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番外編
2 イモールンの新たな職場(イモールン視点)
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私はおバカな妹のせいでセント・ジョシュアマーベラス学園の教師の職を失った。内定していたのにダメになったこともショックだったけれど、妹の素行の悪さで私の信用までが崩れていったことに憤りを感じたわ。
――幼い頃から勉強を頑張ってきたし教師という職業にとても憧れていたのに・・・・・・あのおバカ! 絶対許さないからね!
私はセント・ジョシュアマーベラス学園以外ならば雇ってもらえるのではと思い、他の貴族学園の面接を受けに行った。
「あぁ、残念ですがイモージェンさんの噂は貴族の中ではすっかり有名でして、我が学園でも雇うことは到底無理ですよ。申し訳ないですが・・・・・・」
そのように丁寧に言ってくれる学園もあれば、
「はぁ? 無理、無理! だってあなたの妹って他人の旦那を寝取る泥棒猫なんでしょう? そんな姉なんて採用したらうちの学園の品位が落ちる」
あからさまに顔をしかめて追い出されることもあった。
国立の学園ではまさに慇懃無礼な口調でたったひと言
「ご期待には添えません。なぜなら父兄の反発がありますしね。国立である以上、私立以上に大多数の意見を尊重しなければならない」
――あぁ、イモージェン! あんたのしたことは、私の目指す職業では致命的なスキャンダルだったのよ。
私はイモージェンに文句の一つも言いたくてこっそり職場を見に行ったの。あの子は老舗旅館の玄関口をせっせと箒で掃いていた。
遠くからだったけれど、とても頑張っているように見えた。
――どーいうことなの! 自分のお部屋の掃除も下女まかせだった妹が・・・・・・今度は窓まで拭きだして・・・・・・しばらくするとお客様を満面の笑みで歓迎してる!?
「ようこそ、青空旅館へいらっしゃいませ!!」
その元気な明るい声は、離れて様子をうかがう私の耳にも届いてくる。
――イモージェンめっ! ふん。なかなか頑張っているじゃないのよっ!
私はそう思いながらも口元は笑っていた。あの子が怠惰な暮らしをしていたら文句のひとつも言おうって、仕事斡旋所のおばさんを脅して無理矢理あの子の仕事先を聞いたけれど・・・・・・これじゃぁ、文句を言うのはやめだ。
私は帰り道ゆっくり歩きながら考えたわ。夕暮れが迫っている空は薔薇色に染まっていき、私は幼い頃に妹と見上げた夕焼けを思い出しながら考えた。
貴族学園の教師の仕事だけがこの世の仕事じゃないわよ。人に教えることが好きなら別に貴族学園でなくてもいいし・・・・・・平民の学園だって、それこそなにか障害を抱えていて学校に通えない子の勉強をみてあげたっていいんだもの!
私は翌日から平民が通う学園や家庭教師を募集している方達とコンタクトをとるようにした。平民専用の学園は社交界でのゴタゴタなんて知らないし興味がないようですぐに就職できた。
「貴族出身の先生がいらしてくださるのは大変喜ばしいことです。そのうちこの世界でも貴族とか平民の区別がない時代がおとずれるでしょうからね」
平民学園の校長の言葉は感慨深いものだった。
――私も平民の人達と交流を深めたら、いつかはまたイモージェンと話が合うかも知れないわね。幼い頃は仲良しだった妹なのだから・・・・・・まだ私は怒っているけれどきっと時間が解決するわね。
「イモールン先生! 食事のマナーや貴族の方達の習慣なども生徒達に教えていただけませんんか? 生徒達にはいい刺激になりますし、マナーは覚えておいて損はないですからね」
「わかりました。一生懸命、教えていきたいと思いますわ」
貴族学園じゃないけれど、ここはとてもやり甲斐のある学園よ。それとともに、ボランティアとして病気で学校に通えない子の勉強などもみてあげるようになった私に、王妃殿下から直々にお褒めの言葉を頂く機会を得た。
社交界はそのような情報が知れ渡るのは早く、貴族学園もそうだった。手のひらを返したかのように以前は門前払いだった貴族学園から教師にならないかとお誘いを受けたが丁重にお断りしたわ。
平民の学園にも可能性に溢れていて頭のいい子はたくさんいるの! 私はその子達の手助けをしていきたいと本気で考えるようになっていたわ。
イモージェンにもいつか会いに行きたい! そんなふうに思っているのはお父様達も同じようだった。
だって、お父様の執務室の引き出しにはイモージェンが元気に旅館で働く様子の写真が数枚入っていたのを、こないだこっそり発見しちゃったんだもの!
親子の縁を切る、なんて宣言しても心配だったのよね? そして頑張っていることを知り私と同じようにいつか会いに行きたいって思っているに違いないのよ。
それから数年後、私達は妹が結婚してその旅館の女将になったことを知ったの。
「お母様、お父様。もうそろそろイモージェンを許してもいいのじゃないかしら? あの子のせいで私は苦労したけれど今ではこれで良かったって思っているし・・・・・・皆であの旅館に泊まりに行きましょうよ」
お父様はしかめっ面のままうなづいたけれど、目の奥は笑っていたしお母様は泣いていた。
そう、私達はなんだかんだ言ったって家族なのよ。頑張っている妹をいつまでも怒ってなんかいられるわけがないじゃない!
