(完)年増になったから婚約破棄する?ーー誰のせいでなったと思ってんだ!

青空一夏

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2 それぞれの思い

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 私はマックスをすぐさま追い出し、一人ぼんやりとじっと手を見つめた。絶対、私の男運の無さは手相にも反映されているはず・・・・・・悲しや。

――はぁ~、私ってばなんであんなバカに貢いできたのだろう? 今まで彼に使ったお金と労力を考えたら気絶しそうだわ。

 恋が砕け散った翌日もいつものように出仕、気合いをいれて働いていたが、やはりため息が何度も無意識に出てきてどうかすると泣きそうになる。マックスが恋しいという理由ではなく、自分の情けなさに泣きそうなの。

「どうしたんだい? 今日はずいぶんと元気がないなぁーー。夏バテかい?」
 法務部のサンディが声をかけてきた。この男性は年下のイケメンで、しかも部長、女官達から人気が高い。文官には独身のイケメンが少ないからね。

「なんでもないです。ただ私の結婚式がなくなって、とてつもなく貴重で膨大な歳月が無駄になっただけです。サンディ部長、タイムマシーンってできたりしないですかね?」

「へ? タイムマシーン? なんで、またそんなものを?」

「それはですね。8年前に戻って、いいえ、もっと前に戻ってあのマックスという男と付き合ってはいけないと自分の頬を殴りに行きたいからです!」


ꕤ୭*サンディ・カートレット視点(カートレット侯爵の弟)

 いつも元気でバイタリティーに溢れている財務部のルーナが悲しそうにため息ばかり。どうしたのかと聞けば、今年になって一番嬉しいニュースを聞けた。

「なんでもないです。ただ、、今までのとてつもなく貴重な時間が無駄になってしまっただけです。サンディ部長、タイムマシーンってできたりしないですかね?」

 彼女は悲しげにため息をつき私に面白い質問を投げかけたのだ。

ーータイムマシーンか、それがあれば皆過去に戻ってやり直して誰も失敗する者はいなくなるよ。だが、皆が過去に戻ってやり直したら結局どうなる? 歴史も何も、今いる人間でさえ消えてなくなる可能性がある。むやみに過去なんかに戻るべきじゃないさ。今からでも生き方を変えて、今できることを精一杯すればいいじゃないか。まぁ、タイムマシーンの話はどうでもいいとして・・・・・・彼女の結婚がなくなった? 実にめでたい! なぜなら、私は彼女のことが好きだったからだ。

「君の元婚約者は相当酷いな。慰謝料はかなりふんだくれるはずだがとる気はあるかい? それとその17歳の子にも、他の女性の婚約者に手を出すと社会的制裁をうけることをきっちり教えてあげた方が良い。それは彼女の為でもあるよ」

「あぁ、もう私はあんな男には関わり合いになりたくないわ。顔を見るのも嫌よ! でも確かに散々あいつの為に使ったお金は返してほしいわ。だって、私の部屋に転がり込んできたマックスは1フランもお金を出さなかったのですもの」

「はぁーー。君のダメ男好きもそろそろ終わりにしなさい。お金にだらしないのは一番だめさ。ダメな男がいいなら私にしておきなさい。私は引き出しの整理整頓が苦手だ。掃除もね。これくらいのダメさ加減で妥協しなさい」

「あら、引き出し? まぁ、私はとても得意ですわ。今度お掃除しに行ってもよろしいですか? 解決策は仕切りをつくることです・・・・・・」

――ふっ。こういう単純なところが放っておけない。彼女の良さは私だけがわかればいい。さてと、まずはそのアホ男に慰謝料請求といこうじゃないか。



ꕤ୭*マックス視点

 サンディ・カートレット? 誰だ、こいつ? 見知らぬ男からの手紙を自室のデスクの上に置きっぱなしにしていたのは三日前だったか? 

「イモージェン。このデスクに置いてあった手紙を知らないかい?」

「先生、それなら私が雑誌と一緒に捨ててしまったかもしれないです。先生のお部屋を綺麗にしてあげたくて・・・・・・ごめんなさい」

「あぁ、それならいいよ。どうせたいしたことじゃないだろう。だいたい、聞いたこともない名前だし」


「それより、先生~! 私のエプロン姿可愛いですかぁ? ピンクのハート柄は先生への愛を現していますの」
 フライ返しを持って料理をする私の教え子。なんてキュートなんだ!

――はぁ~、やっぱ女は年増より若いピチピチが一番だ。フライ返しとエプロン姿を見ているだけで3杯はメシが食える。

 予定より早く新居に引っ越した(ルーナに追い出された)けれど英断だった。かなり無理して分割払いで購入した二階建ての洒落た家。

 今まで生活費を1フランも出さず、私の学園で使う私物でさえルーナに買ってもらっていたからこそ貯め込むことができた頭金。あとは分割で月々払っていけば自分のものになる家とそこに入り浸る若い教え子。

 最高の環境で、僕の人生は今花開いたばかりだ。ルーナなんかといたからついてなかったんだ! そうさ、今まで碌なことがなかったのはルーナが疫病神だったせいだよ。

――これからは、僕の人生はどんどん栄光に包まれていくんだ!



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