(完)私の家を乗っ取る従兄弟と従姉妹に罰を与えましょう!

青空一夏

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7 うまい話には裏がある(ラモント視点)

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 俺はどの仕事が1番楽かを考えていた。当主? 貴族の当主って本当に俺の最終目標なのか? 伯爵という爵位は欲しいがそれは面倒な領地経営をしたいわけでは決してない。富と名声を得たいだけだ。そして、結局は富がほしいだけのことに気がついた。

――俺は楽をして大金がほしいのさ! だって、みんなそうだろう? 誰が苦労して働きたい? 金の為に仕方なく働くだけさ。

「だから、これだ! 俺はこれに決めたぜ! 『富くじ当選祈願のまじないー幸明先生の驚異のパワーハンド!』苦労しないで金が入る1番楽な道だろう?」







 そこは、不思議な空間。雅な香がたかれ宇宙の波動が伝わる音楽がながれる。心が洗われるようで思わず涙がでてくる。

「さぁ、祈りなさい! 宇宙の波動を感じて、幸運をみずからの力で引き寄せる。イメージして! さぁ、唱えるのよぉ~~。『当たる、当たる! 絶対、当たる! 我こそは巨万の富を引き継ぐ者になる! はぁーーぁああ!!』」


「当たる、当たる! はぁあぁぁぁあああーー!!」
数人の男女が恍惚とした表情で身体を揺らせながら唱えていた。

そして! 幸明先生の手がぴかぴかとあり得ないほど光る。すごい! 手が光るなんて! 

ーーひゃぁーーまっぶしいぃーー! この人は本物だ!

ーーこれは絶対当たりそうな予感だ!

 

「では、これから富くじ売り場に行きましょう」
 みんなでぞろぞろ行ってくじを買っては、コインで隠された部分を削る。

「5等1,000万フラン当たったぁーーー!!」
「え?」
「すっごい」
「さすが幸明先生!」
「いいですか? つまりみなさんが私の髪の毛や切った爪を買って身につければ必ず当選します! なぜなら私は神に選ばれし者だからです!」

 先生は削ったマークが4個揃った富くじを手に掲げた。確かにそれは1,000万フランの当たりくじだけれど、換金するのはあとでゆっくりする、と満面の笑みで言った。




ーーまじ、ありがたいよね? 先生の抜け毛は一本二万フランだけれど、Ⅰ等が当たれば5億フラン。そりゃぁ、買うよね? 先生の髪を! (まぁ、それってブラシについた髪なんだけどね)

ーーお金は先生から借りたことにして・・・・・・どんどんそれが膨れ上がり・・・・・








「おいおい、この借金どうやって返すんだよ!」っと急に強面になった幸明先生に詰め寄られ、「なんでもします」と答えた俺。







「こっ、ここ、なんですか?」
「あぁ、死体がそこにあるでしょ? で、きれいに洗ってお棺につめるの」

「え」
「この方は事故でさぁ、手足がばらばらなわけよ。それをこうやって糸で縫ってつなげて遺族に渡す。わかった? 簡単でしょ?」

「う、うげぇ~~」
「ふふふ。大丈夫~~! みんな初めは吐くからぁ~~。そのうち慣れるよぉ」

「これって・・・・・・」
「ふっ。今頃気がついた? あたし、幸明先生って名乗ってるけど葬儀屋が本業なんだ。この仕事やる奴ってなかなかいなくてさぁ~~。だから、借金背負わせてからこの仕事させるのよね。あんた、40年はここでこの仕事しないと借金なくならない計算だから!」 

「ひっ!! 俺・・・・・・こんなの嫌だ。これって詐欺だよ。おかしいだろ?」

「ぷはっ! 富くじなんか本気で当たろうとするお前の頭の方がよっぽどおかしいって。あっははは! あのあたる確率って知ってる? 2000万分の1。つまり0.000005パーセント! 限りなく0なんだよ? そんなおめでたい頭をしているから、怪しい話しにもすぐひっかかる。まぁ、ほら働くっていいことだから! 頑張れ!」

 幸明先生は口笛を吹きながら、ステップを踏んで去っていく。


 俺の周りにはたくさんの遺体・・・・・・そして俺はその遺体のなかに数ヶ月後、母親の姿を見つけることをこの時は知らなかった。

 全てがあの宝の街に魅せられた者の末路・・・・・・うまい話しには裏がある・・・・・・現実はいつだってこうさ。

 今更わかっても遅いけどな・・・・・・あの当たりくじはもちろん偽物。幸明先生の手が光っていたのは夜光性のペンキのお陰だって・・・・・・

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