスw。



「油まみれのフェンスを怪我をしない程度に1時間は滑って落ちていなさい! あぁ、でも子供に影響があると可哀想。落ちそうな場所の土は瞬間マシュマロになって、あの大きなお尻を支えてあげて」

 私はそうつぶやくと仕事に戻った。領地経営をして事業をまわしお金を稼げるのは私しかいないのに、お金を使いたい離れのお邪魔虫たちは5人もいる。そこに子供まで増えるというの?

 イライラしてくる気持ちを抑えて、デスクにむかう私だ。追い出したい気持ちでいっぱいなのに、出て行こうとしない親族達。

 すでに自分達の屋敷は処分したと言い張り、お金もないと開き直る。こんな人達はいったいどうすればいいのだろう?






 それから1時間きっちり経ったタイミングで、汗だくになったマーガレットがやって来た。ところどころ足や手に擦り傷をこさえ、髪は乱れてドレスの裾は破けていた。

「ちょっと! なぜあのフェンスに扉をつけないのよ! いちいちあの高いフェンスをよじ登るなんて無理よ」

「あぁ、だったら無理して出なければいいのでは? この本邸に顔を出す必要などないでしょう?」

「なに言ってるのよ! この本邸も私のものでしょう! ところで、早急にここで夜会を開きなさい! 私が妊娠したというお祝いのパーティよ。ランス伯爵家の跡継ぎの妊娠ですもの! 皆に知らせる必要があるでしょう?」

「は? ないです! その子はランス伯爵家の跡継ぎではありませんから」

「なんで、そんなバカなことを言うのよ! こっちが下手にでていればいい気になって!! この本邸は私が出産したら明け渡しなさいよ。いつまでもここに住んでいられると思わないで! 穀潰しが!」

――へぇ~~、私が穀潰しなんですか・・・・・・ ゲスな奴らめ ! 死・・・・・・ダメダメ・・・・・・

 つい、死んじまえと言いたい気持ちを静めるために窓枠を見つめるとそこにはゲジゲジの姿が。

ゲジゲジかぁ・・・・・・これって大ゲジよね。見た目は気味が悪いけれど毒もないし人間を噛むこともないわ。かえってゴキブリや蜘蛛を食べる益虫・・・・・・ふふん。

「マーガレット! 貴女達はゲジゲジにとても好かれるといいわね」
 ぼそりとつぶやいた私の言葉にマーガレットが激高した。

「ゲジゲジ? なんの話よ? 誤魔化さないで! 私が出産する為に一流の産婦人科医を連れて来てよ。それから本邸に子供部屋を設けておもちゃもたくさん用意してよね! 家庭教師とナニーと専属侍女もよ。ランス伯爵家の跡継ぎなのよ? 何度も同じ事を言わせないで!」

 マーガレットが私を叩こうと手を振り上げたその時、大きなゲジゲジがマーガレットの顔に着地した。

「う? うぎゃぁあぁぁあああ~~!! なによ、これ! 助けて、助けて」

「あら大丈夫ですわ。刺さないし噛んだりしません。気にしないで」

「気にするわよぉーー」
 あたふたと逃げまどいフェンスをよたよたとよじ登り帰っていくけれど、当然その後ろにはゲジゲジの大群がついて歩きまわっていた。

「ぎゃぁあぁあぁぁーー!! ぷぎゃあぁあぁあああーー!!」
 その夜は一晩中賑やかな運動会の音と声が離れから聞こえてきたことは言うまでもない。

――だって、殺すなとは言ったけれど嫌がらせをするなとは書いてなかった。いいわよね? 益虫だし。 妊婦にも適度な運動って大事!
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