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4 不倫女には略奪女を
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「おはよう! ショーン、昨日はごめんね。私がどうかしていたわ」
「いいんだよ。三日間も留守にしていた私も悪い。今日は早く帰ってくるから、ご馳走を作って待っていておくれ」
「はぁい。腕によりをかけてつくるね!」
機嫌よく答えると、満足気に頷く夫。
急いで出仕すると、王妃殿下が目を輝かせて私に話しかけてくる。
「薬師長。旅行は楽しかったようですね? オキナワンのチンスコラを、ショーンが国土課の皆に配っていましたよ。あちらはもうずいぶん暑かったでしょう? それほどここから距離がないのに、気候がかなり違うものねぇ」
(オキナワンは陽射しが強い観光地で有名だわ。道理でショーンが日焼けしていたわけだ)
「えぇ、とても暑かったですわ。ところで今日は早めに帰ってもよろしいですか?」
快く王妃殿下は頷いてくださる。私をとても可愛がってくださる王妃殿下は、私の勤務時間などは気にしない。王妃殿下をより美しくする為の調薬ができるのは私だけ。
パックや美容液に美容ドリンク等、今日の王妃殿下の肌の具合を見ながら、数千種類もある薬草を組み合わせて最良のものを調薬する。
肌の細胞は毎日生まれ変わるものだと思っている私は、王妃殿下の当日の肌状態にあわせて、その場で調合することに拘っていた。もちろん、休暇を頂くときやジェンナ様に振り回されてこちらに出仕できない時用に、数日分の作り置きは冷暗所に保管するようにはしている。
青物屋を営む叔父さんの家は、王宮から乗り合い馬車に乗って30分ほど。2階に住居を構えた大きな建物で、従業員も何人かいた。
「久しぶりだなぁ。まさか旦那と別れたとか言うなよな? ここにはパトリシアの戻る部屋はないからな」
「もちろん、ここに帰ってくるつもりはありません。今日はイボンヌに用があって来ました」
2階にいた従姉妹のイボンヌが、私の声に反応してパタパタと降りて来た。相変わらずの地獄耳だ。
「パトリシアお姉様、お久しぶりぃーー! 貴族の三男と結婚してどう? 早速夫婦喧嘩して戻って来たのね? ふふん! パトリシアお姉様にはもったいないほど優秀な男性だったのでしょう?」
「イボンヌ、お久しぶりね。ううん、全然喧嘩なんて一度もしていないわ。優しい義理の両親も来てくれて、とても仲良くしているのよ。ショーン様も、とても優しいんだから」
「え? ふーーん。なんだぁ、そうなの。で、今日はどうしたのよ?」
つまらなそうに口を尖らせたイボンヌは、とてもキュートで綺麗だ。性格は・・・・・・難あり・・・・・・だけど。
「ふふふ。じゃぁーーん!! これ、観劇のチケット。知り合いの方からいただいたプレミアムチケットよ。明日なのだけれど一緒に行かない?」
この観劇のチケットも、実は夫のお誕生日祝いに買ったものだ。一緒に夫と見に行くつもりだったこのチケットは、日にち振り替えができたから無駄にならずに済んだのだ。
「えぇ!! 行きたいわ。そんな高価なチケットどうしたの? どうせなら、お姉様のところに泊まっていい? だって、お姉様の屋敷からの方が劇場が近いもの」
「えぇ、いいわよ。観劇は夕方からだけれど、たまには泊まりに来るといいわ。なんなら、ずっといてもいいのよ」
イボンヌは喜んで支度をしに2階へ戻っていく。
「ふーーん。ずいぶん貴族様と結婚して羽振りが良さそうだねぇ。こちとら、細々と野菜を売って暮らしているってのにさ!」
ネギが山高く積まれた奥から、マチルダ叔母さんが出てきて相変わらずの嫌みを言う。両親が亡くなってからここで育てられたけど、優しくされたことは一度もない。
薬師になれたのは、両親が亡くなった時の遺産があったからだ。その遺産も具体的にはいくらあったのか知らない。ただ両親が亡くなって私を引き取った叔父夫婦は、すぐに青物屋を立て直し2階の住まいはとても贅沢な造りになった。
私の両親のお金を横領したのでは?・・・・・・もちろん証拠はないし、私も今更昔のことを追求する気はない。
夫の仕事が終わりそうな時間帯に、わざとイボンヌと王宮の近くをぶらつく。来た、来た。女性を伴い歩いて来る夫に少なからずびっくりする。浮気相手は、同僚だったの?
