(完)年増になったから婚約破棄する?ーー誰のせいでなったと思ってんだ!

青空一夏

文字の大きさ
6 / 13

6 私が勝った裁判

しおりを挟む
「いえ、そういうつもりではありません。なんというか・・・・・・その・・・・・・なんでもないです。えっと、あなたでいいです」

 なんというおバカさんなの・・・・・・あぁ、こんな男性と結婚を前提に何年もお付き合いしてきた自分が恥ずかしい。きっと、皆私を『バカな女』と思っているわ。いたたまれない気分でいるとサンディが優しく励ますように微笑みかけてくれた。

とは、とても常識がある口の利き方に感動してしまいますね。さきほどの『精神科に通った方がいい』とは誰に向けて言った言葉でしょうか?」

 裁判官の問いにマックスはへらへらと薄ら笑いを浮かべながら、
「もちろんルーナに言いました。だってそうでしょう? 何の気なしに言った言葉尻をとらえて失礼だとか侮辱だとか騒ぐ。恋人の間ならつい口が滑ることだってありますよ」と、答えた。

「関係が壊れていない夫婦間であればささいなことで済む話です。が、別れる時の言葉でそのような捨て台詞はどう考えても慰謝料の対象になります。しかもその年齢まで待つことになったのはオズボーンさんのせいですからね。心変わりはいけないという法律はありませんが、その精神的苦痛を慰謝料として払わねばならないという法律はありますからね。しかも生活費を1フランも入れないとは悪質にもほどがありますよ・・・・・・」

「持ってるほうが払えばいいんです! ルーナはこれからもどんどん稼げます。それに比べて僕はルーナのせいで学園をクビになったんですよ! お金を払えというならなぜあそこに乗り込んできたんだ! あのまま勤めさせてくれれば、まだ2,000万フラン返せたかもしれないが無職にさせておいて返せるわけがないだろう! ルーナ! お前って女はどこまで冷たい酷い女なんだ」

「お黙りなさい! 酷いのはどちらですか! 無職になったのはルーナさんのせいではなくオズボーンさんの自業自得です。マックス・オズボーンさんは、速やかに2,000万フランを支払うこととする。原告の主張を前面的に認めます! 以上です!」

「ちょっと待った! やっぱりだ! 裁判官が女だから女の味方をするんだな。あなたもきっとこんな経験がある女に違いないよ。そうですよね? きっと若い女と比べられて捨てられた経験があるからルーナに味方したのでしょう? 不公平だ。全くけしからんことだ」

「なんですって? この法廷を侮辱しあたくしの名誉を傷つける発言。法廷侮辱罪として100万フラン増額します。そしてそれ以上あたくしを侮辱するのなら名誉毀損で訴えますよ! あたくしは5,000万フラン慰謝料を請求しようと思います。さぁ、どうしますか?」

「ひっ。5,000万フラン? むちゃくちゃだ。黙りますよ。もういいです。2,000万フラン払います」

「違いますよ。オズボーンさんの支払いは2100万フランです。そしてお仕事ですが現在無職となったのであれば、高所作業をする建築業・鉱山の炭鉱夫・船乗りなど紹介できます。いずれも誰でもできるお仕事でしてお給料はとてもいいので、真面目に働けば1年で返せます。あなたに幸運がありますように!」

「げ! それって致死率が全部50パーセント以上の職業じゃないか・・・・・・結構です。このお金は分割でゆっくり払いたいです」

「ふっ。甘い、甘い。こちらとしては1年以内に、遅くとも3年以内には払っていただきたいですね。期限がないと怠け者はいつまで経っても本気で返そうとしませんからね。裁判官殿! 3年以内という期限を設けそれを過ぎたら強制的に建築業に就かせる許可をください。この類いの男はきっと高い場所が好きだと思いますから」