――幼い頃から勉強を頑張ってきたし教師という職業にとても憧れていたのに・・・・・・あのおバカ! 絶対許さないからね!
私はセント・ジョシュアマーベラス学園以外ならば雇ってもらえるのではと思い、他の貴族学園の面接を受けに行った。
「あぁ、残念ですがイモージェンさんの噂は貴族の中ではすっかり有名でして、我が学園でも雇うことは到底無理ですよ。申し訳ないですが・・・・・・」
そのように丁寧に言ってくれる学園もあれば、
「はぁ? 無理、無理! だってあなたの妹って他人の旦那を寝取る泥棒猫なんでしょう? そんな姉なんて採用したらうちの学園の品位が落ちる」
あからさまに顔をしかめて追い出されることもあった。
国立の学園ではまさに慇懃無礼な口調でたったひと言
「ご期待には添えません。なぜなら父兄の反発がありますしね。国立である以上、私立以上に大多数の意見を尊重しなければならない」
――あぁ、イモージェン! あんたのしたことは、私の目指す職業では致命的なスキャンダルだったのよ。
私はイモージェンに文句の一つも言いたくてこっそり職場を見に行ったの。あの子は老舗旅館の玄関口をせっせと箒で掃いていた。
遠くからだったけれど、とても頑張っているように見えた。
――どーいうことなの! 自分のお部屋の掃除も下女まかせだった妹が・・・・・・今度は窓まで拭きだして・・・・・・しばらくするとお客様を満面の笑みで歓迎してる!?
「ようこそ、青空旅館へいらっしゃいませ!!」
その元気な明るい声は、離れて様子をうかがう私の耳にも届いてくる。
――イモージェンめっ! ふん。なかなか頑張っているじゃないのよっ!
私はそう思いながらも口元は笑っていた。あの子が怠惰な暮らしをしていたら文句のひとつも言おうって、仕事斡旋所のおばさんを脅して無理矢理あの子の仕事先を聞いたけれど・・・・・・これじゃぁ、文句を言うのはやめだ。
私は帰り道ゆっくり歩きながら考えたわ。夕暮れが迫っている空は薔薇色に染まっていき、私は幼い頃に妹と見上げた夕焼けを思い出しながら考えた。
貴族学園の教師の仕事だけがこの世の仕事じゃないわよ。人に教えることが好きなら別に貴族学園でなくてもいいし・・・・・・平民の学園だって、それこそなにか障害を抱えていて学校に通えない子の勉強をみてあげたっていいんだもの!
私は翌日から平民が通う学園や家庭教師を募集している方達とコンタクトをとるようにした。平民専用の学園は社交界でのゴタゴタなんて知らないし興味がないようですぐに就職できた。
「貴族出身の先生がいらしてくださるのは大変喜ばしいことです。そのうちこの世界でも貴族とか平民の区別がない時代がおとずれるでしょうからね」
平民学園の校長の言葉は感慨深いものだった。
――私も平民の人達と交流を深めたら、いつかはまたイモージェンと話が合うかも知れないわね。幼い頃は仲良しだった妹なのだから・・・・・・まだ私は怒っているけれどきっと時間が解決するわね。
「イモールン先生! 食事のマナーや貴族の方達の習慣なども生徒達に教えていただけませんんか? 生徒達にはいい刺激になりますし、マナーは覚えておいて損はないですからね」
「わかりました。一生懸命、教えていきたいと思いますわ」
貴族学園じゃないけれど、ここはとてもやり甲斐のある学園よ。それとともに、ボランティアとして病気で学校に通えない子の勉強などもみてあげるようになった私に、王妃殿下から直々にお褒めの言葉を頂く機会を得た。
社交界はそのような情報が知れ渡るのは早く、貴族学園もそうだった。手のひらを返したかのように以前は門前払いだった貴族学園から教師にならないかとお誘いを受けたが丁重にお断りしたわ。
平民の学園にも可能性に溢れていて頭のいい子はたくさんいるの! 私はその子達の手助けをしていきたいと本気で考えるようになっていたわ。
イモージェンにもいつか会いに行きたい! そんなふうに思っているのはお父様達も同じようだった。
だって、お父様の執務室の引き出しにはイモージェンが元気に旅館で働く様子の写真が数枚入っていたのを、こないだこっそり発見しちゃったんだもの!
親子の縁を切る、なんて宣言しても心配だったのよね? そして頑張っていることを知り私と同じようにいつか会いに行きたいって思っているに違いないのよ。
それから数年後、私達は妹が結婚してその旅館の女将になったことを知ったの。
「お母様、お父様。もうそろそろイモージェンを許してもいいのじゃないかしら? あの子のせいで私は苦労したけれど今ではこれで良かったって思っているし・・・・・・皆であの旅館に泊まりに行きましょうよ」
お父様はしかめっ面のままうなづいたけれど、目の奥は笑っていたしお母様は泣いていた。
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