ピンクの髪に淡い水色の瞳。庇護欲をそそるその華奢な身体は、小柄で抱きしめたら折れそう。どことなく小動物系で、どこにでもいそうな量産型の可愛らしい子だ。
「ショーン!! 今が帰りなのね? 偶然ね。こちらは従姉妹のイボンヌよ。そちらはどなたかしら?」
「・・・・・・あぁ・・・・・・こちらは私の部下のマリアンヌだよ。同じ地質調査班なんだ」
夫がギョッとして私を見て、次にイボンヌに目を向けて・・・・・・顔を赤くして固まった。
イボンヌは蜂蜜色の髪に琥珀の瞳で、体つきはボンキュッボンのプロポーション。あどけない天使の顔に、妖艶エロチックな身体を持つ。
マリアンヌVSイボンヌ
面白いショーがこれから始まる。
「まぁーー、初めまして。私とは初対面ですわねぇ? だって、パトリシアお姉様ってば結婚式もなかったものね。今日はお姉様の屋敷に泊まらせていただきます。どうぞよろしくお願いしますね! 」
イボンヌはショーンには天使の微笑みを投げかけながら、マリアンヌの頭から足のつま先までを横目で眺め、ふっと笑みを漏らす。
思い起こせば、私もイボンヌにはよくいろいろな物を取られたわ。イボンヌは欲しいものを見つけると猪突猛進。
本能的に障害物をロックオンすると、その瞬間鼻で笑う癖があった。
「いいんだよ。三日間も留守にしていた私も悪い。今日は早く帰ってくるから、ご馳走を作って待っていておくれ」
「はぁい。腕によりをかけてつくるね!」
機嫌よく答えると、満足気に頷く夫。
急いで出仕すると、王妃殿下が目を輝かせて私に話しかけてくる。
「薬師長。旅行は楽しかったようですね? オキナワンのチンスコラを、ショーンが国土課の皆に配っていましたよ。あちらはもうずいぶん暑かったでしょう? それほどここから距離がないのに、気候がかなり違うものねぇ」
(オキナワンは陽射しが強い観光地で有名だわ。道理でショーンが日焼けしていたわけだ)
「えぇ、とても暑かったですわ。ところで今日は早めに帰ってもよろしいですか?」
快く王妃殿下は頷いてくださる。私をとても可愛がってくださる王妃殿下は、私の勤務時間などは気にしない。王妃殿下をより美しくする為の調薬ができるのは私だけ。
パックや美容液に美容ドリンク等、今日の王妃殿下の肌の具合を見ながら、数千種類もある薬草を組み合わせて最良のものを調薬する。
肌の細胞は毎日生まれ変わるものだと思っている私は、王妃殿下の当日の肌状態にあわせて、その場で調合することに拘っていた。もちろん、休暇を頂くときやジェンナ様に振り回されてこちらに出仕できない時用に、数日分の作り置きは冷暗所に保管するようにはしている。
青物屋を営む叔父さんの家は、王宮から乗り合い馬車に乗って30分ほど。2階に住居を構えた大きな建物で、従業員も何人かいた。
「久しぶりだなぁ。まさか旦那と別れたとか言うなよな? ここにはパトリシアの戻る部屋はないからな」
「もちろん、ここに帰ってくるつもりはありません。今日はイボンヌに用があって来ました」
2階にいた従姉妹のイボンヌが、私の声に反応してパタパタと降りて来た。相変わらずの地獄耳だ。
「パトリシアお姉様、お久しぶりぃーー! 貴族の三男と結婚してどう? 早速夫婦喧嘩して戻って来たのね? ふふん! パトリシアお姉様にはもったいないほど優秀な男性だったのでしょう?」