傍聴人がクスクスと笑い、
「なんとかと煙は高いところが好きだものね」
と、言い合う声が聞こえた。

「それは大変名案です。3年以内の期限を設ける!」

 マックスは一瞬うな垂れたが、
「明日の学園長との裁判で必ず勝つので、その退職金で払います」
と言った。

 懲りない人だし、これほどバカだとは思わなかった。もう憎いと感じるよりも哀れになってきて、私は裁判に勝った喜びはなくなぜか悲しい気分だ。

「もう会うこともないと思いますがどうか元気でいてくださいね」
 私はマックスに言葉をかけたが、彼の答えは私の気持ちを楽にさせるものだった。

「同情するなら金をくれよ! 慰謝料をまけろ! 200万フランで充分だろう?」
 そのぶれないクズっぷりに、私の心は軽くなっていった。マックスはやはり痛い目にあったほうがいい人間だと確信したから。
しおりを挟む
感想 95

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に相応しいエンディング

無色
恋愛
 月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。  ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。  さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。  ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。  だが彼らは愚かにも知らなかった。  ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。  そして、待ち受けるエンディングを。

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

婚約者に裏切られました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

なんでも押し付けてくる妹について

里見知美
恋愛
「ねえ、お姉さま。このリボン欲しい?」 私の一つ下の妹シェリルは、ことある毎に「欲しい?」と言っては、自分がいらなくなったものを押し付けてくる。 しかもお願いっていうんなら譲ってあげる、と上から目線で。 私よりもなんでも先に手に入れておかないと気が済まないのか、私が新品を手に入れるのが気に食わないのか。手に入れてしまえば興味がなくなり、すぐさま私に下げ渡してくるのである。まあ、私は嫡女で、無駄に出費の多い妹に家を食い潰されるわけにはいきませんから、再利用させていただきますが。 でも、見た目の良い妹は、婚約者まで私から掠め取っていった。 こればっかりは、許す気にはなりません。 覚悟しなさいな、姉の渾身の一撃を。 全6話完結済み。

【完結】殿下、私ではなく妹を選ぶなんて……しかしながら、悲しいことにバットエンドを迎えたようです。

みかみかん
恋愛
アウス殿下に婚約破棄を宣言された。アルマーニ・カレン。 そして、殿下が婚約者として選んだのは妹のアルマーニ・ハルカだった。 婚約破棄をされて、ショックを受けるカレンだったが、それ以上にショックな事実が発覚してしまう。 アウス殿下とハルカが国の掟に背いてしまったのだ。 追記:メインストーリー、只今、完結しました。その後のアフターストーリーも、もしかしたら投稿するかもしれません。その際は、またお会いできましたら光栄です(^^)

妹の方がかわいいからと婚約破棄されましたが、あとで後悔しても知りませんよ?

志鷹 志紀
恋愛
「すまない、キミのことを愛することができなくなった」  第二王子は私を謁見の間に連れてきて、そう告げた。 「つまり、婚約破棄ということですね。一応、理由を聞いてもよろしいですか?」 「キミの妹こそが、僕の運命の相手だったんだよ」 「そうですわ、お姉様」  王子は私の妹を抱き、嫌な笑みを浮かべている。 「ええ、私は構いませんけれど……あとで後悔しても知りませんよ?」  私だけが知っている妹の秘密。  それを知らずに、妹に恋をするなんて……愚かな人ですね。

義妹が聖女を引き継ぎましたが無理だと思います

成行任世
恋愛
稀少な聖属性を持つ義妹が聖女の役も婚約者も引き継ぐ(奪う)というので聖女の祈りを義妹に託したら王都が壊滅の危機だそうですが、私はもう聖女ではないので知りません。

婚約破棄ならもうしましたよ?

春先 あみ
恋愛
リリア・ラテフィール伯爵令嬢の元にお約束の婚約破棄を突き付けてきたビーツ侯爵家嫡男とピピ男爵令嬢 しかし、彼等の断罪イベントは国家転覆を目論む巧妙な罠!?…だったらよかったなぁ!! リリアの親友、フィーナが主観でお送りします 「なんで今日の今なのよ!!婚約破棄ならとっくにしたじゃない!!」 ……… 初投稿作品です 恋愛コメディは初めて書きます 楽しんで頂ければ幸いです 感想等いただけるととても嬉しいです! 2019年3月25日、完結致しました! ありがとうございます!

処理中です...