「イボンヌ、お久しぶりね。ううん、全然喧嘩なんて一度もしていないわ。優しい義理の両親も来てくれて、とても仲良くしているのよ。ショーン様も、とても優しいんだから」
「え? ふーーん。なんだぁ、そうなの。で、今日はどうしたのよ?」
つまらなそうに口を尖らせたイボンヌは、とてもキュートで綺麗だ。性格は・・・・・・難あり・・・・・・だけど。
「ふふふ。じゃぁーーん!! これ、観劇のチケット。知り合いの方からいただいたプレミアムチケットよ。明日なのだけれど一緒に行かない?」
この観劇のチケットも、実は夫のお誕生日祝いに買ったものだ。一緒に夫と見に行くつもりだったこのチケットは、日にち振り替えができたから無駄にならずに済んだのだ。
「えぇ!! 行きたいわ。そんな高価なチケットどうしたの? どうせなら、お姉様のところに泊まっていい? だって、お姉様の屋敷からの方が劇場が近いもの」
「えぇ、いいわよ。観劇は夕方からだけれど、たまには泊まりに来るといいわ。なんなら、ずっといてもいいのよ」
イボンヌは喜んで支度をしに2階へ戻っていく。
「ふーーん。ずいぶん貴族様と結婚して羽振りが良さそうだねぇ。こちとら、細々と野菜を売って暮らしているってのにさ!」
ネギが山高く積まれた奥から、マチルダ叔母さんが出てきて相変わらずの嫌みを言う。両親が亡くなってからここで育てられたけど、優しくされたことは一度もない。
薬師になれたのは、両親が亡くなった時の遺産があったからだ。その遺産も具体的にはいくらあったのか知らない。ただ両親が亡くなって私を引き取った叔父夫婦は、すぐに青物屋を立て直し2階の住まいはとても贅沢な造りになった。
私の両親のお金を横領したのでは?・・・・・・もちろん証拠はないし、私も今更昔のことを追求する気はない。
夫の仕事が終わりそうな時間帯に、わざとイボンヌと王宮の近くをぶらつく。来た、来た。女性を伴い歩いて来る夫に少なからずびっくりする。浮気相手は、同僚だったの?
ピンクの髪に淡い水色の瞳。庇護欲をそそるその華奢な身体は、小柄で抱きしめたら折れそう。どことなく小動物系で、どこにでもいそうな量産型の可愛らしい子だ。
「ショーン!! 今が帰りなのね? 偶然ね。こちらは従姉妹のイボンヌよ。そちらはどなたかしら?」
「・・・・・・あぁ・・・・・・こちらは私の部下のマリアンヌだよ。同じ地質調査班なんだ」
夫がギョッとして私を見て、次にイボンヌに目を向けて・・・・・・顔を赤くして固まった。
イボンヌは蜂蜜色の髪に琥珀の瞳で、体つきはボンキュッボンのプロポーション。あどけない天使の顔に、妖艶エロチックな身体を持つ。
マリアンヌVSイボンヌ
面白いショーがこれから始まる。
「まぁーー、初めまして。私とは初対面ですわねぇ? だって、パトリシアお姉様ってば結婚式もなかったものね。今日はお姉様の屋敷に泊まらせていただきます。どうぞよろしくお願いしますね! 」
イボンヌはショーンには天使の微笑みを投げかけながら、マリアンヌの頭から足のつま先までを横目で眺め、ふっと笑みを漏らす。
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